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三日目(その十二)

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「えー、それでユリちゃんは警察署に行っちゃったの?」

 犯人逮捕の栄誉と引き換えに、すっかりひしゃげてしまったバスケットを手にしながら環が言った。
 錬はあれから家に戻り、事の一部始終を環に話したところだ。

「ああ」
「ふーん、そっかー。……ふふ、ユリちゃんはやっぱり刑事さんだったんだね。ユリちゃんの大捕物、見たかったなー。でもとりあえず、怪我とかがなくてよかったよ。……それにしても問題の、ナリタハルキか。なんだかずいぶんと落ち着いた大人な感じなんだね、錬の話を聞いてると」
「ーーまあな」

 ダイニングテーブルの椅子に座り、環が入れた氷入りの麦茶をカランと音を立てて飲み干すと、錬は不機嫌そうに答えた。
 環はひしゃげたバスケットをカウンターの上に置くと、冷蔵庫を開け麦茶のボトルを取り出す。
 そして、錬と自分のコップに麦茶を注ぐと、テーブル上にそのままボトルを置いた。

「でもユリちゃんの態度から想像すると、やり直したいとか、今でも好きだとかそんな風ではなくない? 電話の感じだと、あっちがなにかしでかして別れたんでしょ? 詳しい事情はわからないけどさ」
「……」
「錬、聞いてる?」
「聞いてるよ」

 錬は変わらず不機嫌そうに答える。

「あのキスが、気になってるの?」
「……」
「あーあ、いいよな錬は。そんな気になるほどの甘~いキスをユリちゃんからされたんでしょ? 僕もされたいよー。はあぁ」

 環は大きなため息をついた。

「お前はされてないからわからないんだよ! ……あんなキス、されたほうの身にもなってみろ」


   * * * * * *


 ーーあいつ、ナリタハルキ。
 俺のこと、ずっと見てた。ユリの後ろにいるときからずっと。
 自信ありげに、冷静に。
 俺がユリの腰に手を回したときも、余裕綽々よゆうしゃくしゃくって感じで見てた。
 あの警察官、あいつに憧れてるとか言ってたけど。確かにーー悔しいけど、カッコいいよな。なんか、落ち着いてて、冷静沈着っていうのか。
 ユリが行こうとしたときも、ここで待ってろって。俺への牽制もあったかもしれないけど。
 くそー……まあでも、背は俺のほうが高い。ーーってガキか! 俺は。
 それにしてもユリのやつ。なんだよ、俺のこと……親戚の子って。預かってるって。そこまでガキじゃねーっての。
 大体ユリは危なっかしいんだよ。流されやすいっていうか、お人好しっていうか。
 あのまま行かせてよかったのか? ……って言っても仕事だし、仕方なかったけど。
 なんだか、嫌な予感がする。
 だってユリは……本当はまだ、あいつのことが好きなんだろうから。

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