おばさん刑事、恋をする！ 〜超年下イケメン双子と甘々生活〜

一年後（その十一）

「あの……あのね、ふたりとも、だめよ？　こんなの、おかしいから」
「おかしくなんかないよ、ユリちゃん。僕たちはね、この一年、君に会うため……ユリちゃんと再会することだけを考えてやってきたんだよ？」
「……」

　どうして……？　どうして私なんかにここまで……

「あ、あのね……さっきも言ったけど、ふたりは、その、モテるでしょ？　周りにたくさん、キレイで若い女性がいるでしょ？　私のことを好きって言ってくれてすごく嬉しいし、またこうして迎えてくれて夢みたいだけど……あの、おかしいからね。こんな、なんでこんなこと、してくれるの……」
「ユリちゃん。僕はね、ユリちゃんが八十歳のおばあちゃんになっても、ユリちゃんのことを好きでいる自信があるよ」

　環くんはそう言い切った。

「なにを……言って……、私が八十歳のおばあちゃんのとき、ふたりはまだ五十四歳だよ？　そんなの……そんなのあるわけないじゃん」
「じゃあ、ユリちゃん、なんで僕たちのところへ戻ってきたの？　成田課長に連れてこられたとはいえ、あの後マンションまで来てくれて、後悔して、そしてまたこうして会えて、僕たちのことを好きだと言ってくれる。それなのに……僕たちのことが信じられないの？」
「それは……だって……」
「僕ね、最初ユリちゃんのこと、少しだけ母さんに似てるかなあと思ったんだ。マザコンといえばそれまでだけど。でもね、僕はちゃんとユリちゃんのことが好きなんだよ？　一緒にいてすごく楽しいし……見ていて、とても可愛いと思うんだ。すごく、愛おしいと思うんだ。今まで付き合った娘こたちも、もちろんみんな真剣に好きだったけど……こんな気持ちになったのは初めてなんだよ？　僕を変だと思う？　でも本当にそうなんだ。歳なんか関係ないんだよ？　ユリちゃんのことが……木花ユリっていうひとりの人間が、大好きなんだ」


　　　＊　＊　＊　＊　＊　＊


　環くんの告白に、胸が熱くなる……
　……なんで？　なんでそんな風に思ってくれるの？
　私、そんな人間じゃないよ。
　三十年後も、そんな風に思われる自信、ないよ。

　環くんは続ける。

「元々は僕と錬の夢があって、そこにユリちゃんが現れて違う形になった。予定が早まったのは実際大変だったけど、僕たちがんばったんだよ？　……僕はね、前から株の投資をやってたんだ。いつかのーーこのときのためにね。そして今回、今までの分を使って大きな賭けに出た。結果、運良く成功して、警察署の近くにちょうどいい物件も見つかって、急いで押さえてリノベした。これって……運命だと思わない？」

　そう言って優しく微笑む。

「それから錬はね、お酒が好きだからカクテルの作り方とかそっちを前から勉強してたし、僕はメニューにできそうな料理をもっとたくさん考えた。六月にオープンまではなんとか漕ぎつけたけど、経営がうまくいくかどうかまだわからなかったから、迎えには行けなかった。それに……できればユリちゃんのほうから戻ってきて欲しかった。結局、成田課長に頼っちゃったけどね」

　環くん……
　なんで？　どうして？　違うよ、だめだよ……
　頭の中がグルグルして、必死に説明をしてくれる環くんの気持ちを……

　ーーこれ以上、聞いていられなかった。