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ほたる咲く丘
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さあ、事務所の次は外の案内かな……と思ったら、社長さんは仕事が立て込んでるらしく、ここから先のことは先輩たちが教えてくれるとのこと。
うん、こればかりは仕方ないよね…社長が直々に僕を迎えに来てくれただけでも本来はすごいことなんだし。
「つーコトだ! 今後ともよろしくな志乃っち!」
窓口にまた戻ると、メガネをかけた村雨先輩が握手をしてきた。
いやいや志乃っちっていったい⁉︎ そんなあだ名で呼ばれたこと自体生まれて初めて!
そうそう、メガネについて聞くと「あ、これね。俺すっげ近眼なのよ」だって。
そうか、だからさっき僕のことを誰だなんて言ってきたのかな……
けどその後、僕のことを人間って……まるで他の人が人間じゃないみたいで。
あ、いや……社長さんならありえるかも!
「そうじゃったー! すっかり忘れておったわ!!」
僕の心を読み取っていたのか、一度は帰ったはずの社長が大慌てで戻ってきた。
「社長~。いちばん重要な方を忘れるだなんてヤバくないっすか?」
「いや面目ない。歳を取るといろいろ物忘れがひどくなってきてな……」
「ちょ! まだ社長って千才じゃ…っていでえ!」
社長、村雨先輩のすねを思いきり蹴ってた…めっちゃ痛そう。
でも、社長が千才っていったい⁉︎ 素早く「千才じゃなく繊細なんじゃ」とフォロー入れてたけど…うん、ますます怪しい。
「ってなわけでな志乃田くん。この駅の駅長を紹介するのをすっかり失念しておった…」
「まあ、駅長とはいっても、正直いてもいなくても大丈夫な存在だしな。社長がド忘れするのもしょうがないか」
村雨先輩が今度はフォロー。でも社長からの痛いツッコミが来るのを警戒してるのか、ちらちら隣にいる社長を見てたけどね。
ということで今度は、事務所反対側の奥まった場所にある部屋へと通された。
よく見るとドアには「駅長室」と書かれた表札が。全然気づかなかった。
「ふむ……これだけワイワイ話していたのにもかかわらず出て来んかったということは……まだ寝てるわけか」
社長はそうは言うけれど、会社のいちばん偉い方が来たというのに、それでも延々と寝てる駅長って…流石にそれはかなりマズいのでは⁉︎ いやまあ村雨先輩もそうだけどさ。これはもう駅としていろいろアウトな気がする……
静まりかえった大きな部屋。だけどその主である駅長さんの寝息ひとつも聞こえては来ない。っていうかここに本当にいるのかな……?
それに、来客用の革張りの豪華なソファも、駅長と刻まれた机の金のプレートも、まだまだピカピカ。新品そのものなんだ……流石にさっきのコンビニの件といい、僕の中の不思議指数がますますアップしてきた。
「はあ……やっぱりこんな場所で眠っておられましたか」
おっ、ようやく見つかったっぽい。
でもなぜか声をかけている場所は、テーブルの下だった。なんか行き倒れみたいで……
「さあ紹するぞ、彼女こそがこのほたる駅の駅長、白妙さまじゃ」
その声に反応してか、テーブルの下からひょいっと飛びでて現れたものは……
二度見した。けど、けど間違いない。
……猫だった。
うん、こればかりは仕方ないよね…社長が直々に僕を迎えに来てくれただけでも本来はすごいことなんだし。
「つーコトだ! 今後ともよろしくな志乃っち!」
窓口にまた戻ると、メガネをかけた村雨先輩が握手をしてきた。
いやいや志乃っちっていったい⁉︎ そんなあだ名で呼ばれたこと自体生まれて初めて!
そうそう、メガネについて聞くと「あ、これね。俺すっげ近眼なのよ」だって。
そうか、だからさっき僕のことを誰だなんて言ってきたのかな……
けどその後、僕のことを人間って……まるで他の人が人間じゃないみたいで。
あ、いや……社長さんならありえるかも!
「そうじゃったー! すっかり忘れておったわ!!」
僕の心を読み取っていたのか、一度は帰ったはずの社長が大慌てで戻ってきた。
「社長~。いちばん重要な方を忘れるだなんてヤバくないっすか?」
「いや面目ない。歳を取るといろいろ物忘れがひどくなってきてな……」
「ちょ! まだ社長って千才じゃ…っていでえ!」
社長、村雨先輩のすねを思いきり蹴ってた…めっちゃ痛そう。
でも、社長が千才っていったい⁉︎ 素早く「千才じゃなく繊細なんじゃ」とフォロー入れてたけど…うん、ますます怪しい。
「ってなわけでな志乃田くん。この駅の駅長を紹介するのをすっかり失念しておった…」
「まあ、駅長とはいっても、正直いてもいなくても大丈夫な存在だしな。社長がド忘れするのもしょうがないか」
村雨先輩が今度はフォロー。でも社長からの痛いツッコミが来るのを警戒してるのか、ちらちら隣にいる社長を見てたけどね。
ということで今度は、事務所反対側の奥まった場所にある部屋へと通された。
よく見るとドアには「駅長室」と書かれた表札が。全然気づかなかった。
「ふむ……これだけワイワイ話していたのにもかかわらず出て来んかったということは……まだ寝てるわけか」
社長はそうは言うけれど、会社のいちばん偉い方が来たというのに、それでも延々と寝てる駅長って…流石にそれはかなりマズいのでは⁉︎ いやまあ村雨先輩もそうだけどさ。これはもう駅としていろいろアウトな気がする……
静まりかえった大きな部屋。だけどその主である駅長さんの寝息ひとつも聞こえては来ない。っていうかここに本当にいるのかな……?
それに、来客用の革張りの豪華なソファも、駅長と刻まれた机の金のプレートも、まだまだピカピカ。新品そのものなんだ……流石にさっきのコンビニの件といい、僕の中の不思議指数がますますアップしてきた。
「はあ……やっぱりこんな場所で眠っておられましたか」
おっ、ようやく見つかったっぽい。
でもなぜか声をかけている場所は、テーブルの下だった。なんか行き倒れみたいで……
「さあ紹するぞ、彼女こそがこのほたる駅の駅長、白妙さまじゃ」
その声に反応してか、テーブルの下からひょいっと飛びでて現れたものは……
二度見した。けど、けど間違いない。
……猫だった。
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