6 / 7
第1章
練習
しおりを挟む
魔術師クロノスが来てから、魔法を覚える日々が始まった。
「例えば、これを凍らせてみて?」
「はい。こうですか?」
浮かせてある水をパキッと凍らせてみる。
「いいよ~!この闇魔法に汚染された水を浄化してみて!」
「うーん、こうですか?」
光を放ち、闇にまみれた水が綺麗になる。
「やっぱり、光魔法は温かい。」
穏やかな顔をしたクロが言った。ちなみに、愛称のクロと呼ばせてもらっている。
「でも、これ以上の光魔法が使えないねえ」
そう…なのだ。他の炎や水、木などの魔法は大概はたやすく使えるようになった。かなり上達が早い方らしい。
私をじっと見つめた後、考え込むクロ。「感情。嬉しい、楽しい、ポジティブがカギ。だが、人によるものはかなり大きいから…」ぶつぶつと呟く。研究者みたい…。
「光魔法はとっても難しいんだ。」困った顔でクロが言った。
「どうして?」
「僕たち吸血鬼は、ほとんど光魔法が使えない。だから、教え方がわからないんだ。」
「光魔法が使えない?」
「そう。吸血鬼には、温かさがないんだ、体温的にも心的にも。」
「クロは吸血鬼なのに、光魔法が使えるの?」
「僕は、元吸血鬼なんだ。」
悲しそうな顔をして笑っていた。
「またこの話は今度しよう。」
ほら、といって見やるとアルノクスがやってきた。
「アル、ごはんの時間?」アルノクスも愛称で呼ぶ仲になった。
「そうだ。」
「なかなか上手くいっていないようだな。」
「ええ。光魔法というのは難しいものなのね。」
食事の時間が終わり、書斎のような部屋で話していた。
「…吸血鬼には未来がない。」
私を召喚した理由。詳しくは聞いたことがなかった。
「長らく吸血鬼はこの世界で栄えていたのだが、もうほとんど絶滅した。
生き血を飲むことは、罪ある事。だが、吸血鬼はそれを罪とも思わず飲み続ける。」
「罪と思わない…?つまり、傷つけても平気ってこと?」
「そうだ。かわいそうとか、助けたいという感情が湧かない冷たい種族なのだ。だから、光魔法が使えない。」
「しかし、私たちには光魔法がいる。
__浄化の力があれば、吸血鬼でなくすることができるのだ。つまり、生き血を吸わなくても生きることができる。」
「吸血鬼でなくする?」
「ああ。クロは特別な存在で、吸血鬼で唯一光魔法が使える奴だった。それを自分の浄化に使ったのだ。」
「えっ、でも光魔法は使えないって…」
「自分を吸血鬼でなくするために浄化の力を使い果たし、光魔法が使えなくなったのだ。」
「そんな…」
表情豊かなクロが光魔法が使えない理由。もともとは感情豊かな人だったのだろう。しかし、今は感情がないまま表情を作っていたということなのか…。
「私は生き血を飲まなくなって10年ほど経った。そろそろ寿命だ。」
呆れたように鼻で笑っていた。
「寿命…」
「俺はな、食事を何年もとっていない。割と力はある方だが、そろそろ終わりが見えている。死を受け入れるのは怖くない。」
死を受け入れる…。そんなの怖くないわけがない。私だって、勇気を振り絞って…あの日…。
「どうした?お前から闇魔力が溢れ出ている。」ふふっと笑うアル。闇魔法は自分の属性なため、慣れているらしい。
「アル。死が怖くないなんて嘘。誰だって怖い。私は…勝手なこと言うけど、最後まで諦めてほしくない。
…私のこと、食事にしてもいいから。生き延びさせてくれたアルに生きていてほしい。」
思いが溢れ出た。少しでも解放された生活を送れたのはアルおかげ。気づけばアルの冷たい手を握っていた。
すると。
私の手からまばゆい光があふれだし、私たちを包みこんだ。
「な…。」
それは、温かな心地よい空間を作り出した。
「温かい。」アルはそう呟いた。
「俺は、もう誰も食べない。もちろんお前もだ。」
そういうアルはふっと笑い、ありがとうと私の頭に手をのせた。
「例えば、これを凍らせてみて?」
「はい。こうですか?」
浮かせてある水をパキッと凍らせてみる。
「いいよ~!この闇魔法に汚染された水を浄化してみて!」
「うーん、こうですか?」
光を放ち、闇にまみれた水が綺麗になる。
「やっぱり、光魔法は温かい。」
穏やかな顔をしたクロが言った。ちなみに、愛称のクロと呼ばせてもらっている。
「でも、これ以上の光魔法が使えないねえ」
そう…なのだ。他の炎や水、木などの魔法は大概はたやすく使えるようになった。かなり上達が早い方らしい。
私をじっと見つめた後、考え込むクロ。「感情。嬉しい、楽しい、ポジティブがカギ。だが、人によるものはかなり大きいから…」ぶつぶつと呟く。研究者みたい…。
「光魔法はとっても難しいんだ。」困った顔でクロが言った。
「どうして?」
「僕たち吸血鬼は、ほとんど光魔法が使えない。だから、教え方がわからないんだ。」
「光魔法が使えない?」
「そう。吸血鬼には、温かさがないんだ、体温的にも心的にも。」
「クロは吸血鬼なのに、光魔法が使えるの?」
「僕は、元吸血鬼なんだ。」
悲しそうな顔をして笑っていた。
「またこの話は今度しよう。」
ほら、といって見やるとアルノクスがやってきた。
「アル、ごはんの時間?」アルノクスも愛称で呼ぶ仲になった。
「そうだ。」
「なかなか上手くいっていないようだな。」
「ええ。光魔法というのは難しいものなのね。」
食事の時間が終わり、書斎のような部屋で話していた。
「…吸血鬼には未来がない。」
私を召喚した理由。詳しくは聞いたことがなかった。
「長らく吸血鬼はこの世界で栄えていたのだが、もうほとんど絶滅した。
生き血を飲むことは、罪ある事。だが、吸血鬼はそれを罪とも思わず飲み続ける。」
「罪と思わない…?つまり、傷つけても平気ってこと?」
「そうだ。かわいそうとか、助けたいという感情が湧かない冷たい種族なのだ。だから、光魔法が使えない。」
「しかし、私たちには光魔法がいる。
__浄化の力があれば、吸血鬼でなくすることができるのだ。つまり、生き血を吸わなくても生きることができる。」
「吸血鬼でなくする?」
「ああ。クロは特別な存在で、吸血鬼で唯一光魔法が使える奴だった。それを自分の浄化に使ったのだ。」
「えっ、でも光魔法は使えないって…」
「自分を吸血鬼でなくするために浄化の力を使い果たし、光魔法が使えなくなったのだ。」
「そんな…」
表情豊かなクロが光魔法が使えない理由。もともとは感情豊かな人だったのだろう。しかし、今は感情がないまま表情を作っていたということなのか…。
「私は生き血を飲まなくなって10年ほど経った。そろそろ寿命だ。」
呆れたように鼻で笑っていた。
「寿命…」
「俺はな、食事を何年もとっていない。割と力はある方だが、そろそろ終わりが見えている。死を受け入れるのは怖くない。」
死を受け入れる…。そんなの怖くないわけがない。私だって、勇気を振り絞って…あの日…。
「どうした?お前から闇魔力が溢れ出ている。」ふふっと笑うアル。闇魔法は自分の属性なため、慣れているらしい。
「アル。死が怖くないなんて嘘。誰だって怖い。私は…勝手なこと言うけど、最後まで諦めてほしくない。
…私のこと、食事にしてもいいから。生き延びさせてくれたアルに生きていてほしい。」
思いが溢れ出た。少しでも解放された生活を送れたのはアルおかげ。気づけばアルの冷たい手を握っていた。
すると。
私の手からまばゆい光があふれだし、私たちを包みこんだ。
「な…。」
それは、温かな心地よい空間を作り出した。
「温かい。」アルはそう呟いた。
「俺は、もう誰も食べない。もちろんお前もだ。」
そういうアルはふっと笑い、ありがとうと私の頭に手をのせた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
絶対死なない吸血鬼
五月雨
ファンタジー
学校の帰りにトラックに引かれ、重傷の中気付いたら異世界にいた。
魔女の従者になって、人でなくなって、吸血鬼になっていた。
不死身の吸血鬼の異世界転生ファンタジー!
fin!!
【完結】空飛ぶハンカチ!!-転生したらモモンガだった。赤い中折れ帽を被り、飛膜を広げ異世界を滑空する!-
ジェルミ
ファンタジー
俺はどうやら間違いで死んだらしい。
女神の謝罪を受け異世界へ転生した俺は、無双とスキル習得率UPと成長速度向上の能力を授かった。
そしてもう一度、新しい人生を歩むはずだったのに…。
まさかモモンガなんて…。
まあ確かに人族に生まれたいとは言わなかったけど…。
普通、転生と言えば人族だと思うでしょう?
でも女神が授けたスキルは最強だった。
リスサイズのモモンガは、赤で統一された中折れ帽とマント。
帽子の横には白い羽を付け、黒いブーツを履き腰にはレイピア。
神獣モモンガが異世界を駆け巡る。
物語はまったり、のんびりと進みます。
※カクヨム様にも掲載しております。
悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―
もいもいさん
ファンタジー
人気乙女ゲー『月と共に煌めいて~キラキラ魔法学園、ラブ注入200%~』略称『とにキラ』の世界。
エステリア・ハーブスト公爵令嬢はゲーム内の最大ライバルである悪役令嬢でどのルートでも悲惨な運命を辿る。ある日、前世の記憶を持って転生した事を知ったエステリア(5歳)は悲惨な運命を回避する為に動き出す!
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜
橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる