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翠くんのお部屋

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 どうしたら幼馴染から抜け出すことが出来るんだろう……

 楓が1番かっこいいよ……
 楓の事が好きだよって言ってもらうにはどうすればいい?

 αとαのカップルは淡白な人達が多いけど、僕が翠くんに向ける気持ちは、まったく淡白とは言えないけど大丈夫なんだろうか?

 でも翠くんに対する緑のブラコンっぷりを見てるとαとαでも、イチャイチャしてる恋人同士もいるかも知れないから、僕が翠くんをデロデロに甘やかしても問題ないと思うんだよな……

 翠くんが僕をΩと認識してるなら、もっともっとガツガツ来てくれたら僕は嬉しいけど……

 翠くんの中で僕は本当に幼馴染以外の気持ちはないのかも……そんなマイナス思考になるのは嫌だけど……

 ねぇ、小雪さんどう思う?

 僕の問いかけに翠くんのお母さんの小雪さんは、楓くんはそのままで十分、魅力的だよと言われたけどそのままでいたら、翠くんに恋人が出来てしまったし、幼馴染としか思って貰えないし……。

 努力しないと振り向いてもらえない……

「ねぇ楓くん、久々に翠の部屋でも見てみない?もしかしたら何か参考になるかもしれないわよ……驚くほど昔と変わらないけど。」

 そう話しながら笑っている、小雪さんの言葉を聞いて、もし翠くんが付き合っていた人の写真とかを飾っていたら……

 数年は引きずる自覚がある……けれど、久々に見てみたいと言う欲も捨てることは出来ずに、見てみたいと答えると、おばちゃんが部屋まで連れて行ってくれた。

 翠くんの部屋のドアを開けると中から、翠くんの香りがして胸がバクバクした。

「楓くんは大きくなったけど、顔も面影が残ってるし雰囲気は変わらず昔のままね、耳は……うん、痛そうね。」

 小雪さんは自分の耳を指さしながら、痛くないのか心配する顔が翠くんと重なった。

「小雪さん僕の顔って……なよなよしてる?」

 そんな事を聞くつもりは無かったのに言葉がでてしまった。

「楓くんの顔はなよなよしてる訳ではなくて綺麗なのよ、女の私でさえもドキリとする時があるわよ、まぁ遥に似ているから人の目を引くのは仕方ないわね……。」

 そう言いながら笑う顔が翠くんにそっくりだった。

「ほら、私ってツリ目じゃない?翠もそうだけど……楓くんのタレ目に憧れるわ、可愛もの。」

 そう言うと、ゆっくり見てていいわよ、翠くんに得るものが見つかると良いんだけどと言い残すとリビングへと戻ってしまった。

 翠くんの部屋へ一歩踏み入れると香りが強くなった気がした。

 そして、めの前に広がるファンシー空間。

 翠くんは昔から可愛い物やモチーフが好きだったもんな……

 その時、机の写真立てに飾られてる写真が目に入った。

「懐かしい、幼稚園の頃の僕と翠くんの写真だ。」

 写真の中の僕たちは、弾けるような笑顔を浮かべていた。

 この頃は翠くんの方が僕より大きかったんだよな……

 そういえば、最近は昔みたいな笑い方をしてる姿を見ないけど何か理由わけがあるのかな?

 またこの頃の翠くんの笑顔が見たいな……。

 小さい頃の自分の屈託のない笑顔を見て、今の僕の笑顔は作り物の様に感じると何かが掴めた気がした……小雪さんに、お礼を言い挨拶を済ませると自分の家へと向かった。

 ✽✽✽✽

 まずは翠くんが本当に好きなものをノートにまとめて、明日の観察予定を立てなければ。

今まで観察した結果から、どうやら学校では可愛いもの好きを隠しているっぽいって事は分かっていた。

 そこで、疑問点が浮かんだ……

もしかして翠くんの元恋人達が……と言っても僕が把握しているのは3人だけだけど……みんな似た容姿や雰囲気をしていたのは、本当の好みのタイプをカモフラージュしていたからではないか?

 それって僕はカモフラージュ側を必死こいて目指してきたって事だったりして……

 翠くんの好みが、そのんまファンシーな可愛さのある人なら……僕にも可能性はゼロではない……と思いたい。

 そんな事を考えていたら徐々に頬が熱くなったと同時に変な声がでた……。

「楓、ずいぶんと楽しそうだなw」 

 声のする方へと顔を向けると、わざとらしく口元を手で抑えながら笑いを堪えている父さんの姿が目に入ってきた。

「えっ……いつから居た?」

 父さんは僕の質問には答えず笑いに耐えているようで今度は肩を震わせていた。

 うわぁ~絶対に初めから見ていたパターンじゃないか……

 白目を向きそうなのを、頑張って堪えていると父さんは僕の肩をポンポンと叩くと口を開いた。


「まだ翠くんのストーカーしてるのかよ……」

 そう言うとニヤニヤとした嫌な笑みを浮かべていた。

 ストーカーじゃないから!

 翠くんの観察だから!

 そう言い返したかったけれど、父さんの圧に言い返せなかった。

 そんな僕に気付いた父さんは自信満々に言葉を放った。

「気持ちは痛いほど分かるぞ……父さんも昔、遥にやってたからな。」

 悪びれることもなく堂々とドヤ顔をしている父さんをみて、この人と同じ血が流れてると思うと少しだけ頭が痛くなった。 
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