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三日目(その十六)♡
しおりを挟む「ユリ、俺は……」
「なによ、それ」
思わず春輝の話を遮る。
「そんな……言い方するの? ……全部、向こうのせいにするの? ……ずるいよ、そんなの……。最初に私がいるからって……そう言って、ちゃんと断ればよかったんじゃないの? ……春輝は結局、昇進と……彼女をとったんだよ。……会うだけでいいなんて……そんなのあるわけないじゃん! どうせ、しっかり手も出してたんでしょ? なのに卑怯だよ! そんな言い方!」
春輝は私の言葉に黙り込むと、ただ「……うん」とだけ言って、後はなにも言わなかった。
私も黙ったまま……泣きそうになるのを堪え、気づけばふたりとも、動くこともしないでいた。
しばらく沈黙が続いた後、春輝が言った。
「……出してないよ」
「……えっ?」
「彼女とは、いつも警視監を交えてしか会ってなかった。だから……結婚前に、手を出したことは一度もないよ。……彼女を抱いたのは、結婚してから。結婚して……ほんの、数回だけだ」
「?」
なに? どういうこと……?
今、ほんの数回って……結婚、したのに?
「数回、だけって……そんなわけ、ないじゃん。今更、そんな嘘つかなくても……」
「嘘じゃない」
「だって……だって、そんなの……」
春輝の言っていることが、まだよくわからないでいる。
「もう、結婚したんだから……すればいいじゃない。なにも、我慢しなくたって……」
「……勃たなくなったんだ」
「?」
「裸の彼女を前にしても、勃たなくなった」
「……」
「ユリ、お前じゃないと、勃たないんだ」
……私じゃないと、勃たない?
なに……なんなの、それ……
ーー春輝は、半ば強引にお見合いさせられて、結婚してからは……数回しか、彼女を抱いてなくて……?
そして……私じゃないと……勃たない?
頭の中で同じことがグルグル回っている。
春輝の言っていることがまだよく理解できないままでいると、頬に手の感触を感じる。
気づくと、春輝が私の頬を触っていた。
「ユリ、ごめんな。……ずっと、後悔してた。お前に会いたかった。お前と……やり直したかった」
* * * * * *
春輝が切ない表情で、私を見つめている。
目を潤ませ、その奥には愛おしさが滲んで見える。
春輝の顔が、どんどん近づいてくる。
唇が、そっと触れる。
そして、唇を優しく、ついばむように触れてくる。
軽く吸いつき、音を立て、優しく触れてくる。
とても、優しいキスだ。
あれ? 私、このキス、いつ、したっけ?
「ユリ……」
「んっ」
春輝の舌が口の中にニュルッと入ってくる。
いやらしい音を立てながら、激しく舌を絡めてくる。
それはまるで、隔てた時間を埋めるように、堰を切ったように、激しく。
「んっ、んん……ハアッ」
激しいキスが終わると、それは次に頬、耳、そして首筋へと移り、首筋から鎖骨へと下りていく。
あれ、私、この感覚、最近? どこで?
「ユリ……好きだ。ずっと、お前のことだけ考えてた……」
春輝の手が胸元を触ってくる。
ハッと我に返る。
「やだっ、やめて! 触らないで!」
でも、その手は止まらない。服の中に手が入ると、じかに触ってくる。
「やだってば! 離して!」
必死に抵抗するとうつ伏せにされ、後ろ手を取られると錬の上着が脱がされる。
その体勢のまま、春輝の左手がプルオーバーの裾からするりと侵入してくる。
その手が胸にたどり着くと、長い時間待ち望んでいたのを待ちきれないように激しくまさぐる。
「あっ! やだ……あっ、ん!」
思わず出た声に弾かれるように、すぐさま仰向けにされると、今度は両手を頭の上で押さえつけられる。
そして、プルオーバーと下着を一気に首元までまくり上げると、露わになった胸にいきなり激しくむしゃぶりついてきた。
「あっ、やっ!」
春輝は激しく舌を使い、下から上へと舐め回してくる。
胸を揉みしだかれ、指先と舌とで何度も先端を転がされ、強く吸われる。
「いやぁっ……や、だ、やめて……」
「ユリ……、ユリ……好きだ」
春輝はずっと私の名前を呼んでいた。
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