21 / 31
1章
僕と空くんと光くん【後編】
しおりを挟む
教室へと戻った僕の顔を見ると、空くんと光くんは顔を合わせた後に心配そうな面持ち浮かべていた。
最初に口を開いたのは空くんだった……
「……楓、もしかした泣いた?」
なんで、この2人には分かってしまうんだろう……
そう思うと鼻の奥がツンと痛んだ。
「泣いてない……」
2人は、そっか……とだけ言うとそれだけで以上はなにも聞かないでくれた。
「ねぇ……楓くん……今日は遥先生はいる?」
家へと向かう道、若干ソワソワしていた光くんに唐突に質問されて不思議に思ったけれど居ることを伝えると、あきらかに表情が変わったのが分かった……
えっ……どういう事……
一抹の不安を覚えながら家へと向かった。
****
玄関を開けると、空くんが久々に来たと笑っていた。
僕は、これから2人に話をする事を考えるとお腹が重く感じているのを悟られないように……なるべくいつも通りを装っていた。
「楓おかえり、手洗いうがい終わったら部屋に行ってなよ、何か持っていくから。」
遥の言葉に僕よりも先に光くんが反応を見せた。
「遥せんせい、お気遣いありがとうございます。」
光くんの反応に僕と空くんと目が合うと空くんが、ひかりんあんな笑顔もできるんだと口から言葉が漏れていた。
僕も空くんの言葉に納得してしまった。
「光くん、楓と仲良くしてくれてありがとね……」
そう光くんに声をかけると光くんの耳が赤くなったのを僕は見逃さなかった……
えぇぇ~もしかして光くん……
そんな事を考えてるとは思ってるとは気付いてない、遥は今度は空くんに話しかけていた。
空くんも、うっすら頬を染めていて……この状況はなんなんだろうと胸がざわついた……。
なんとなく、いたたまれなくて急いで僕の部屋へと2人を案内した。
「相変わらず楓の部屋は広いよな」
そう言いながら腰を下ろした空くんの隣に光くんも座った。
僕はテーブルを挟んで空くんと光くんの前に座ると、一気に緊張してきた。
受け入れて貰えなかったら……
空くん達の態度が変わってしまったら僕は平常心を保てるのだろうか……
目の前で話をしている2人の会話すら僕の耳には入ってこない程に緊張しているのを感じた。
どうやって切り出せば良いのか考えていると、遥が飲み物とお菓子を持って来てくれて、特に何かを言うでは無かったけれど、部屋を出る時に僕の肩に手を置きながら頑張ってとだけ言うと部屋を出ていった。
ただ、それだけの事だったのに気持ちが軽くなったのは何故だろう?
親って、少しの声かけそれだけで安心感を与えるる事ができるの?そう思うと、少しだけ話し出す勇気が出てきた。
空くんと光くんの前にコップを置いて姿勢を正して短く息を吐くと2人の顔をしっかりと見据えた。
「空くん、光くん……僕の話を聞いてください……。」
いざそうと思うと、自分の気持ちとは反対に口が動いてくれなかった。
そんな状態なのに2人は急かすこと無く、僕が話しだすのを待っていてくれているようだった。
ふぅーーー
大きく息を吐いて、改めて2人に向きあう。
「……もしかしたら……長いこと空くんを騙していたと思われるかしれない、空くんと光くんに偽ったのは確かなんだけど……2人のことを信用してないとかじゃないんだけど……」
僕の話を真っ直ぐに見ながら2人は聞いてくれている……やっぱり。この先を言葉にするのが怖い……けれど、理由は分からないけど……受け入れてくれる気がした。
「空くん、光くん、僕ね……本当はαなんだ……」
なんとか言いきった……
「えっ……」
小さな声だったけど、空くんの声が耳に入ってきたと同時に座っているのにも関わらず、足元が崩れるような感覚に陥ったのが分かった……。
「僕は、そうかなって思ってたよ。」
光くんの声に顔をあげると、ふだんと変わらない表情で飲み物に口をつけていた。
空くんは……やっぱり目を合わせてはくれなかった……これが現実なのかな……
「楓くん、そんな落ち込む必要は無いと思うよ……普通に考えてΩの遥せんせいとαの楓くんのパパなら、高確率で生まれるのはαだよね?話さないって事は話せないって事とイコールじゃないと思うから、何か言いたくない理由があったんだよね?」
出会ってそんなに経ってないのに、ここまで分かっていた光くんに驚いていると光くんは話を続けた。
「長いこと一緒にいて気付かないって……どんだけ鈍感なの?って話だから空くんの事は気にしなくていいよ……親友って言葉に甘えて本質を見誤ってた空くんの怠慢だから。」
ニコニコしながら話す光くんに、空くんはマジかよ……と言葉を漏らすと、僕の方を見てゴメンと言った。
緊張しているからか、空くんが何で謝っているのかが理解できず、ただ僕の指先が冷たくなっていることしか分からなかった。
「ひかりんは……いつから気付いてた?」
空くんが問いかけると、確証は無いけど初めて会った時からだけど、今やっぱりそうなんだって思ったよと答えた。
「空くん……ごめんね……。」
「……なんで楓が謝るんだよ」
空くんはアァーと言いながら頭を掻いた後に僕の事を真っ直ぐに見ながら、気付けなくてゴメンと頭を下げた。
顔を上げた空くんと目が合うと今までと変わらない笑顔を見せてくれた。
「空くん……αが怖いんだよね?僕の事も怖い?」
空くんの笑顔を見たら僕の中で1番の心配事が口から出てしまった。
「ハッ?……えっ!?……なんで、その事を知ってる……の?」
えぇーー!空くんあれで隠していたつもりだったの?そう思ったら口元が歪むのを止めることができなかった。
光くんも、あれで隠してたとか……ウケるヤバイ……とボソリと言うから更に笑いが止まらなくなった。
空くんは、わなわなと震えながら涙目になりつつ立ち上がると口を開いた。
「楓は綺麗で可愛くて庇護欲を掻き立てられる美人なのに、実は腹黒なのは分かってたけど、ひかりんは大人しくて優しいと思ってたのに……まさか、ひかりんまで腹黒かよ!」
そう言いながら半泣きの空くんを見て、悪口を言ってるつもりなんだけど、そんな風にまったく感じなかった。
僕って腹黒なの?と首を傾げると、空くんは僕を睨むと楓はあざとくて腹黒なんだよ……と言いながら腰を下ろすと、そのまま後ろへと体を投げ出した。
腕で目を覆いながらブツブツ言ってる空くんに、僕が怖いか尋ねると、何でだよ!と返されたの聞いて、根拠はないけれど、今まで以上に仲良くなれそうな気がした。
さっきまでの重い空気だった部屋に風が通った気がした。
空くんが、何で俺の回りは腹黒だらけなんだよ……そう呟いたのは聞こえないふりをした……
最初に口を開いたのは空くんだった……
「……楓、もしかした泣いた?」
なんで、この2人には分かってしまうんだろう……
そう思うと鼻の奥がツンと痛んだ。
「泣いてない……」
2人は、そっか……とだけ言うとそれだけで以上はなにも聞かないでくれた。
「ねぇ……楓くん……今日は遥先生はいる?」
家へと向かう道、若干ソワソワしていた光くんに唐突に質問されて不思議に思ったけれど居ることを伝えると、あきらかに表情が変わったのが分かった……
えっ……どういう事……
一抹の不安を覚えながら家へと向かった。
****
玄関を開けると、空くんが久々に来たと笑っていた。
僕は、これから2人に話をする事を考えるとお腹が重く感じているのを悟られないように……なるべくいつも通りを装っていた。
「楓おかえり、手洗いうがい終わったら部屋に行ってなよ、何か持っていくから。」
遥の言葉に僕よりも先に光くんが反応を見せた。
「遥せんせい、お気遣いありがとうございます。」
光くんの反応に僕と空くんと目が合うと空くんが、ひかりんあんな笑顔もできるんだと口から言葉が漏れていた。
僕も空くんの言葉に納得してしまった。
「光くん、楓と仲良くしてくれてありがとね……」
そう光くんに声をかけると光くんの耳が赤くなったのを僕は見逃さなかった……
えぇぇ~もしかして光くん……
そんな事を考えてるとは思ってるとは気付いてない、遥は今度は空くんに話しかけていた。
空くんも、うっすら頬を染めていて……この状況はなんなんだろうと胸がざわついた……。
なんとなく、いたたまれなくて急いで僕の部屋へと2人を案内した。
「相変わらず楓の部屋は広いよな」
そう言いながら腰を下ろした空くんの隣に光くんも座った。
僕はテーブルを挟んで空くんと光くんの前に座ると、一気に緊張してきた。
受け入れて貰えなかったら……
空くん達の態度が変わってしまったら僕は平常心を保てるのだろうか……
目の前で話をしている2人の会話すら僕の耳には入ってこない程に緊張しているのを感じた。
どうやって切り出せば良いのか考えていると、遥が飲み物とお菓子を持って来てくれて、特に何かを言うでは無かったけれど、部屋を出る時に僕の肩に手を置きながら頑張ってとだけ言うと部屋を出ていった。
ただ、それだけの事だったのに気持ちが軽くなったのは何故だろう?
親って、少しの声かけそれだけで安心感を与えるる事ができるの?そう思うと、少しだけ話し出す勇気が出てきた。
空くんと光くんの前にコップを置いて姿勢を正して短く息を吐くと2人の顔をしっかりと見据えた。
「空くん、光くん……僕の話を聞いてください……。」
いざそうと思うと、自分の気持ちとは反対に口が動いてくれなかった。
そんな状態なのに2人は急かすこと無く、僕が話しだすのを待っていてくれているようだった。
ふぅーーー
大きく息を吐いて、改めて2人に向きあう。
「……もしかしたら……長いこと空くんを騙していたと思われるかしれない、空くんと光くんに偽ったのは確かなんだけど……2人のことを信用してないとかじゃないんだけど……」
僕の話を真っ直ぐに見ながら2人は聞いてくれている……やっぱり。この先を言葉にするのが怖い……けれど、理由は分からないけど……受け入れてくれる気がした。
「空くん、光くん、僕ね……本当はαなんだ……」
なんとか言いきった……
「えっ……」
小さな声だったけど、空くんの声が耳に入ってきたと同時に座っているのにも関わらず、足元が崩れるような感覚に陥ったのが分かった……。
「僕は、そうかなって思ってたよ。」
光くんの声に顔をあげると、ふだんと変わらない表情で飲み物に口をつけていた。
空くんは……やっぱり目を合わせてはくれなかった……これが現実なのかな……
「楓くん、そんな落ち込む必要は無いと思うよ……普通に考えてΩの遥せんせいとαの楓くんのパパなら、高確率で生まれるのはαだよね?話さないって事は話せないって事とイコールじゃないと思うから、何か言いたくない理由があったんだよね?」
出会ってそんなに経ってないのに、ここまで分かっていた光くんに驚いていると光くんは話を続けた。
「長いこと一緒にいて気付かないって……どんだけ鈍感なの?って話だから空くんの事は気にしなくていいよ……親友って言葉に甘えて本質を見誤ってた空くんの怠慢だから。」
ニコニコしながら話す光くんに、空くんはマジかよ……と言葉を漏らすと、僕の方を見てゴメンと言った。
緊張しているからか、空くんが何で謝っているのかが理解できず、ただ僕の指先が冷たくなっていることしか分からなかった。
「ひかりんは……いつから気付いてた?」
空くんが問いかけると、確証は無いけど初めて会った時からだけど、今やっぱりそうなんだって思ったよと答えた。
「空くん……ごめんね……。」
「……なんで楓が謝るんだよ」
空くんはアァーと言いながら頭を掻いた後に僕の事を真っ直ぐに見ながら、気付けなくてゴメンと頭を下げた。
顔を上げた空くんと目が合うと今までと変わらない笑顔を見せてくれた。
「空くん……αが怖いんだよね?僕の事も怖い?」
空くんの笑顔を見たら僕の中で1番の心配事が口から出てしまった。
「ハッ?……えっ!?……なんで、その事を知ってる……の?」
えぇーー!空くんあれで隠していたつもりだったの?そう思ったら口元が歪むのを止めることができなかった。
光くんも、あれで隠してたとか……ウケるヤバイ……とボソリと言うから更に笑いが止まらなくなった。
空くんは、わなわなと震えながら涙目になりつつ立ち上がると口を開いた。
「楓は綺麗で可愛くて庇護欲を掻き立てられる美人なのに、実は腹黒なのは分かってたけど、ひかりんは大人しくて優しいと思ってたのに……まさか、ひかりんまで腹黒かよ!」
そう言いながら半泣きの空くんを見て、悪口を言ってるつもりなんだけど、そんな風にまったく感じなかった。
僕って腹黒なの?と首を傾げると、空くんは僕を睨むと楓はあざとくて腹黒なんだよ……と言いながら腰を下ろすと、そのまま後ろへと体を投げ出した。
腕で目を覆いながらブツブツ言ってる空くんに、僕が怖いか尋ねると、何でだよ!と返されたの聞いて、根拠はないけれど、今まで以上に仲良くなれそうな気がした。
さっきまでの重い空気だった部屋に風が通った気がした。
空くんが、何で俺の回りは腹黒だらけなんだよ……そう呟いたのは聞こえないふりをした……
14
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
いつの間にか後輩に外堀を埋められていました
雪
BL
2×××年。同性婚が認められて10年が経った現在。
後輩からいきなりプロポーズをされて....?
あれ、俺たち付き合ってなかったよね?
わんこ(を装った狼)イケメン×お人よし無自覚美人
続編更新中!
結婚して五年後のお話です。
妊娠、出産、育児。たくさん悩んでぶつかって、成長していく様子を見届けていただけたらと思います!
オメガの騎士は愛される
マメ
BL
隣国、レガラド国との長年に渡る戦に決着が着き、リノのいるリオス国は敗れてしまった。
騎士団に所属しているリノは、何度も剣を交えたことのあるレガラドの騎士団長・ユアンの希望で「彼の花嫁」となる事を要求される。
国のためになるならばと鎧を脱ぎ、ユアンに嫁いだリノだが、夫になったはずのユアンは婚礼の日を境に、数ヶ月経ってもリノの元に姿を現すことはなかった……。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
バッドエンドを迎えた主人公ですが、僻地暮らしも悪くありません
仁茂田もに
BL
BLゲームの主人公に転生したアルトは、卒業祝賀パーティーで攻略対象に断罪され、ゲームの途中でバッドエンドを迎えることになる。
流刑に処され、魔物溢れる辺境の地グローセベルクで罪人として暮らすことになったアルト。
そこでイケメンすぎるモブ・フェリクスと出会うが、何故か初対面からものすごく嫌われていた。
罪人を管理監督する管理官であるフェリクスと管理される立場であるアルト。
僻地で何とか穏やかに暮らしたいアルトだったが、出会う魔物はものすごく凶暴だし管理官のフェリクスはとても冷たい。
しかし、そこは腐っても主人公。
チート級の魔法を使って、何とか必死に日々を過ごしていくのだった。
流刑の地で出会ったイケメンモブ(?)×BLゲームの主人公に転生したけど早々にバッドエンドを迎えた主人公
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる