おばさん刑事、恋をする！ 〜超年下イケメン双子と甘々生活〜

三日目（その五）

　通りを歩いていくと、本当にいろいろなものが並んでいる。
　食べ物だとたい焼き、たこ焼き、ジェラート、駄菓子など。
　雑貨は、可愛いキャラクターものや手作りの小物、食器や花屋もある。

「わあ。錬、すごいね、いっぱいあるね」
「ああ、そうだな」

　続けて錬が言う。

「ユリ、見たいものがあったら遠慮なくーー」
「うん、いってきます！」

　私は錬の手を離すと、気になった食器屋さんに早速飛び込む。

（うふふー、こういうところ好きなのよねー。それに、ちょうど陶器か天然木のスプーンが前から欲しかったのよー。カレーを食べたりする大きめのと、お茶やコーヒーをかき混ぜる小さいスプーン。セットであったら嬉しいんだけどなあ）

　店の端から順に見ていくとーーあった！　

（やーっ、これよくない？　天然木の大小セット。可愛いよね。買っちゃおう、うん。他にも後で出てくるかも知れないけれど、すぐに見つかるなんてのは間違いなくご縁だからね）

　会計を済ますと、いろいろな花がプリントされた濃いグリーンの可愛らしい手提げ袋に入れてくれた。
　ウキウキした気分で外に出ると、錬は通りに設置されたベンチに腰掛けていた。

「れっ……」

　声をかけようとするが、よくよく見ると錬の近くには可愛い女性がふたり……どうやら逆ナンって奴？　女性たちは一所懸命に錬を誘っているように見える。

（んー、どうしよう？　この場所、離れたほうがいいかな）

　そう思い、逆方向にこっそり歩き出すと「ユリ！」と呼び止められる。

「なんでそっちに行くんだよ。こっち！」

　錬に腕を掴まれる。

「う、うん」

　女性たちは怪訝けげんそうな顔でこちらを見てから、通りのほうへと紛れていった。


　　　＊　＊　＊　＊　＊　＊


「いいものあった？」
「うん、あったよ。ありがとう」

　可愛い手提げ袋を少し上に上げて錬に見せる。

（錬は……さっきの女性たちのこと、全然気にしてないみたい）

　逆に彼女たちは、『なんであんな女が』とか『親戚のおばちゃんと一緒か』なんて思っていたのだろうけど。

「ほら、行くぞ」

　差し出された手をおずおずと掴むと、錬はギュッと握り返してにっこりと笑った。

（はあ、心臓がキュッとなるんですけど……）

　その後も可愛い雑貨のお店に立ち寄ったり、駄菓子屋でいろいろなお菓子を見たりしたのだが、驚いたことに錬は文句も言わずお店の外でずっと待ってくれたり、はたまた中で一緒に見て回ったりしてくれた。

「錬、面倒じゃないの？　こういうの」
「なんで？　全然。ユリが楽しそうだから俺も楽しいよ」

　錬の言葉に、顔が熱くなる。

（うー、この子……根っからのタラシなのかしら）

　そんなことを思いつつ、ひと通り露店をみて回ると時間はお昼を過ぎていた。

「ユリ、お腹空いた？」
「うん、少し空いてきた。錬は？」
「うん、俺も。んじゃあ、こっち」

　錬に手を引っ張られ、露店の途切れた少し奥へいくと小さな公園があった。
　そこには木のテーブルと椅子がいくつか置かれていて、地元の皆さんのランチの穴場になっているらしい。
　しかも、嬉しいパラソル付きだ。
　錬が、ハンカチで椅子をサッと拭いてくれる。

「……」
「なに？」
「いや、こういうのがスッとできるってーーほんと天然のタラシ、なんだなって」
「なんだよ、それ。……けなしてんのかよ」
「あっ、違う。そんなんじゃなくて。……気に障ったら、ごめん」

　錬は怒ったのかわからないけど「ちょっと行ってくる」とだけ言い残して、どこかへ行った。