【BL】正統派イケメンな幼馴染が僕だけに見せる顔が可愛いすぎる!

ひつじのめい

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1章

二者択一

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 僕の言葉を聞いた翠くんは僕の胸に顔を埋めると、そんなの楓に悪いよと言うと黙ってしまった……

 僕としては、お試しから正式に付き合えば良いだけなんだから、何の問題もないのに翠くんは一体何を悩んでるの?

「それなら僕と付き合おうよ」

 お試しが嫌なら普通に付き合えば良いと初めの提案に戻ったけれど、隣には立てないの一点張りだった。

 けれど翠くんが僕のシャツを掴んでるのに気付いているからね。

 翠くんは、思ってた以上に頑固なんだな……

 そんな翠くんも僕には凄く可愛く見える。

 きつと頭の中で色々と考えているみたいだけど、手に取るように分かるから愛おしい……

「なら、どうしたいの?」

 翠くんは僕の胸に顔を埋めたまま、今まで通りがいいと言った……。

 大好きな翠くんの言葉だけど、僕の頭の中で何かが弾けた音がした。

 えっ……それって今まで通りに翠くんに彼女や彼氏を作っても、僕は指を咥えて見てることしか出来ないってこと?

 ムリムリムリ

 今までだって、翠くんの隣に僕ではない人が居るのを見ただけで胸の中に黒い物が芽生えて、それを隠すのにどれほど苦しかったか……

 その状況をまた経験しないと、いけないと思うだけで気が狂いそうになる。

「それって翠くんの要望ばっかりだよね?僕はこれからも気持ちを押し殺しながら生きていかないとダメなの?」

 自分でも驚くほどに低い声がでてしまった、翠くんは体をビクリとさせると、僕のシャツを掴んでいる手が小刻みに揺れている事に気付いた。

 怖がらせてしまった?けれど僕と翠くんはたとえαとβだろうと対等だと僕は思っている。

 小さく息を吐くと、できる限り柔らかい声でゆっくりとした口調で翠くんに話しかけた。

「ねぇ翠くん……僕の翠くんへ対する気持ちは10年以上も前から変わらないんだよ、それどころか日々その気持ちが大きくなってきて自分でも抑えるのが大変なんだ……僕はもう翠くんの隣に僕じゃない誰かが立っているのを見るのは、ツラいよ……」

 僕の言葉を聞いて翠くんは、もう隠すつもりは無いのか涙の跡の残る顔を僕に向けた。

「俺が楓の近くに居るだけで、楓が周りに悪く言われるじゃないか!俺の知らない場所で楓が酷いことをされてたって後から聞かされた時の俺の気持ちが楓に分かるのかよ!」

 翠くんらしくない強い口調……そんな翠くんも無性に可愛いと思っているとじわりと翠くんの瞳に薄い水のベールが掛かった気がした。

「何も出来なかった俺の不甲斐なさが楓に分かるのかよ……」

 ボソリとはなった言葉と同時に翠くんの目から新しい涙の跡が作られた。

 へぇ~そんな事を思ってくれていたんだ……

 泣いている翠くんには申し訳ないけど、こんなにも僕のことを思ってくれてるって、間違いなく僕のことが好きじゃんと思ったら表情筋が緩む事を止めることが出来なかった。

 僕自身は酷いことをされた認識はなかったから、そんな些細な事で翠くんの心に僕が居た事を翠くんの口から言われると幸福感から抜け出ることが出来なそうだった。

 翠くんの心を僕のことだけで埋め尽くして、僕のことしか考えられないようにしたい……

「翠くんは、そんなにも僕のことが好きなの?」

 翠くんを真っ直ぐに見つめながら首を少し傾けながら問いかけると、服から見えている肌がみるみるうちに赤く染まっていった。

 はぁ~ヤバイ……こんなにも可愛い翠くんの姿を見たことがあるのは僕だけじゃないかと思うと高揚感で気を抜くと理性が吹き飛びそうだった。

 やっぱり……僕だけの翠くんにしたいなぁ……

 翠くんの隣に僕が居ると傷つけられると翠くんが思うのなら、隣に居ても文句を言わせないようにすれば言いだけだよね?

 学校内では翠くんがβだと知っているのは今の所、僕だけっぽいしαとαの恋人同士と思われているなら誰も何も言わないよね?ってか言わせないけど。

 翠くんの初めてには、なれなかったけど……最後の恋人になる事は出来るよね?

 自答自問をしながら翠くんを抱きしめていた腕を引き寄せると翠くんの肩に顎を預けると口を開いた。

「ねぇ翠くん僕は今のままは無理かな……今のままの関係を翠くんが望むなら僕は、翠くんから離れたほうがお互いの為になるんじゃないかな?」

 翠くんの喉がヒュッと鳴ったのを僕は聞き逃さなかった、ここで畳み込まなければ、いつまでたっても僕たちの関係は平行線のまま変わらない。

「翠くん僕は優しいから翠くんに選ばせてあげる、お試しで付き合うのと、正式に付き合うのどっちがいい?他の選択肢は認めないよ。」

 僕が、そう言い放った後は秒針の音がやけに大きく聞こえて僕と翠くんの間には静けさだけが流れていた。

 翠くんの体から力が抜けたのを感じたとき、流れが変わりそうだと直感的に感じた。

「楓、本当にお試しでもいいの?」

 集中していなかったら聞き逃してしまいそうな翠くんの囁きだった……。
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