少年はメスにもなる

碧碧

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(番外編)完熟・前編

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 この番外編3は、本編および番外編1・2から、3年後、10年後、15年後の3本立てになります。前編はそのうち3年後と10年後のお話が入っております。ショタ要素があまりございませんのでご注意ください。




 完熟・3年





 環が灰谷邸に引き取られて早3年。
 すっかりメイドとして仕事をこなせるようになった環は、相変わらず外には出ず、世間を知らないまま少しずつ成長していた。
 中身は昔のまま素直で純真だが、見た目は少し身長が伸び、あどけなさが抜けてきている。成長したからといって環の愛らしさは変わらなかった。むしろ薫に毎日愛されていることで、どことなく色気を持った、危うげな美少年になったと言っていい。

 そんな環の一日は、3年前とほとんど変わらない。
 薫と寝食を共にし、食事の準備、洗濯、掃除、書庫や倉庫の整理、買い出しのお願いなど、毎日ルーティンの仕事を行なっている。前と変わったのは、調教される少年がいる時、その子の風呂や腸内洗浄は環がしてあげることくらいだ。少年たちに薫の裸を見せたくないからと、環が自らお願いしてやらせてもらっている。

 ずっと屋敷の外とは関わらずに育ち、テレビもラジオもない。毎日同じことの繰り返しであるこの生活に、環には何の不満もなかった。



「ん、薫さん、い、イき、ます・・・っ、はああッ」

 トイレに行くたびに絶頂する癖も相変わらずだ。最近は達する時に体が激しく跳ねるのを我慢できるようになり、薫に押さえてもらう必要はなくなった。小水を出し切った後、快感で放心する環の陰茎を薫が優しく扱く。環はすぐに薫に抱きつき、控えめに腰を振った。

「ああッ、もう、もう、で、出ます・・・っ」

 環の腰がカクンと突き上がり、鈴口から精液が何度か噴き上がる。吐き出すたびに、息を詰め、びくびくと震えた。

 陰茎を拭かれ、力の入らなくなった体を支えてもらう。薫の腰あたりまでしかなかった身長は、胸くらいまで伸びていた。薫と視線が近くなるのは嬉しい。

 着替えのために2人で部屋に戻り、環が薫のセーターを脱ぐ。前は太ももまであったそれが、お尻がぎりぎり隠れているかいないかくらいになっていた。見えそうで見えない環のお尻をチラチラと気にしている薫には気づかず、服を着ていく。ズボンを履いてチャックを閉めようとした時、下着に毛が挟まっているのが見えた。毛を取ろうと引っ張ると、ピリッとした痛みを感じ、声を上げる。

「い・・・ッ!」
「どうした」
「な、なんでもないですっ」

 慌てて下着の中を覗き込むと、股間に2本、黒く縮れた毛が生えていた。環は薫の股間がふさふさとした毛で覆われているのを思い出す。そうか、大人になるとここに毛が生えるんだ。もしやと思って脇を見ると、鏡に映るそこに色素の薄い毛が少しだけ生えていた。

 そういえば、2日前から喉が痛くて声が出にくくなった。風邪かと思って薬を飲んでいたが、まだ治っていない。少し前から、腕やふくらはぎに筋肉がついてきた気もする。

 間違いない、本で読んだことがある。自分の体は大人に近付いているのだ。これから至る所に毛が生え、声変わりをし、体つきが変わっていくのだ。薫がすべすべだと褒めて撫でてくれた肌が、心地いいと言ってくれた声が、軽く抱き上げてもらっていた体が、変わっていく。

 環は自分の体を抱きしめ、震え始めた。怖い。勝手に成長していく自分の体が。薫に嫌われてしまうことが。とても怖い。

「環、どうした」
「ぁ、ぁ・・・」
「・・・今日は休め。俺の仕事もないし、環の分は俺がやっておく」

 ガタガタと震える環を心配した様子でベッドに寝かせ、薫がその額にキスを落とす。

「風邪が悪化したか。薬を飲んで、ゆっくり寝なさい」

 優しい薫の声に罪悪感が増した。体調なんて悪くない。でも、平常心で家事をこなせる気がしなかった。環は言われた通りベッドに横になる。

 環が名残惜しそうに部屋を出て行ってから、じわりじわりと涙がこぼれ、枕に吸い込まれた。下着を下げ、痛みに耐えながら毛を抜いた。脇も、脛も。
 これでいい。これでまた肌は薫に愛してもらえる。少し寝て、昼食の準備はさせてもらおう。



 咳き込みながら、もう大丈夫だと言って部屋を出てきた環に、薫の表情が曇った。明らかに泣き腫らした目をしている。環を抱きしめ、瞼にキスをしながら「何があった」と問うと、「薫さんがいなくて寂しくなっちゃっただけです」と恥ずかしそうに答えた。思わず顎を掬い上げ、環の唇を吸って舌を絡める。環は薫の腰に手を回し、一生懸命キスに応じた。

「はぁ・・・っ」
「だめだ、っ、今すぐ抱きたくなる」
「かおる、さん・・・」

 薫が無理やり口を離し、荒く息を吐く。実は環が風邪気味となって2日、セックスをしていない。環がせめて口でさせてと言ったが、そんなことをしてもらって襲わない自信がなかった。昨日は耐えられず環が寝てから一人で抜いたが、毎日散々交わっていた体は、欲求不満以外の何者でもなかった。朝から環がトイレで絶頂するのを見てから勃起がおさまらない。薫は、環が起きてくるまでに抜いておくべきだったと後悔した。

「昼からの仕事も俺がする。環は、」
「僕もやります」
「・・・辛くなったら我慢するな」
「はいっ」

 昼からは時折り環を休ませながら2人で家事をすすめていく。たまに咳き込む以外に、朝ほどの体調不良はなさそうだった。掃き掃除をする環の細い腰を、薫が後ろからそっと抱きしめる。突然のことに環がびくっと肩を揺らすと、薫が耳元で「今夜は抱かせてくれ」と囁いた。一瞬で真っ赤になった耳と首筋にキスをする。環が小さくコクコクと頷いた。



 1日の仕事が終わり、灰谷に挨拶をして一緒に風呂に向かう。環の体を洗っている間に、何度か「あんまり見ないでください」と言われた。恥ずかしがっているという感じではない気がする。薫がやや眉根を寄せた。

 ひとまず環をひっくり返し、腸内を洗浄しようと尻たぶを開くと、蕾の周りに一本の毛が生えている。薫が縁を指でくすぐった。

「ああッ」
「環、ここ、毛が生えてきている」
「ぁ・・・嫌ぁっ!見ないで、見ないでください!!」

 環がびくりと体を揺らし、突然暴れ出した。薫の膝から降りようと躍起になる。薫がそれを許さず強く抱きしめると、涙をぽろぽろとこぼしながら泣きじゃくり始めた。

「環、どうした」
「うう、僕の体、見ないでください・・・っ、お願いですから・・・ひっく」
「なぜだ」
「足とか、脇とか、っ、ち、ちんちんのところにも、毛が、生えて、きたんです・・・っ!抜いたけど、お尻にも、生えてるなんて・・・っう」
「成長すれば誰でもそうなるが」
「うう・・・僕の体が、大人になっても、薫さん、好きでいてくれる・・・?ううっ、ひっく」
「当たり前だろう」
「ぅ・・・僕が毛むくじゃらになっても、声が低くなっても、髭が生えても、ムキムキになっても・・・っ?」
「ふふ、今は想像できないが、どんな環でも好きだ」
「かおるさんっ!うわああん!!」

 環の涙が嬉し涙に変わった。薫の首元に頬を擦り付け、ちゅうっと吸い上げる。無数のキスマークがついたそこに、新しいものが重なった。

「環、俺は小児性愛者じゃない」
「ふ、ぁ・・・?」
「つまり、環が子どもだから好きなんじゃない。環が好きなんだ」
「う・・・」
「俺も歳をとって、どんどん年寄りになる。白髪になったり、筋肉が落ちたり、腰が曲がるかもしれない。そうなったら、俺のことを嫌いになるか」
「ならない!!!!!」
「本当だろうな?」
「本当ですっ!!」

 環が薫の唇を舐め、開いたそこに舌を入れる。一生懸命絡ませると、薫の陰茎がぴくぴくと脈動し始めた。

「環、成長したお前も魅力的だ」
「嬉しい、です・・・」
「もう限界だ、はぁっ、抱かせてくれ」
「してください・・・っ」

 今の環に欲情し、苦しげに眉根を寄せる薫にたまらなくなる。風呂の椅子に座った薫に抱き合うようにまたがると、両手で尻たぶを開かれ、性急に挿入された。環の自重で薫がどんどん埋まっていく。

「これ、っ、深いッ、です・・・ッ!」
「ぐ・・・あ゙」

 薫の亀頭が結腸の入口に届いた瞬間、環の体から力が抜け、ずぶっとそこを犯された。すっかり薫の形になったそこが2日ぶりに満たされ、歓喜でうねり狂う。環が短く息を吐きながらぶるぶると体を震わせた。薫も唇を噛み締め、今にも漏れ出そうな精液を押し留める。

「あ゙、かおるさん、僕、なんか、だめ、は、は、は・・・」
「俺も、もたない」
「ごめんなさ、あ、あ、だめ、だめ、がまん、できな、いッ、かおるさんっ、ああっ!ぼく、もう、もう・・・ッ」

 環の肉壺が激しく痙攣し始め、薫の陰茎を痛いほど食い締めた。腰がガクガクと震え、両脚が跳ねる。薫の腹に押し付けられていた陰茎から精液が噴き出した。強すぎる快感に思わず薫の肩を噛む。

「ん゙ーーーーー!!!!」
「ゔ、ゔ、ん゙ん゙っ」

 薫は、堪えられず環の肉壺に搾られるまま射精した。吐精中も肉襞に絡みつかれ、喉が反る。目の前で曝け出された喉元に環が吸い付き、喉仏を舐められた。

「はっ、あ゙ぁ゙ッ、だめだ、環ッ」

 上下する喉仏を舐められ、薫の腹筋が何度も波打つ。大きく呻き、切れ目なく2度目の射精が始まった。

「かおるさん、イッてる・・・ッ、あ゙、うれしい・・・っ」
「あ゙、環、緩め、ろ、はぁっ!」
「ごめんなさ、むり、ぼくも、イ、き、ます・・・ッ」
「ん゙ん゙!ぐううう・・・っ!」

 結腸に大量の精液を叩きつけられ、目の前で薫の達した顔を見せられ、たまらなくなった環が腰を振って絶頂する。ひだが陰茎を扱き、肉壺が一段と痙攣し始めた。快感を受け止めきれず、薫の腰が反り、震え出す。陰茎を抜こうにも快感で力が入らないうえに、またがっている環は絶頂で腰が抜けているらしい。

「環、ゔ、緩めてくれッ、だめだ、お゙、あ゙あ゙」
「ぁ、ぁ・・・イ、く・・・っ」
「環、だめだ、もうッ、漏れる・・・っ!ーーーッぁ゙!!」

 ぶしゅ、ぶしゅっ。

 ガクンと大きく腰を突き上げ、薫が環の中で潮を噴き上げた。

「ーーーッ!ーーーッ!!」
「あ゙・・・っ?!あ゙あ゙あ゙ッ!!」

 射精より勢いのあるそれが大量に注ぎ込まれた。環の瞼に火花が散る。薫も初めてのことに目を見開き、ガクガクと腰を震わせた。最後の潮を吐き出すと、未だに絡みついて離してくれない蜜壺から必死の思いで陰茎を引き抜く。環の後孔から、薫の精液と潮がどぽどぽとあふれ出した。

 薫が息も絶え絶えになりながら環の後孔を綺麗にしていると、環が薫の陰茎を口に含んだ。

「環・・・っ」
「かおるさん、すき、すき・・・ちゅ、ちゅ」

 先端を甘く吸われ、陰茎が痺れる。このままではまた風呂場で始めてしまいそうで、綺麗になった環を慌てて抱き上げ、そのままベッドにもつれ込んだ。四つん這いにさせるとすぐに足を開きゆるゆると腰を振り始める環を見て、今でこれなら大人になった環はどうなってしまうのかと、薫は末恐ろしくなる。
 一本の短い毛を揺らしながらひくひくと誘う後孔に舌を捩じ込み中を舐め上げると、環が小さく悲鳴をあげた。これをすると環が快感ともどかしさで泣いてしまうとわかっていながら、先ほどの仕返しをするようにしつこく舐める。この蜜壺も魔性だ。動かさなくてもあのザマである。何度入れても緩むことなく薫をきつく締め付けて離さない。

「ぁ、ぁ・・・ううっ、かおるさん、もう・・・っ」
「はぁっ、環、毛の一本まで、全て俺のものだ」
「かおるさん・・・っ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」

 環に望まれるまま、最奥まで貫く。途端に絡みつくひだを掻き分け抜き差ししながら、薫は大人になった環を想像しながら微笑んだ。





 完熟・10年





 時は流れ、環はすっかり青年へと成長した。灰谷邸に来てから10年という月日が経っていた。

 そういえば、あれほど嫌がっていた第二次性徴はあっけなく終わりを告げた。今の環の身長は薫より2,3センチ低いくらいだ。薫より小さくいたくて、もう伸びるな、なんて願っていたのが懐かしい。そんな風に願う男子は世間にどのくらいいるのだろう。

 髭や体毛は薄い方なのか、数日に1回処理をする程度。ちなみに下生えも処理したいと言ったが、薫にしなくていいと言われ、淡く生やしている。たまに薫が整えるように剃ったり切ったりしてくるのがくすぐったい。

 声変わりもしたが、そこまで低くなってはいない。綺麗なテノールだった。そして残念ながら筋肉はほとんど発達していない。ずっと家の中にいるから当然か。掃除で勝手に鍛えられる二の腕と、あとは、なぜか腹筋がちょっとだけ発達している。毎夜のセックスのおかげだろうか。

 生活に大きな変わりはない。薫との関係も何も変わっていない。目尻に少し皺が増え、髪に白髪が混じり始めた薫のことを、環は今も深く愛している。どれだけ満たされても足りないほどに。そしてそれは薫も同じだった。

「薫さん、おはようございます」
「環、おはよう」

 目覚めればどちらからともなくキスをする。軽く始めても、自然と深くなる。昨晩注がれた精液が後孔から少し漏れたのを感じ、カッと体が熱くなった。目が潤んだ環に気づいたのか、薫の手が胸に伸びる。そこを指先で少し擦られるだけで、環の腰は砕けてしまうようになった。このまま続けられると後孔から漏れ出るものと、自分から吐き出されるであろうものとで下着を汚してしまう。キスの合間に「パンツ、脱ぎたいです」とお願いし、脱がせてもらった。

「おっぱい、気持ちいい、です・・・頭が、変になりそう・・・はぁぁ・・・っ」
「指と舌、どっちがいい」
「キス、っ、したいから、指がいいです・・・っ」
「今日の環は甘えただな」

 薫がキスを深めながら胸の突起を挟んでくれる。くすぐるように擦り立てられ、突き出すように胸を反らせた。

「薫さん、はぁっ、気持ちいい、です・・・ああ・・・溶けちゃう・・・っ」
「環、俺のも」
「はい・・・!」

 薫が下着から猛ったそれを取り出す。環がそれに両手を伸ばし、優しく包み込んだ。蕩けた頭でも、手は自然と薫の気持ちいいように、教えられた通りに動く。薫が腰を振り始めた。上下するそれを丁寧に愛撫する。右手で亀頭を優しく包み、たまに鈴口を擦る。左手は筒にして裏筋に親指を当てながら不規則に締め付ける。カリ首は特に絞るように。薫の腰が速くなり、キスが深くなっていく。指先で挟まれた胸の突起を爪でカリカリと引っかかれ、環の口の端から涎が垂れた。

「あ、あ・・・薫さん、イキそうです・・・っ」
「もう少し、我慢だ。俺も、っう」
「はぁぁ・・・っ」

 環が腰を震わせながら我慢する。胸の突起からぞくぞくとした快感が腰に流れ、溜まっていく。薫の舌が上顎を撫で、目から涙がこぼれた。達したくてたまらず、薫の陰茎を包む手に力が入る。手を捻りながら、小刻みにカリ首と裏筋を擦り上げた。

「薫さん、も、う、僕、本当に、イキそうです・・・っ、イっていいですか・・・っ」
「ゔ、いいぞ、一緒に・・・っゔ!」
「はぁぁ・・・っ!・・・っ!」

 快感がとろりと漏れ出るように、環が甘く達した。陰茎からは一筋だけ精液が垂れた。薫も環の手に射精する。2人は快感に痺れながらキスを続けた。互いを愛撫する手を止めず、相手の絶頂を長引かせる。

「はぁ・・・っあ!ーーーーッ!!」
「ぐ、ぅ゙、環、環っ」

 薫が最後の一滴まで吐き出し、手の筒から陰茎を引き抜いた。胸を責める指を止め、キスだけを続ける。環は両手についた薫の精液をくちゃくちゃと混ぜながらまた達した。

 キスから解放すると、環が迷わず自身の手を舐め始めた。薫の精液を舌でこそぎ取り、飲み込んでいく。薫が濡れたままの陰茎を目の前に持っていくと、目を輝かせてそれにしゃぶりついた。カリの溝に溜まった精液をしつこく舐め取り、尿道を吸い上げる。放っておけばいつまでも舐め続けるため、頃合いを見て薫が顔を引き離した。不満げに薫を見るものの、口に溜まった精液をくちゅくちゅと舌で転がして味わっている。

 環は薫の精液が本当に好きらしい。以前に「不味いだろう」と言って吐き出させようとしたが、「薫さんの匂いと味だから好きです」と言っていた。環曰く、口の中で撹拌すると匂いが鼻に抜けて特に良いのだそうだ。

 そんな環を見ているといつまでも勃起がおさまらない。鼻を摘まんで精液を飲み込ませ(そうでもしないといつまでも飲み込まない)、トイレへと連れていく。環は服の裾を握りしめ、おぼつかない足取りで後ろをついてきた。

 便器に座り、陰茎を掴む。下に向け、薫をじっと見つめた。環の息が荒くなり、瞳が潤む。

「い、イきます・・・ッ、あ、あ、薫さんっ」
「いいぞ、ちゃんと見てる」

 薫の言葉に環の体から力が抜けた。鈴口を割って小水が迸る。

「はああっ!!イってます・・・ッ!!うああ!!」
「甘イキした後だから気持ちいいな?」
「はいっ、気持ちいい、ですっ!!ああああ!!」

 環は絶頂の最中も薫から目を逸らさない。薫も快感に歪む環の顔をじっと見つめる。体を跳ねさせながら排泄を済ますと、そのまま自分で陰茎を扱き始めた。すぐに体を硬直させ、薫に射精を知らせる。薫が許可すると、びゅっびゅっと勢いよく吐き出した。

「あ゙、あ゙・・・はあっ!」

 射精の余韻に震える陰茎の先を拭く。体をびくつかせる環にキスしながら、だらりと開かれた足の間に照準を合わせ、薫も排泄した。薫の陰茎の先を環が拭いてくれる。2人は勃起のおさまらない陰茎を無理やり下着におさめ、身支度を整え始めた。



「今日はお前たち2人に話がある。薫を呼んできなさい」
「は、はい!」

 環が灰谷の部屋に朝食を持っていくと、突然灰谷からそう言われた。薫を呼び、2人で部屋に入る。

「何ですか、話というのは」
「急かすでない。ゴホン。話というのは環君のことじゃ」
「え、と。はい。」
「環の?」
「以前環君に、調教師になるつもりはあるか、と聞いたことがあるね」
「・・・な!」
「はい」

 目を見開く薫を横目で見ながら、環が静かに頷く。

「あの時君は、大人になったら、と答えた」
「?!」
「すっかり大人になった君に、改めて聞こう。環君、調教師になるつもりはあるかね」
「・・・あります」
「環?!」

 環が頷くと、薫が環の方を勢いよく振り向いた。

「なんで、お前、どういう・・・!」
「簡単な仕事じゃないことも、僕が調教師に向いているかどうかわからないことも、わかっています」
「それでもなりたいか」
「はい」

 環の強い意志を感じ、薫が閉口する。

「・・・せめて理由を聞かせてくれないか」
「僕は、薫さんを愛しています。仕事だとわかっていても、やっぱり薫さんが子どもたちにそういう風に触れるのは嫌でした。今も嫌です。薫さんが触れるのは僕だけであってほしい」
「それは俺も同じで」
「調教師の薫さんが、調教対象の僕を愛してくれた時点で、僕の中の不安はゼロにはなりません。頭ではわかっていても、心のどこかにずっとモヤモヤしたものがあります。子どもたちがここを巣立って行くたびに、今回も僕を選んでくれたと安心してしまいます」
「そんな」
「ごめんなさい、薫さんの愛を疑っているわけじゃないんです。僕の心が幼くて、狭いだけなんです」

 そう言って笑う環に、薫が唇を噛み締める。

「それで、一番自分が安心できる道を考えたら、薫さんと2人で調教をするのがいいのではと思いました」
「2人で?」
「はい。到底僕1人で調教師が務まるとは思いませんし、仮に僕だけで調教できるようになっても、今度は薫さんを不安にさせてしまうかもしれないなって。薫さんが嫉妬するなんて、思い上がりかもしれませんが」
「環!」
「灰谷様、家事も調教も、2人でさせていただけませんか」

 頭を下げる環に、灰谷が大きなため息をつく。

「君が調教師になってくれたら、受け入れる子も増えて売り上げも倍になると思っていたのにのう」
「申し訳ございません」
「まあ、儂からしたら今と変わらないわけじゃし、あとは2人の問題かの」

 許しをもらえたようでほっとした環に、灰谷が「ただ」と続けた。

「この世界は信用商売じゃ。2人になったからといって、手を抜いたり、出来が悪くなるのだけはいかん」
「存じております」
「本当かの?朝から乳繰り合っていたせいで朝食が遅れることもままあるようじゃが?」
「~~~~!!も、申し訳、ございません!!」
「灰谷様、環を揶揄うのはおやめください」

 先ほどまさに30分ほど遅れて朝食を持ってきた環は、顔を真っ赤にして平謝りをしている。張りつめた空気が緩み、薫が肩の力を抜いた。

「環と後で話し合いますが、どうなるにせよ、これからも灰谷様の築き上げた価値を落とすようなことは致しません」
「うむ、頼んだぞ、薫」

 灰谷が「サプライズ大成功じゃな!」と環に笑いかけ、環が笑顔を返した。その様子に一旦鎮火したはずの薫が怒り出し、灰谷に不満をぶつけ始める。

それを見て環は不思議ととても幸せな気持ちになった。血の繋がりもない、仕事仲間と言えるのかどうかもわからない、決して表沙汰にはできない歪なこの3人の関係は、この今、紛れもなく家族だった。かつて失ってしまったはずのそれを、自分はまた手に入れることができたのだ。叶うのならば、伴侶として薫と生涯添い遂げたい。

環は口論を続ける2人を見て、暖かくなった胸を押さえた。



「一緒に調教師をやるという話だが」
「・・・は、い」

 ダイニングに戻ってから、薫はずっと不貞腐れた顔で目を逸らしている。なんだか可愛らしい。そんなことを言えばもっとヘソを曲げてしまいそうで、環は緩む口元を引き締めた。

「俺はこれまでお前以外に勃ったことがない」
「はい、知っています」
「お前は、灰谷様の前で俺と繋がった時、商品の子に挿入したことがある」
「は、い」
「お前の方があの子たちに靡く可能性が高くないか」
「あれはあの子に欲情したんじゃありません。でも、調教の時は僕にも貞操帯をつけてください」
「そういう問題じゃない」

 つまり薫は環が調教師に向いていないとか、仕事の邪魔になるとかで反対しているわけではないのだ。環が商品の子に欲情したり、恋をしてしまう可能性を危惧している。環は微笑んで薫に抱きついた。どうやら環の思い上がりではなかったらしい。

「僕も薫さんの力になりたいです」
「ここにいてくれるだけで十分だ」
「薫さんが触れるのは僕だけがいいです」
「環が触れるのも俺だけがいい」
「薫さんのことだけを愛してます」
「俺も、環だけを愛してる」
「僕も、共犯になりたい」
「・・・環」

 環を抱きしめる薫の手に力が入った。環は少し背伸びをして、薫に口付ける。

「あんな幼い子達を調教するって、ダメなことですよね。万が一のことがあったら、きっと灰谷様も薫さんも無事ではいられません」
「・・・」
「そんな時に僕だけ取り残されるなんて、絶対に嫌です。薫さんが負っている責任も、罪も、苦しみも、全部、僕が一緒に背負います」
「環、お前は・・・」
「何も起こらないことを願いますけどね」

 そう言って笑った環の頭を、薫が強く強く抱きしめる。環は胸いっぱいに薫の匂いを吸い込んだ。

「僕に、調教のこと、教えてください」
「・・・お前は意外と頑固なんだな」
「今気づいたんですか?」
「まったく・・・負けた」
「薫さん、キスしてください」
「いくらでも」

 ちょうど明後日から仕事が入ったぞ、と灰谷が朝食のトレイを返しにきた。慌てて顔を離した2人の間に、唾液の糸が引く。

「胸、チンポ、尿道、アナルのフルコースをご希望だ。お前たちも話がついたようじゃし、片付けが終わったら部屋に来なさい。調教の手順や使う道具について打ち合わせを始めるぞ」
「はい!」

 ぶんぶんと首を振って頷く環を、薫が椅子に座らせた。

「環のスーツと仮面も用意せねばな」
「環を呼び捨てにしないでください」
「調教師となれば正式に儂の部下じゃ。区別はせん」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「あと、大人になった環君の門出として、祝いに何かプレゼントをあげようかの。何がいいか考えておいてくれ」
「え、あ、ありがとうございます・・・!」


 頭を下げ、嬉しそうに笑っている環を見やる。どういうわけだか、大人になった環は随分と逞しくなったらしい。2人で調教なんてどうすればいいかわからないが、環の言った「罪や苦しみを共に背負う」というのは、まあ、結婚の文句みたいで悪くない。自分に何の相談もなく、勝手に環を調教師にスカウトした灰谷に、罪滅ぼしとしてペアリングでも買ってもらおうか。薫は環の左手を取り、薬指をそっとさすった。





 数か月後、灰谷に呼び出された薫は、2つの箱を見せられた。

「ほれ、お前にねだられた物じゃ」
「ありがとうございます」
「お前が儂を脅すなんての」
「あれは灰谷様が悪いです。・・・とはいえ、本当は自分で買いたかったのですが」
「いや、これくらい薫が稼いだようなもんじゃ。環もそんなこと気にせんじゃろ」

 薫が丁寧にお辞儀をし、箱を受け取ろうと手を伸ばす。

「それにしても、2人から同じものを頼まれるとは思わなんだぞ」
「は?」

 笑う灰谷を訝しげに見ると、突然部屋の扉がノックされ、環が入ってきた。

「灰谷様ー!あれもうできましたか・・・って、薫さん?」
「た、まき?」

 見つめ合う2人を見て、灰谷が大声で笑う。

「ほれほれ、2人ともそこに並んで向き合え」

 戸惑う2人を向き合わせ、灰谷が1つの箱を開けた。その箱を薫に差し出すのを見て、環が目を見開く。

「まずは薫から環へ」

 輝くそれを受け取った薫が、環の左手を取る。薫の指は少し震えていた。

「環、俺の生涯の伴侶となってくれ」

 環の目から涙があふれ出す。泣きじゃくりながら一生懸命首を縦に振る環に薫が微笑み、その薬指にリングをはめた。そのまま手を引き、指にキスを落とす。

「次は環じゃぞ」

 灰谷がもう一つの箱を環の目の前に差し出した。自分の薬指にはまっているものと同じ、シルバーに光るシンプルなリングだ。環のものよりも少し大きなそれを手に取り、こちらを見つめる薫の左手を取る。薬指にそれを通し、薫同様、そこにキスをした。

 灰谷が2人に向き合う。

「儂は、お前たちの人生を歪め、堕とした。その上これからも片棒を担いでもらわねばならん。解放してはやれんが、お前たちがここに来て幸せだと思えたのなら、儂は嬉しい」

「環と出会わせてくださり、ありがとうございます。そして、あの時俺の願いを聞き入れ、環をここに置いてくださったことにも感謝しています」

「灰谷様、僕にも片棒を預けてくださりありがとうございます。僕、今とても幸せです」

 眩しいものを見るかのように、灰谷が目を細めた。

「これからも儂らは一蓮托生じゃ。お前たちも互いを大事にな」
「はい」
「はい!」

 灰谷にキスをリクエストされ、環が真っ赤になった。薫がすかさずその顎を掬い上げ、とびきり濃厚なのをお見舞いする。あまりに深く長い誓いのキスは、環の腰が抜け、灰谷が「もうええわい!」と喚き始めるまで続いた。







番外編3、前編終わり。



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