究極のポーター 最弱の男は冒険に憧れる

長野文三郎

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第7話 オンケルの渇望

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 視線がとっても痛いです。
俺はチェリコーク子爵家の応接室にいる。
「それでパティー、こちらはどなたかな? 紹介してほしいのだが」
子爵の言葉にドギマギするパティー。
「彼はイッペイよ。旅の途中で知り合ったの。その…私の友人よ」
みな目を見開いてびっくりしている。
やはり平民ぽいのが友人というのは常軌を逸しているのだろう。
子爵だけは表情を変えずに声をかけてくる。
「イッペイ君か。姿を拝見するに東のクリネスクよりさらに向こうの方のようだ」
「初めまして子爵。私はイッペイ・ミヤタと申します。ご推察の通り東方からの旅人でございます」
転移などと説明するのは面倒なので適当に話を合わせてしまおう。
「ふむ、ミヤタとは聞かない家名だが貴族の方か」
「えー、先祖が士族です」
ご先祖様はお侍らしいので嘘は言ってない。
「そうであったか。ネピアへよく参られた」
なんか納得しちゃったみたいだ。
他の人々が首をかしげているので子爵が説明をしてくれる。
「士族とは東方の国々において、武門を司る家のこと。我が国の騎士と同じだよ」
うん、それほど間違ってはいないと思う。
よくわかんないけどそういうことでいいんじゃない。
みんなも納得したように頷いているからいいことにしよう。
パティーもほっとした顔をしている。
身分差別はいけないが、この世界の常識ではそんなことは言えないだろう。
郷に入っては郷に従えという諺もあるくらいだから、空気を読んで静かにしておくことにする。
「君は士族ではないのかい?」
パティーの兄らしき人が追及してくる。
「私は次男なので家督を継いでおりません。なので、遊学のために旅をしております」
嘘半分、真実半分だ。
だが子爵は納得してくれたみたいだ。
「それで今日は当家にはどういった御用でいらっしゃったのかな?」
「一文無しだから泊めてもらおうとしてました」とは言えない。
ここは一発、はったりをかまして商売をさせてもらおう。
俺はパティーが弁明しようとするのを手で制して口を開いた。
「お恥ずかしい話ですが路銀が大分乏しくなりまして……。なに、贅沢をしなければまだ1月は暮らせます。その間に国元から金は届くと思うのですが、やはり宿や食事の質を落とすのは辛いのです。そこで私が所持している東方の秘薬やナイフなどをパティーさんに買っていただけないかと持ち掛けたところ、商品を見てくださることとなりました」
 自分なりに上流階級ぽく言葉を継いでみたけどどうだろう? 
「ほほう。東方の品々ですか。それは是非私も拝見したいですな」
よし! 
子爵は社交辞令でああいったに過ぎないだろう。
だが、品物さえ見れば絶対に喰いついてくるはずだ。
商品自体は一平印の良品ばかり。
きっと売れるに違いない。
売れてほしい!
俺は旅の途中に錬成したものを机の上に並べていった。

 まずは柄が鹿角で出来たナイフだ。
見る人が見ればこのナイフがただのナイフではないことはわかるはずだ。
持ち手の鹿角の芸術性もさることながら、刃には「聖」の属性がつけてある。
ちなみにネピア観光の途中で寄った教会の水を拝借して属性を付与したから間違いない!
教会の椅子に座って作業したのは内緒だ。
ナイフを手に取った子爵の目が見開かれる。
「だれか、オンケルを呼んでまいれ! ミヤタ殿、我が家のお抱え鑑定士にお品を見せてもかまいませんか? 気に入ったものがあればお互いに納得できる値段で取引ができますので」
「もちろん構いませんよ」
こちらとしても商品には自信がある。
品質を正しく理解してもらった方がいいのだ。

 しばらくして頭の禿げあがったオンケルという鑑定士がやってきた。
メタボ体型のせいか頭が汗で光っている。
眉毛が太くて結構濃い顔をしていた。

鑑定

【名前】 オンケル
【年齢】 52歳
【職業】 鑑定士
【Lv】 8
【HP】 39/39
【MP】 162/163
【攻撃力】39
【防御力】42
【体力】 36
【知力】 152
【素早さ】36
【魔法】 
【スキル】鑑定Lv.12

 どうしてこのおっさんが俺より素早いのか……。

 子爵が事情を説明すると、オンケルさんはすぐに鑑定を始めた。
「こ、これは『聖』の属性付きナイフではありませんか! 市場には滅多に出回らない品です。オークション会場でたまに見かけるくらいです。拵《こしら》えの芸術性も高い。ナイフの切れ味も申し分ない。まごうことなき逸品です」
聖属性の武器ってそんなにレアだったんだ。
神官さんが信者にかけていた水を勝手に使わせてもらったんだけど思った以上の効果だったな。
「どれ、このポーションは。……っ!!」
それは普通の下級ポーションだよ。
「バカな。これ一本で【HP】を500も回復させるというのか!!」
「なんだと?!」
部屋にいた男たちが色めきだす。
「ミヤタ殿これは?」
道端の薬草で作りましたとは答えられない雰囲気だ。
「母が私の身を案じて持たせてくれた秘伝の薬で反魂金液《はんごんきんえき》と呼ばれています。少々過保護が過ぎるとは思いましたが、せっかく母が用意してくれたので持ってきたものです」
我ながら適当なセリフがスラスラ出てくるものだと感心してしまう。
「これは5本すべて売っていただけるのですか?」
「構いませんよ。まだ数本ありますから」
このような会話が続き、ついにオンケルさんが売れ筋本命ポーションのところにやってきた。
さあ、その効果をみて驚くがいい。
ふふふ。
鑑定を終えたオンケル氏がポーションを持ったまま固まっているぞ。
「どうしたのだオンケル。早くポーションの説明をせぬか」
「それは……」
オンケルさんは応接室を見まわして口ごもる。
「失礼をば……」
オンケル氏は子爵に近づきそっと耳打ちした。
「それはまことか?!」
子爵が確認するように俺の顔を見てきたので、強く頷いてやった。
「ミヤタ殿、こちらの商品も6本すべて売っていただけるのか?」
「はい。私には必要ありませんので」
「そうか……」

結局、ナイフもポーションも全部買ってもらえた。
全部で白金貨3枚と金貨56枚もらったのだが、価値がよくわからない。
その後で夕食をごちそうになって屋敷を辞した。
シギという鳥の料理が出されてすごくおいしかった。
赤ワインを使ったソースによく合っていたな。
料理スキルのせいかレシピがわかったので今度自分でも作ってみようと思う。

 パティーが気を利かせて、馬車でホテルまで送ってくれるように手配してくれた。
昨日まで野宿ばっかりだったのに急にセレブな感じになってしまったな。
ところでホテルっていくらかかるんだろう?
パティーは俺の財布の中身を知っているから、足りないなんてことにはならない筈だ。
今度折をみてお礼の手紙を書くことにしよう。

 そう言えば帰りがけにオンケルさんに声をかけられたな。
「あの薬はもうないんでしょうか?」
かなり真剣な顔をしていた。
血の涙を流さんばかりだった気がする。
今度材料が見つかったら作ってあげるとしよう。

鑑定
【名称】バイアッポイ スペシャル
【種類】勃起薬
【効果】種類から察してくれ
【属性】性属性
【備考】継続時間 7時間 副作用:軽度の目眩と頭痛を感じることがあります。
心臓に疾患のある方は服用を控えてください。

聖なるナイフ 白金貨3枚
回復ポーション(小) 金貨10枚×5
バイアッポイ・スペシャル 金貨1枚×6
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