【完結】I adore you

ひつじのめい

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然るべき場所へ

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 なっちゃん!そう呼ばれてベンチに座ったまま、振りむくと夕日に照らされているからか、キラキラと輝いているような蒼が俺のカバンを持って立っていた。

 俺が蒼に手招きをすると小走りで俺の所までニコニコしながらやって俺の前に、しゃがみこんだ。

「なっちゃんと一緒に帰ろうと思って教室に迎えに行ったら、諒太がなっちゃんがカバンも持たずに出ていったから、探してって言われたから探しちゃったよ」

 そう話す穏やかな笑みを浮かべる蒼を見て、昔からわんこ系だとは思ったけど……ゴールデンレトリバーみたいだと思っていたら無意識に声に出していた。

「なっちゃんは僕の事をそんな風に思っているの?」

 そう聞かれて少し考えていると思わず笑みが溢れてしまった。

「なっちゃん、なんでそこで笑うの?やっぱり僕の事を犬っぽいって思ってるんでしょ?」

 そう言うと頬を膨らませて、あからさまに怒ってますアピールをされると、さらに笑いが止まらなくなる。

 やっぱり蒼と居ると楽しいなと思いつつ、俺は止まらない笑いからやっと開放されると、俺の座ってるベンチの隣をポンポンと叩きながら隣に座るように促した。

 蒼は躊躇すること無く、俺の隣へと腰を下ろした。

「蒼また背が伸びたんじゃないか?」

 そう訊ねれば

「なっちゃんが縮んだんじゃないの?」

 そう言いながら蒼は楽しそうに笑っていた、そんな蒼を見ながら俺は話を続けた。

「昔は俺のほうが、蒼より背も高かったし、蒼の事を守れるのは俺だけだと思ってた……だから高校に入って蒼の背が伸びて、声だって変わってきて上手く言えないけど俺が居なくても大丈夫なんじゃないかと思ってた……」

 そう、話す俺の事を蒼は何も言わずに黙って聞いてくれていた。

「正直、蒼にも舞にも俺の優柔不断な態度で傷付けた……そう思うし嫌われても仕方ないと思う」

 そう言いかけた時に蒼は俺の言葉を遮るように強めの口調で、僕がなっちゃんの事を嫌うなんて事はありえないからと、俺に言葉を投げかけた。

 俺は、あぁ……うん……そうか……としか言葉が詰まって出てこなかった。

 単純に嬉しさも有ったけど、こんなにも俺のことをと思ってくれてると思うと胸が締め付けられそうだった。

「僕ね見た目が女の子みたいって、いじめられてた時なっちゃんだけが僕を守ってくれた、あの頃からなっちゃんは僕のヒーローだったんだ……でも志望校を決める時に、なっちゃんと離れたくない、僕がなっちゃんを守りたいって気持ちになっていったんだ、僕にとってなっちゃんは1番だから……」

 俺はそこまで聞いて蒼の話を遮った。

 この先は蒼には言わせない。

 きちんと俺の言葉で蒼に伝えたい。

「蒼……俺は色々と考えすぎて遠回りしたけど、やっぱり俺は蒼の事が1番好きだ」

 そう、伝えると蒼の喉がヒュッと鳴った。

 俺は蒼の手を取ると話を続けた。 

「初めは、この感情が何か本当に分からなかったんだ……蒼が男だから、ありえないと思っていたのかもしれない」

 俺は緊張しながらも蒼の顔を見ると元々色素の薄い瞳が夕日に照らされ綺麗な朱色に見えた、蒼はちゃんと俺の話を聞いてくれている。

 俺は気合を入れ直し、話を続けた。

「舞と付き合っていた時も、頭の中から蒼の事が消えることはなかった親友だからと言えばそうかもしれないけど……諒太やルイに向ける感情とはあきらかに違ってて……何を言いたいか分からないかもしれないけど、俺は蒼が男とか女とか関係なく、橘蒼の事が1番好きだ!もちろん恋愛的な意味で!」

 そう俺の気持ちを伝えると蒼の大きな瞳から涙が一滴溢れていた。

 なっちゃん不意打ちはずるい……凄いささった……

 そう話す蒼の顔は涙でグズグズだったけど、相変わらず綺麗な顔に見惚れてしまっい、俺は何が何だか分からず無意識に何度も謝ってしまっていたが、蒼は謝らないでと微笑んでくれた。

「なっちゃん僕は嬉しかっただけだから……気にしないで本当に嬉しい時にも涙がでるんだね。」

 蒼は、そう言うと俺から手を離し俺の顔を両手で包み込んだ。

「なっちゃん、僕はなっちゃんがその気持に気付く前からずっと、なっちゃんの事だけを思ってきたから、なっちゃんの気持ち凄く嬉しい僕もなっちゃんの事が大好きだよ」

 そう言うと、蒼の顔が近づいてきてお互いの唇が触れ合った、そして俺の唇の間に何かが侵入してきそうな感覚が怖くなり思わず蒼の胸を押し退けてしまった。

 蒼はビックリした顔をしながら

「そんな真っ赤な顔して……初めてじゃないでしょ?」

 蒼はそう言うと艶っぽい表情で俺に近づいてきて俺は思わず。

「今のが初めてだよ!!」

 と逆ギレしてしまった。

 蒼は小さく、えっ……と呟くと俺の耳元に近づき

「これからは、なっちゃんを僕の好みに染めちゃうから覚悟してね……」

 そう囁くと、溢れんばかりの笑顔で俺の手をにぎって、これからも宜しくねと笑顔を見せてくれた。

 この時の俺は、蒼の好みに染まるのも悪くないなと漠然と思っていた。

 一般的にみたら僕たちの関係は異質なものかもしれない……

 けれど、お互いを思いあってさえ居れば性別は今の俺には関係ないと確信を持っている。

 男とか女とか関係なく俺は間違いなく蒼に惚れている。

 そして俺はこの先、蒼の手によって蒼の好みに変えられて行くのだけど、それはまた別の話……

END
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