6 / 7
5-龍一のビジネス
しおりを挟む眠りから覚めると、部屋の中が明るい朝日で満ちている。眩しさが目を刺激し、ゆっくりとまぶたを開けると朝日の眩しい光が目に入ってくる。窓から差し込む光は、淡いオレンジ色を帯びており、柔らかな朝日が部屋の中を優しく照らす。開けた窓からは部屋の中に爽やかな朝の空気が流れ込む。
隣の部屋から、エレナも起きたような物音がする為、しばらくして朝食に誘った。ホテルの朝食はビュッフェ方式だった為、各々好きなものを取りに行き、丸いテーブル席を二人で対面する形で座る。
龍一は改めて昨夜に話した内容を伝える。
「エレナ、昨日も言ったと思うんだが、一緒にビジネスをやらないか?」
「あー頭いてえー……、え?……何の話?」
泥酔して二日酔いのようだ。
「もう一度話をするとだな、俺は当面の間、この国を拠点にする」
「うんうん」
「そうなると何か仕事をして金を稼ぐ必要がある」
「うんうん」
「そこでだ、どこかに所属するということはせず、自身で商売をやろうと思う」
「うんうん」
「それをまずは手始めに、エレナの薬師を生かしてビジネスができればいいと思ってるんだ」
「うんうん……、え?」
「私は今の仕事どうするの?」
「昨日の酒の席では、今の仕事を辞めると言っていたようだが」
「あちゃー、またお酒飲んで人に愚痴を聞かせてたのか、今度から気を付けます」
「愚痴をこぼすのは全然いいんだが、飲みすぎには気をつけろよ」
「はい、ごめんなさい、それで私は昨日なんと?」
「こんな仕事辞めてやる、もっと研究して色んな人を助けたいんだ。と」
「まあ、なんの弁解もなく、その通りなんだけどね」
「それで、どうする?」
「うーん、具体的にはどうするの?」
「それはだな……」
昨日泥酔する前のエレナから聞いた情報をもとに考えたビジネスはこうだ。
1.健康補助品や衛生商品の開発と販売。
2.複数効果を持つカスタム薬品の製造。
3.薬品教育による人材育成と量産、又、薬品の配送システム。
健康補助品は現代で言うところのビタミン・サプリメント剤で、普通の食事では足りない栄養素を補うものである。この国での薬はもっぱら傷の手当やポーションでの回復といったものでしかなく、薬を日常の健康に飲むことはしない。
衛生商品についても、昨日使った石鹸やシャンプーは泡立ちや香りがそこまでよくなかった。
カスタム薬品では、普段使うポーションはHPやMP、麻痺や毒などの状態異常系に分かれていることから、それらを2種類や3種類に統一して、HPと麻痺の回復をすることができればといった話だ。また、これはユーザーの需要に合わせて配合を変えていくことができればいい。
それら独自の薬を他の人材にも教育し、量産していき、各場所へと配送。といったところである。
「めちゃくちゃ面白そうじゃない! だけど、健康補助品なんて普段使わない新しい物は、受け入れられるのに時間がかかるわよ?それと薬師の端くれからすると、複数の効果を持ったポーションなんてめったにない上、高額だし……」
「複合の研究については……エレナしだいだ……新しい物の売り方は俺に任せろ!」
元々暴力団で過ごしていた龍一は、違法なビジネスをしていたが、商売の才能があり、他の組が捨てた商材を売り方を変え、シノギにしていた。だがこの世界では健全なものをまっとうに売っていきたいと思っている。
黒木龍一は自らの決意を固く、彼は新たなる商売への準備を整え、異世界で自らの運命を切り開いていくことを決心した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる