【完結】I adore you

ひつじのめい

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心憂

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 気まずい空気を変えようと俺は、蒼に何か欲しいものが有るか聞くも、今はいらないと断られてしまった。

 この状況をどうにかしようと考えていると、舞が俺にだけ聞こえるような声で体調が悪そうだから、もう帰ろうと言った。

 今来たばかりとは思ったが、確かに顔色も悪く見える俺は舞に、そうだねと伝えると舞は笑顔を浮かべると口を開く……

「橘くん、今日は様子を見に来ただけなので私はもう帰ります、お大事に……」

 そう蒼に伝えると蒼は一瞬、怪訝そうな顔を浮かべたけれど直ぐに、あきらかに貼り付いたような笑顔で、そうして貰えると嬉しいよと微笑んだ。

 俺は舞に引っ張られるよう病室を出るときに、なんとなく振り返ると蒼は泣きそうな顔をしながら俺達の方を見ていた。

 蒼……
 なんで、そんな顔をしてるんだよ……

 俺は舞に手を引かれるような形で病院の入口まで来ていた。

 舞は、思ったより元気そうで良かったねと笑顔を浮かべていたけれど俺には蒼がそんな風には見えなかった。

 別れ際に見た蒼の顔が、物凄く胸にひっかかった…

 舞に蒼と話したいことが有るから、悪いけど先に帰って貰える?そう訊ねると舞はあきらかにムッとした顔つきになったけれど明日いっしょに、寄り道してくれたらいいよと笑顔を向けてくれた。

 俺がゴメンネと伝えると、また明日ねと言うとこちらを振り向くことなく小走りで走って行ってしまった。 

 舞の姿が見えなくなるまで見送った後、蒼の病室の前まで戻ってきたものの、なんて声を掛けようかと迷っていると、中から押し殺した様な声が聞こえる。

 もしかして泣いてる?

 俺は考えるより先に身体が動いていた、ドアを開けると振り向いた蒼の目が大きく見開かれて俺の姿を見た瞬間に、思い切り顔を逸らされてしまった。

 蒼の肩が小さく震えているのを見て、無意識に近付き後ろから抱きしめててしまっていた。

 蒼は、身体をこわばらせなごら、消えそうな声で帰ったんじゃなかったの?と呟いた。

俺は、蒼の事が気になって戻って来たんだ舞は、先に返って貰ったから、蒼が大丈夫なら少し話をしようと伝えたが、反応がない。

 蒼の身体を俺の方に向けても、うつむいていて全然、顔を合わせてくれないから、俺は両手であの頬を包むとそのまま顔を近づけ目線を合わせた。

 蒼は泣くことを我慢しているのか、眉間に皺をよせつつ凄い目力で俺の事を見ていて思わず口が開いた。

「いつもの、綺麗な顔が台無しだな」

 そう俺は笑うと、蒼の大きな目から堰を切ったように涙が溢れてきた。

 俺は慌てて、何かしてしまったかと聞いも首を横に振るだけて声が出てこないみたいだった。

 俺は蒼の顔から手を離し近くの椅子に座ると、改めて蒼の手を包み込んだ。

 泣いている蒼を見て、子供の頃によく俺の背中に隠れていた蒼の事を思い出していた。

 なんでも出来て今は俺よりも背も高くなった蒼に、置いてかれてるように思っていたけど、昔と変わらず蒼は蒼だと思っていると。

「なっちゃん、ごめんね、僕のせいで、嫌な思い、させてしまって。」

 涙も止まらず、言葉がとぎれとぎれになりながらも蒼は俺に謝っているが、俺は蒼がなにに対して謝っているから分からなかった。

 いつもなら、自己解釈して納得していたけれど、最近は、そのせいで蒼との関係がギクシャクした事も有り、分からない事は聞くことにした。

「蒼は何に謝っているの?俺は嫌な思い俺はしてないよ、蒼の事を心配してるだけだよ。」

 俺の言葉を聞いて、蒼は怒ってない?、僕の事を嫌いになってない?と続けざまに質問された、俺の返事を待つ蒼の目は不安そうに揺れていた。

 俺は、蒼の事を嫌いになる理由も怒る理由も思い浮かばないと言うと、蒼は良かったと言葉を溢した。

 最近の蒼が今までとは違うと思う事が増えた事を蒼が少し落ち着いて来たら、聞くことにした。

 どれくらいの時間が過ぎただろう蒼が、なっちゃん手を離しても大丈夫と言われて、まだ蒼の手を離してないことに気付いて、なんとなく気まずくなり慌てて手を離すと改めて蒼と向か合った。

 俺が、蒼と名前を呼ぶと涙は既に止まっているが潤んだ目を俺に向けた。

 不謹慎だと思いながらも、そんな蒼の顔を見て綺麗だと感じながら、同時に蒼の笑顔を守りたいと思った。

 もう泣かせたくない……

「最近、蒼の感じが今までと違くて気になっていた、俺に出来る事なら話してほしい何かあったのか?」

 蒼にそうたずねると、蒼は。

 僕の事を嫌いにならない?

 さっきも同じ事を聞かれた、もちろん俺は蒼の事を嫌いになることはないと伝えると、蒼は意を決したように話し始めた。
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