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6-再度質屋へ
しおりを挟む龍一は商売を始める以上、店舗型経営が必要であると考える。薬品研究や、販売先の顧客の情報管理、後に行う予定である独自ブランドの薬品教育を行いたいためだ。
「まずは店を構えようと思うが、エレナは異論ないか?」
「店の資金はどうすんのよ」
「それは……まあこれを売ろうかと思う」
龍一は右手の人差し指にはめてあるシルバーのリングを見せる。それはいたって普通の銀色の指輪ではあるが、そこに描かれているドラゴンの彫刻を施したデザインは、荒々しさと繊細な印象が目を引き、龍一自身を具現しているようでもあった。
「これ、すごい……、売っちゃうの?」
「まあいくつかあるうちの1つだしな。じゃあ、アルさんの店に行くか」
龍一はシルバーアクセサリーが好きなのである。
話しながら食べていた朝食を終え、宿泊していたホテルをチェックアウトし外に出る。さわやかな朝の陽ざしが目に飛び込む。それはキラキラと輝き、龍一にとって転移したばかりの見慣れない光景はやけに眩しく、新しい世界は輝いて見える。
ホテルからしばらく歩き、アルの質屋につく。前はエレナが先に店に入っていったが、今度は龍一が先に扉を開く。
「アルさん、またお世話になります」
「アルー、おはよー!」
「おう、リュウイチとエレナか。ちょっと待ってな……。おし、今日は朝から何の用だ?」
どうやら開店したばかりだからか、机の上にはまだ値札の付いていない鑑定品が並んでいて、それを片付けている。
「今日はこのリングを売りに来たんだ。」
龍一は売却前に少し磨いておいた、銀色の指輪をセカンドバッグから取り出す。
「どれどれ、おぉ……。こりゃまたすげえな。どこのデザイナーだ?こんな繊細な物見たことねえぞ」
前回と同様、ルーペで詳細に鑑定する。
「まあ、遠い国の品だな、それで、いくらになりそうだ」
「いや、これはすぐに値は付けられねえな。知っての通り、アクセサリーは魔法を付与して身に着けることが多い。リングは他のアクセサリーより身に着けやすいから、値が張りやすいんだ。普通のリングはここまで繊細なデザインは施されていないし、ましてや、銀は重さを感じないからかなり人気だ。デザイン重視のリングは嗜好品だからな」
「そうか、なら先に見立ての前金、後に売れ分でどうだ?」
「そうなるな。ちょっと待って置け。……よし、……とりあえず金貨100枚でどうよ、売れたら連絡入れるか?」
「感謝する。連絡は……、そうだな、ひとまずはこの街にいるから、また店に寄らせてもらうよ」
龍一は金貨100枚をバッグにしまうと、礼を言い、店を後にする。取引中、エレナは店の品を物色していたようだ。
「いやー、すごい金額だったねー。前金で100枚て……。そういえば先日売ったネクタイピン、店になかったけどもう売れたのかなー?」
売ってから時間は経ってないと思うが、もう購入者がいたのか。
「じゃあ、この金で店を買いたいんだが、どこにいけばいい?」
「商人ギルドだね、物件紹介してくれるよ! 案内する!」
エレナに言われるがままついていくと、街の中央にある通りに面した、ひと際大きな建物が目に入ってくる。
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