【完結】I adore you

ひつじのめい

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出会い【前編】

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「蒼もしかして春休み中にまた身長のびた?」

 なんとなく目線の位置に違和感を感じて聞いてみるも、蒼はわからないと笑うだけだった。

「でも、卒業式の時は同じぐらいだったじゃん!ここ最近の食事のメニュー教えてくれ俺も伸ばしたい!」

「なっちゃんが、縮んだじゃないの?」

 クシャっとした笑顔で楽しそうに笑ってる顔を見ると、変わったようで変わってない所もある事に少しホッとした。

「俺は縮んでない……ハズ」

 そう俺が言い返すと、そこはちゃんと断定しなよと笑っていた。

 最後に測った時、絶対に170は有ったはずだから健康診断の時に縮んでない事を祈ろう。

「なっちゃん、ルイ君も同じ学校だと良かったのにね」

 少し寂しそうに話す蒼に確かに、何かあるたびに一緒に遊んでたルイは別の学校に通う事になった……寂しい気持ちはあるけれどルイもやりたい事の為に選んだ学校だ、遊べなくなった訳ではない……

 けど本当は凄い寂しい……

「落ち着いたら何か計画しよう!そうだ諒太は同じ学校だったよな?」

 前向きに蒼に話しかけた、その時そうそうと思い出したように蒼がりょうちゃんはギリギリになりそうなんだってと教えてくれた。

 俺と蒼とルイと諒太、毎日のようにつるんで遊んでた日常が高校という節目に関係が少し変わってしまった事を改めて実感すると、なんとも言えない気持ちだ。

 クラス発表の掲示板の前で、蒼は大きな溜め息を着いていた

「蒼は特進クラスだから、やっぱり離れちゃったな……」

 そう言いながら蒼の方へと顔を向けると、頬を膨らませて不満気な顔をしていて、いつもの大人びた雰囲気とのギャップに声を出して笑ってしまった。

「なっちゃんは!寂しくないの?」

 不満を隠す気のない表情をしながら俺を見下ろす蒼は何かを言いたそうにしていたけれど、クラスが別になるのは分かっていたから、既に気持ちの整理をしていた……

「寂しくないよ、蒼が頑張ってると俺もやる気が湧いてくるって言うか良い刺激もらえるから同じ学校に来れただけで楽しみだよ」

 俺がそう蒼に言うと不貞腐れながら蒼は口を開いた。

「その言い方はずるい!」

 そう言い返されると、昔から納得が行かないと蒼は何故か口がとがってくる現に今も……とがっていた。

 小学校の頃と変わらないなと思い無意識に、蒼の口元へと手を伸ばしたその時……

 うわぁぁぁと叫びながら俺から離れてしまった。

 蒼にごめんと笑いながら近づくと蒼は下をむいたまま俺に、いま何をしようとした……の?と聞いてきた。

 あれ?髪からのぞく顔と耳が赤いかも、そうとう怒らせてしまったみたいだ。

 蒼の口がとがっていて思わず唇をムニュっとしたい衝動が抑えられなかったと伝えると、子供っぽいいたずらはしないでと釘を刺された、それもかなりきつく刺された!

 やっぱり不意打ちに顔の前に手が出てくるのは驚くよなと思い、次からは声をかけてから、唇をムニュっとさせて貰おうと心に決めたのだった。

「蒼これからの俺は落ち着いた大人の雰囲気が溢れ出る男になるからな!」

 と伝えたが、なっちゃんは何も分かってない冷たくいい捨てられてしまった。


 蒼は式後の説明などが終わったら教室に迎えに行くから待ち合わせは……なっちゃんの教室ねとだけ言うと、俺達はお互いの教室へと向かった。

 ✽✽✽✽

 で、今は入学式の最中なんだんだけど、なんで校長の話って……こんなにも長いんだろう……

 全ての学校にマニュアル化されてるのかと疑いたくなるぐらい小・中そして高すべての学校で話が長すぎる。

 俺が限界を感じて舟を漕ぎはじめ意識を手放しそうになったその時、隣からクスクスと笑う声が聞こえた。

「あっスミマセン、校長先生の話ながくて眠くなっちゃいますよね」

 そう小声で話す彼女は、駅でお辞儀した子に似てる気がするけど間違ってたら悪いし余計な事は言わない事にした。

 やっと長い話が終わったと思ったら、今度は新入生代表挨拶を、たちばなあおい君とアナウンスが入った。

 え?蒼?俺が驚いていると、壇上に蒼が上がってきた。

 蒼を見た女子たちが口々に、格好いい、イケボすぎ……などの声を漏らしていた……

 確かに蒼は格好いい!

 けれど、それ以上に中身もめちゃくちゃ格好いい事を皆にも分かって欲しいと俺は思った。

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