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5-龍一のビジネス
しおりを挟む眠りから覚めると、部屋の中が明るい朝日で満ちている。眩しさが目を刺激し、ゆっくりとまぶたを開けると朝日の眩しい光が目に入ってくる。窓から差し込む光は、淡いオレンジ色を帯びており、柔らかな朝日が部屋の中を優しく照らす。開けた窓からは部屋の中に爽やかな朝の空気が流れ込む。
隣の部屋から、エレナも起きたような物音がする為、しばらくして朝食に誘った。ホテルの朝食はビュッフェ方式だった為、各々好きなものを取りに行き、丸いテーブル席を二人で対面する形で座る。
龍一は改めて昨夜に話した内容を伝える。
「エレナ、昨日も言ったと思うんだが、一緒にビジネスをやらないか?」
「あー頭いてえー……、え?……何の話?」
泥酔して二日酔いのようだ。
「もう一度話をするとだな、俺は当面の間、この国を拠点にする」
「うんうん」
「そうなると何か仕事をして金を稼ぐ必要がある」
「うんうん」
「そこでだ、どこかに所属するということはせず、自身で商売をやろうと思う」
「うんうん」
「それをまずは手始めに、エレナの薬師を生かしてビジネスができればいいと思ってるんだ」
「うんうん……、え?」
「私は今の仕事どうするの?」
「昨日の酒の席では、今の仕事を辞めると言っていたようだが」
「あちゃー、またお酒飲んで人に愚痴を聞かせてたのか、今度から気を付けます」
「愚痴をこぼすのは全然いいんだが、飲みすぎには気をつけろよ」
「はい、ごめんなさい、それで私は昨日なんと?」
「こんな仕事辞めてやる、もっと研究して色んな人を助けたいんだ。と」
「まあ、なんの弁解もなく、その通りなんだけどね」
「それで、どうする?」
「うーん、具体的にはどうするの?」
「それはだな……」
昨日泥酔する前のエレナから聞いた情報をもとに考えたビジネスはこうだ。
1.健康補助品や衛生商品の開発と販売。
2.複数効果を持つカスタム薬品の製造。
3.薬品教育による人材育成と量産、又、薬品の配送システム。
健康補助品は現代で言うところのビタミン・サプリメント剤で、普通の食事では足りない栄養素を補うものである。この国での薬はもっぱら傷の手当やポーションでの回復といったものでしかなく、薬を日常の健康に飲むことはしない。
衛生商品についても、昨日使った石鹸やシャンプーは泡立ちや香りがそこまでよくなかった。
カスタム薬品では、普段使うポーションはHPやMP、麻痺や毒などの状態異常系に分かれていることから、それらを2種類や3種類に統一して、HPと麻痺の回復をすることができればといった話だ。また、これはユーザーの需要に合わせて配合を変えていくことができればいい。
それら独自の薬を他の人材にも教育し、量産していき、各場所へと配送。といったところである。
「めちゃくちゃ面白そうじゃない! だけど、健康補助品なんて普段使わない新しい物は、受け入れられるのに時間がかかるわよ?それと薬師の端くれからすると、複数の効果を持ったポーションなんてめったにない上、高額だし……」
「複合の研究については……エレナしだいだ……新しい物の売り方は俺に任せろ!」
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黒木龍一は自らの決意を固く、彼は新たなる商売への準備を整え、異世界で自らの運命を切り開いていくことを決心した。
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