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1章
Coming Out
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翠くんの手の温もりを感じていると徐々に気持ちが落ち着いてきた。
僕は翠くんに目を合わせると、聞いて欲しい事があると伝えた。
翠くんは小さく頷くと、子供の頃と変わらない笑顔を見て最後の一押しをされた気がした。
僕は1度、息を吐き出すと改めて翠くんを目に捕えると口を開いた。
「翠くん、僕はαなんだ……」
この時の翠くんの表情を僕はこの先、忘れることは出来ないだろう、アーモンドのような目が大きく見開かれると、直感的にその目は僕を映していない事に気付いた。
同時に、何故だか分からないけれど翠くんから声をかけてくれるまでは、声をかけてはダメだと本能が警告していた、僕は繋いだ手を離さない事しか今の僕には、出来なかった。
「楓はαだったんだ……」
そう話す翠くんは笑顔を浮かべていたけれど、その笑顔はどう見ても泣くのを我慢するために作られた笑顔にしか見えなかった……
僕はまた間違ってしまったのかな……
それでも僕が翠くんの事を、どれほど好きかとまだ伝えていないじゃないかと思うと抑えきれなくなった、気持ちを翠くんに伝えることにした。
「翠くんは僕がαだと言うことを内緒にしていたから……いまそんなに悲しそうな顔をしているの?」
時間にしたら数分の沈黙……けれど僕には数時間経ったような重い時間が流れた後に翠くんが口を開いた。
「……なんだよ俺は……」
俯いた翠くんの口からは途切れた言葉しか聞こえてこなかった。
僕が翠くんと呼ぶと伏せられた顔から隠れ見える眉間には深い皺がよせられていて、こんな表情の翠くんを1度も見たことが無かった。
誰よりもかっこよくて……
どんな手を使ってでも隣に居たい僕の大切な人……
それなのに翠くんに、こんなにも悲しそうな顔を僕がさせてしまったと思うと、胃の内容物が出てきそうだった。
「僕がαだと言えなかったのは、いつまでも翠くんに守ってもらいたいと思う甘えからだった……黙っててごめんなさい……悲しそうな顔をさせてしまったけれど僕は翠くんが好きだよ……あの時……翠くんに助けてもらった時から僕は翠くんが大好きなんだ……翠くんにとって僕じゃ力不足かもしれないけど、ずっと翠くんの隣に立っていたいよ……」
僕の言葉を聞いた翠くんの表情は分からなかったけれど髪から覗く耳が朱色に色付いたのは見て取れた。
僕は自分に都合の良いように解釈しているのかもしれない……。
翠くんも僕のこと好きだよね……?
そう言葉に出そうだったのを我慢した……大事なことをまだ伝えていないから。
「翠くん、僕と付き合って下さい」
胸に秘めていた言葉をやっと伝えることが出来た。
翠くん、お願いだから早く答えて……
楓……そう僕の名前を呼ぶいつもより低い声色の翠くんの口から放たれた言葉には破壊力があった。
「ゴメン……楓の気持ちに答えることは出来ない……」
なんで僕の顔を見て返事をしてくれないの?
そう思うと僕は握っていた手を放すと、そのまま翠くんの顔を僕の方へと向かせるために両頬に手を添えた。
なんで……そんな顔をしているの……
僕がそんな顔をさせてしまったのかと思うと、今まで感じたことのない胸の痛みを感じると同時に、僕が翠くんから、そんな表情を引き出したのかと思うと別の感情が生まれたのも確かだった。
涙に濡れる翠くんも綺麗だな……
「翠くんなんで泣いてるの?」
ゆっくりとした言い方で翠くんに問いかけても、翠くんは泣いてないと一言呟いただけだった。
翠くんの両目から滴る雫はどうみても涙にしか見えなかった、僕が思ってたよりも翠くんは強がりだなと、また見たことがない一面を知ってしまった。
「翠くんは僕のことが好きじゃないの?」
自分で言いながらも、ずいぶんと傲いるなと思いながらも、翠くんは僕のことを好きだと確信に似た何かを感じたからこその言葉だった。
「嫌いじゃない……」
そう言うと唇が震えているのを悟られないように、口をつむぐ翠くんを見ると、僕には翠くんが僕のことが好きだという気持ちが痛いほどに伝わってきた。
それなら何故、素直に答えてくれないんだろう?
「翠くん、嫌いじゃないって答えだと僕は好きだと言われてると思ってしまうよ。」
そう言うと、翠くんの目からは涙が止めどなく流れていた。
「俺じゃ……ダメなんだよ……」
「なんで?」
「楓はαなんだろ……」
僕が頷くと翠くんは長く目を閉じた後に僕を見据えると偽物の笑顔を僕に向けた。
「俺は……βなんだよ……」
翠くんの言葉に動揺しなかったと言ったら嘘になるけれど僕にとって、そんな事は特に問題視するような事ではなかった。
「βだと何でダメなの?」
僕の問いかけに翠くんはβは普通だからαの楓の隣には立てないと言った……
そんな言葉を聞いて、気づいたら僕は翠くんを抱きしめていた。
僕はバース性を軽く考えていたのかもしれない……
βということで僕に劣等感を感じたのなら僕に出来る事は、翠くんを嫌と言うほど甘やかして僕には翠くんしか居ないと言うことを、身を持って分かってもらうしかない。
僕は翠くんの耳元に言葉を投げかけた。
「お試しでもいいから……僕と付き合って下さい」
僕は翠くんに目を合わせると、聞いて欲しい事があると伝えた。
翠くんは小さく頷くと、子供の頃と変わらない笑顔を見て最後の一押しをされた気がした。
僕は1度、息を吐き出すと改めて翠くんを目に捕えると口を開いた。
「翠くん、僕はαなんだ……」
この時の翠くんの表情を僕はこの先、忘れることは出来ないだろう、アーモンドのような目が大きく見開かれると、直感的にその目は僕を映していない事に気付いた。
同時に、何故だか分からないけれど翠くんから声をかけてくれるまでは、声をかけてはダメだと本能が警告していた、僕は繋いだ手を離さない事しか今の僕には、出来なかった。
「楓はαだったんだ……」
そう話す翠くんは笑顔を浮かべていたけれど、その笑顔はどう見ても泣くのを我慢するために作られた笑顔にしか見えなかった……
僕はまた間違ってしまったのかな……
それでも僕が翠くんの事を、どれほど好きかとまだ伝えていないじゃないかと思うと抑えきれなくなった、気持ちを翠くんに伝えることにした。
「翠くんは僕がαだと言うことを内緒にしていたから……いまそんなに悲しそうな顔をしているの?」
時間にしたら数分の沈黙……けれど僕には数時間経ったような重い時間が流れた後に翠くんが口を開いた。
「……なんだよ俺は……」
俯いた翠くんの口からは途切れた言葉しか聞こえてこなかった。
僕が翠くんと呼ぶと伏せられた顔から隠れ見える眉間には深い皺がよせられていて、こんな表情の翠くんを1度も見たことが無かった。
誰よりもかっこよくて……
どんな手を使ってでも隣に居たい僕の大切な人……
それなのに翠くんに、こんなにも悲しそうな顔を僕がさせてしまったと思うと、胃の内容物が出てきそうだった。
「僕がαだと言えなかったのは、いつまでも翠くんに守ってもらいたいと思う甘えからだった……黙っててごめんなさい……悲しそうな顔をさせてしまったけれど僕は翠くんが好きだよ……あの時……翠くんに助けてもらった時から僕は翠くんが大好きなんだ……翠くんにとって僕じゃ力不足かもしれないけど、ずっと翠くんの隣に立っていたいよ……」
僕の言葉を聞いた翠くんの表情は分からなかったけれど髪から覗く耳が朱色に色付いたのは見て取れた。
僕は自分に都合の良いように解釈しているのかもしれない……。
翠くんも僕のこと好きだよね……?
そう言葉に出そうだったのを我慢した……大事なことをまだ伝えていないから。
「翠くん、僕と付き合って下さい」
胸に秘めていた言葉をやっと伝えることが出来た。
翠くん、お願いだから早く答えて……
楓……そう僕の名前を呼ぶいつもより低い声色の翠くんの口から放たれた言葉には破壊力があった。
「ゴメン……楓の気持ちに答えることは出来ない……」
なんで僕の顔を見て返事をしてくれないの?
そう思うと僕は握っていた手を放すと、そのまま翠くんの顔を僕の方へと向かせるために両頬に手を添えた。
なんで……そんな顔をしているの……
僕がそんな顔をさせてしまったのかと思うと、今まで感じたことのない胸の痛みを感じると同時に、僕が翠くんから、そんな表情を引き出したのかと思うと別の感情が生まれたのも確かだった。
涙に濡れる翠くんも綺麗だな……
「翠くんなんで泣いてるの?」
ゆっくりとした言い方で翠くんに問いかけても、翠くんは泣いてないと一言呟いただけだった。
翠くんの両目から滴る雫はどうみても涙にしか見えなかった、僕が思ってたよりも翠くんは強がりだなと、また見たことがない一面を知ってしまった。
「翠くんは僕のことが好きじゃないの?」
自分で言いながらも、ずいぶんと傲いるなと思いながらも、翠くんは僕のことを好きだと確信に似た何かを感じたからこその言葉だった。
「嫌いじゃない……」
そう言うと唇が震えているのを悟られないように、口をつむぐ翠くんを見ると、僕には翠くんが僕のことが好きだという気持ちが痛いほどに伝わってきた。
それなら何故、素直に答えてくれないんだろう?
「翠くん、嫌いじゃないって答えだと僕は好きだと言われてると思ってしまうよ。」
そう言うと、翠くんの目からは涙が止めどなく流れていた。
「俺じゃ……ダメなんだよ……」
「なんで?」
「楓はαなんだろ……」
僕が頷くと翠くんは長く目を閉じた後に僕を見据えると偽物の笑顔を僕に向けた。
「俺は……βなんだよ……」
翠くんの言葉に動揺しなかったと言ったら嘘になるけれど僕にとって、そんな事は特に問題視するような事ではなかった。
「βだと何でダメなの?」
僕の問いかけに翠くんはβは普通だからαの楓の隣には立てないと言った……
そんな言葉を聞いて、気づいたら僕は翠くんを抱きしめていた。
僕はバース性を軽く考えていたのかもしれない……
βということで僕に劣等感を感じたのなら僕に出来る事は、翠くんを嫌と言うほど甘やかして僕には翠くんしか居ないと言うことを、身を持って分かってもらうしかない。
僕は翠くんの耳元に言葉を投げかけた。
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