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ボーイズ・トーク

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 僕が聞かないふりをしたのに、光くんは僕は腹黒じゃないよと笑顔で言いながらも目が笑ってないなかった。

 俺が腹黒を呼び寄せる能力があったりして……

 そんな能力いらねぇ~よ、と言いながらもまだ横たわっている空くんに、口元だけに笑顔を浮かべながら僕たちの他にも腹黒が居るの?と光くんが問いかけると

 躊躇うことなく空くんは【れんと】と答えた。

 アレ?光くんも知ってたの……かな?

 なんて考えていると、今まで見たことがない笑みを浮かべている光くんがいた。

「あはっ……やっぱり……2人はそうだったんだ……」 

 クスクスと笑っている光くん、その横で転がっていた空くんが凄い速さでガバッと起き上がると、額には変な汗をダラダラと浮かべていた。

 あぁ~やっぱり空くんは、伝えてなかったんだ……

「僕、誰にも言わないから大丈夫だよ」

 空くんは両手で自分の頬を叩くと、光くんに向き合うと口を開いた。

「ひかりんは友達だし、別に知られたくないとかじゃなかったけど言えなくてゴメン……担任と付き合ってるって退かれるかもしれないけどさ……担任になる前から付き合ってるんだ……」

 空くんは本当に真っ直ぐな男だな……先生は幸せだな……

「空くんは年上が好きなんだね……僕と気が合いそうだ……」

 光くんの言葉に、背中に冷たいものが走った……まさか……違うよね……

「僕は、遥先生が大好きなんだぁ~」

 屈託のない笑顔を浮かべている光くんの顔を虚無の表情で見ている事に自分でも分かって手が震えた、と同時に光くんと目があった。

「楓くん……そんな顔しなくても大丈夫だよ、楓くんのパパになりたいとは、まったく思ってないから。」

 衝撃的な事を言い出した光くんに、どういう態度を取れば正解なのか分からなくなってきた時、光くんが恍惚こうこつな表情を浮かべながら

 僕の推しなんだと頬を赤らめながら言った……。

 変化球すぎる……自分の親を推しだと言う友達に戸惑わないと言ったら嘘になる……

「そっか……それじゃ俺と、ひかりんは好みが似てるってことなんだな」

  空気が読めてない空くんが、嬉しそうに話しているけど、それは違うと言いたい……

「空くん!よく気付いたね、そうなんだよ似てるんだよ」

  えぇーー遥と、先生じゃ全然違うと思っていると

「年上の儚い系の美人、いいよなぁ~」

 そう話す空くんの頭に浮かんでいるのは間違いなく先生なんだろうな……。

「僕ね、遥先生に憧れてるんだ……番が居て、その人との間に子供を授かれるなんて、おとぎ話の中だけだと思っていたから……」

 光くんの今の発言で、空くんは光くんのバースに気付いた事だろう……

「ひかりんΩだったんだ……そんな気がしてたよ腹黒だしw」

  空くんの中でのΩが腹黒設定は、なんでなんだろう……

「やっぱり空くんは知っても変わらないね……楓くんの話を聞いた時から、大丈夫だとは思っていたけど……」

 そう話す光くんは、どこかホッとしたように見えた。

「俺だけじゃなくて、クラスのみんなも変わらないと思うぜ」

 そう話す空くんの笑顔に僕も救われた気がした。

 けれど、そうでない人が大半なのは僕も理解している……

 理解しているからこそ、空くんみたいに発言してくれると暖かい何かが胸に刺さって苦しくなる……。

「俺、βなんだよ……楓にαが怖い理由わけきかれた時には言い辛かったんだけど、元彼がΩでさ……同時進行で俺の他にαとも付き合ってたみたいで……αにバレた時に俺が別れる事を拒んでるって、ていで話されて……相手のαにボコられたんだよね……メンタル的にも……そして肉体的にも……」

 笑いながら話す空くんの気持ちを考えると、気付いた時には涙が零れた……

 バースで悩んでいたのは僕だけじゃなかったんだ……僕は本当に回りが見えてない。

 僕は空くんの隣に移動して座ると無意識に口から言葉が出た……

「僕がそいつボコる……」

 僕がそう言うと、光くんは僕はネチネチ締め上げますと冷たい笑みを浮かべていた。

 空くんは、僕と光くんの肩にてを回すと、震える声でありがとう……と言った。

 一呼吸置いた空くんは、あの時は絶望的だったけど……その後にすぐ楓と仲良くなったり、れんとと付き合い始めたりしたから、あの時は今の幸せの為の通過点だったんだよな……そう思うようにしてる。

 楓と仲良くなったから、ひかりんとも仲良くなれたし……

 俺さ今すげぇ~、毎日が楽しいんだ……

 そう笑う空くんの顔に嘘はまったく感じられなかった。

 あぁ~この感じ……なんかいいな……

「―――なぁ、楓に聞きたい事があるんだけど翠先輩と、どうなった?」

 そうだ……この話しもしたいと思っていたんだ。

「翠くんと付き合うことになったよ……仮だけど」

 僕の答えを聞いた空くんは、光くんの肩から腕を外すとそのまま僕の首に絡めると、ヘッドロックをかましながら、よかったなぁ~と涙声で言った。

 何度も感じてるけど空くんの力が強すぎて痛い……

「空くん痛いw」

 空くんはゴメンと言いながらすぐに離してくれた。

「楓くん、よかったね」

 ニカッと笑った光くんを見て素の光くんをみた気がした。

 バース関係なく、こんなにも仲良くなれるのは奇跡かもしれない……

「付き合ってるって言っても仮だから、これからは翠くんをドロドロに甘やかして僕から離れられないように僕っていう檻の中に閉じ込めたいんだ……」

 僕の言葉に、なぜか空くんも光くんも若干退いてたのが意味が分からなかった。

  そんな空気を変えたのは光くんだった。

「楓くん、空くん……実は僕はヒートを抑える薬を飲んでるとはいえ、まだヒートの経験がなくて……もし非常事態の時は嫌がっても薬を飲ませて……くれますか?」

  ――ヒートのツラさは僕には分からない……でも遥の時の状況をみると……辛いんだろうな……

 僕が一瞬、考えている間に空くんは当たり前だと笑っていた。

「ねぇ空くん、先生ってΩなら先生にもフォローして貰えないかな?」

  僕の言葉を聞いた空くんの表情が、文字通りにキラキラと輝きだした時に、嫌な予感がした。

「楓!すげぇ~な、すぐにそんなことは思いつかねぇ~よマジで!!」

 そう言いながら僕の背中をバシバシ叩きながら笑っていた。

 なんども思うけど力強すぎ!

「空くん!痛いってば!」

 僕と空くんの、やりとりを見ている光くんの目尻が滲んでいたのは……見なかったことにした。
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