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希望の物語
しおりを挟む僕は何も持たない少年で、自身の興味すらどこかに置いてきたようだった。
いつの時代からか欠陥品の心臓は当たり前で、それを修復するように粘着性の愛が増えた。
社会の歯車とまで言われながらも、人を忘れてより精密な歯車に変態していく過程は驚くほど単純であり、そこからこぼれた物は不良品と言われた。
この世に憂いを持った愚痴の詩は死ぬほど多いが、僕には世界に構っている暇などなかった。
そんなことよりも先に、自分の存在を認めてあげたかったのだ。
しばらくしてから僕は、一丁前の恋をした。
たぶん周りから見ると外見に可もなく不可もなく、性格にクセも面白みもない男女が結ばれた最高につまらない話だと思う。
世界の大きさに比べると大したことない恋愛感情と、他人から得られた理解不能な存在価値を感じてなんとなく生き続けた。
社会に出て、結婚して、子供を育てて、家を建てた。
ひと通りの正常な人生を順当にこなした上でひとつ、僕はなにも変わっていなかった。
僕の物心の始まりが±0のスタートであれば、人と同じ生活をして幸せに転がると思っていた。
僕はそのまま人間としての生を受けることはなく、誰からも祝福されることは無かった。
おかげで初めて人を殺さない物語ができた。
人生山あり谷あり。
人の道に平地はあらず。
平地に座り込む僕は、形を変えて小さな山を残した。
──────その時、世界は僕を祝福した
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