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宝物と、山の子と。
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さて……と。子供たちと遊べとは言われても、いったいどんな遊びをすればいいのやら。寄さんに聞いてはみたものの、やっぱりかくれんぼとか鬼ごっこくらいしか思いつかなかったし。
仕方ない、まずはみんなに会ってみるか。ということで制服のまま、僕はホームに向かった。
……が、誰もいない。
つい1.2分前まではたくさんの声が聞こえていたというのに。
ホームから外へ出て行ったのかな……と思い、ベンチからあれこれ探しては見たものの、やっぱり誰も、声すらしない。
「どこ行ったんだろ……電車だってまだ来ていないし」
「うわ、しゃべった!」その時だった。僕の独り言に反応してくれた子が。
それに釣られるように出るわ出るわ。
ーなんだあいつ。
ーたえ様と話してたやつじゃ。
ーいつもの狐じゃないな。
ー梟ともちがう。
ーおれたちのこと見えるんか⁉︎
柱から、生垣の中から、そしてホームの至る所から、まるで僕のことを観察でもするかのようにゆっくりと顔をのぞかせてきた。
顔つきからして、まだ小学校低学年……から幼稚園生くらいかな。
すると、そのうちの1人がそろり、そろりと僕の元へと近寄り、まるで犬のように鼻をひくひくさせながら匂いを嗅いできた。
「え、なんか匂うのかな?」子供に匂いを嗅がれるなんて、ちょっと変な気分。
「お……おめえ、なにもんだ?」
小学生にお前と言われるのはちょっとしゃくだけど、まあしょうがない。
「この駅に新しく来たんだよ」
「どっからだ?」
「ここから、うーん……電車で約2時間くらいかな」
その言葉に、子供は首を傾げてしまった。距離的にピンとこないのかもしれない。
「つまり、おまえ……にんげんってことか⁉︎」
そうだよ、としか答えようがなかった。
それ以外にどういった選択肢が……って、やっぱり駅長がしゃべる猫だしなあ。例外もいるのか。
「「「にんげん⁉︎」」」
すると突然、わあっという歓声と共にホーム中から子供たちが僕のもとに集まってきた。
「すげえ!おれらのことが視えるんか⁉︎」
「匂いもほかの奴らと全然変わらん!」
「おまえ、名前はなんというんじゃ?」
もみくちゃにされながらも一つ一つ僕は質問に答えた。
名前は志乃田正月。この駅に駅員の仕事に来たこと。
そして、きちんとみんなのことは見えるよってこと。
「まさつき⁉︎まさつき言うんかおまえ」
「なあなあまさつき、一緒に遊ぼう!」
「今日は狐はおらんのか、あいつからかうと結構面白いのに」
そういえば……狐ってさっきから言ってるけど、この駅に狐が出没するのかな?
「まさつき知らんのか?いつもそこで暇そうにしとる奴のこと。そいつが狐じゃ」と言って、一人が駅の窓口を指差した。
よく分からないけど、山から狐が餌とかもらいに降りてくるのかな。と、とりあえず僕は無理やり納得した。
仕方ない、まずはみんなに会ってみるか。ということで制服のまま、僕はホームに向かった。
……が、誰もいない。
つい1.2分前まではたくさんの声が聞こえていたというのに。
ホームから外へ出て行ったのかな……と思い、ベンチからあれこれ探しては見たものの、やっぱり誰も、声すらしない。
「どこ行ったんだろ……電車だってまだ来ていないし」
「うわ、しゃべった!」その時だった。僕の独り言に反応してくれた子が。
それに釣られるように出るわ出るわ。
ーなんだあいつ。
ーたえ様と話してたやつじゃ。
ーいつもの狐じゃないな。
ー梟ともちがう。
ーおれたちのこと見えるんか⁉︎
柱から、生垣の中から、そしてホームの至る所から、まるで僕のことを観察でもするかのようにゆっくりと顔をのぞかせてきた。
顔つきからして、まだ小学校低学年……から幼稚園生くらいかな。
すると、そのうちの1人がそろり、そろりと僕の元へと近寄り、まるで犬のように鼻をひくひくさせながら匂いを嗅いできた。
「え、なんか匂うのかな?」子供に匂いを嗅がれるなんて、ちょっと変な気分。
「お……おめえ、なにもんだ?」
小学生にお前と言われるのはちょっとしゃくだけど、まあしょうがない。
「この駅に新しく来たんだよ」
「どっからだ?」
「ここから、うーん……電車で約2時間くらいかな」
その言葉に、子供は首を傾げてしまった。距離的にピンとこないのかもしれない。
「つまり、おまえ……にんげんってことか⁉︎」
そうだよ、としか答えようがなかった。
それ以外にどういった選択肢が……って、やっぱり駅長がしゃべる猫だしなあ。例外もいるのか。
「「「にんげん⁉︎」」」
すると突然、わあっという歓声と共にホーム中から子供たちが僕のもとに集まってきた。
「すげえ!おれらのことが視えるんか⁉︎」
「匂いもほかの奴らと全然変わらん!」
「おまえ、名前はなんというんじゃ?」
もみくちゃにされながらも一つ一つ僕は質問に答えた。
名前は志乃田正月。この駅に駅員の仕事に来たこと。
そして、きちんとみんなのことは見えるよってこと。
「まさつき⁉︎まさつき言うんかおまえ」
「なあなあまさつき、一緒に遊ぼう!」
「今日は狐はおらんのか、あいつからかうと結構面白いのに」
そういえば……狐ってさっきから言ってるけど、この駅に狐が出没するのかな?
「まさつき知らんのか?いつもそこで暇そうにしとる奴のこと。そいつが狐じゃ」と言って、一人が駅の窓口を指差した。
よく分からないけど、山から狐が餌とかもらいに降りてくるのかな。と、とりあえず僕は無理やり納得した。
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