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二日目(その一)
しおりを挟む「ん……」
朝? 朝かな……
眠い、まだ眠い……
アラーム、鳴ったっけ……?
……いっか、うん、もうちょっと、寝てよう。連休だし、ね。
あー、なんか、布団がふかふかしてる。
気持ちいいなあ。
あっ、抱き枕だ。
えい! ぎゅーっとしちゃえ。んー?
この、抱、き、ご、こ、ちー!
き、も、ち、いいー!
なにこれ、あったかーい!
あれ? 抱き枕……あったっけ?
私、買ったんだっけ? まっ、いっかー。
両腕でぎゅっとして、足を絡めてまだウトウトしていると抱き枕が喋る。
「ユリちゃん、苦しいよー?」
ん? なんで抱き枕が喋るの?
眠たい目を開けて、目の前の抱き枕を見る。
「⁉︎」
「おはよー、ユリちゃん♡」
驚いてベッドの上に飛び起きると、周りをキョロキョロ見渡す。
「あ、れ……?」
その喋る抱き枕は、枕元に置いてあるメガネに気づくと「はい」と渡してくれる。
受け取ろうと手を伸ばすと、メガネがヒョイッと上に持ち上げられる。
それに合わせて視線を上に動かすと……その瞬間、抱き枕あらためーー環くんの唇が、私の唇に触れた。
「⁉︎」
「やった! ユリちゃんと初キッス♡」
(……ほんと、この子は。……隣に寝ていただけでも心臓に悪いのに、なんなの? この突然の可愛いキスは⁉︎)
こめかみを抑え、ため息まじりにそんなことを考えていると視線を感じる。
「ふふ、メガネのないユリちゃんも可愛い♡」
環くんが、ジッと見つめながらそんなことを言ってきた。
「⁉︎」
そうだった! メガネなしの顔……しかも、寝起きの顔を見られるなんて、恥ずかしすぎる!
「環くん、……返して?」
うつむいたままお願いすると、環くんは意外にも素直に渡してくれた。
後ろを向き、そっとメガネをかけると再度辺りを見渡す。
(そうだ。昨日は本当にいろいろあって……錬と環くんの家に泊まったんだ)
環くんは、あぐらをかいてこちらを見ている。
「ユリちゃん、それ、錬の服?」
昨夜は、錬から借りたスウェットで眠った。
「うん、そう」
「大きいよね、それ」
袖口はダボダボ、ズボンの裾もずいぶんと折っている。
「だって、着替えがなかったんだもの」
環くんはクスクス笑うと、ダボダボの袖口を触ってくる。
ふと顔を上げると、環くんの顔がすぐ近くにあることに気づき、慌てて横を向く。
隣に寝ていたこと、さっきのキス、そしてーー昨日の猫マネの出来事が思い出されると、一気に顔が熱くなった。
* * * * * *
「あー、えっと、今、何時?」
「今ね、十一時過ぎだよ」
「えっ⁉︎ 十一時? 嘘、ごめん。九時集合だったのに」
どうやらすっかり寝過ごしてしまったらしい。
「いいよー。疲れちゃったんでしょ。ゆっくり眠れたみたいでよかった。シャワーがまだだったら、ゆっくり浴びてから下りておいでよ」
環くんはベッドから軽やかに下りると、扉の方へと歩きながらそう言った。
「ありがと。でもシャワーは昨夜のうちに借りて浴びたから大丈夫。支度したらすぐに行くね」
あれ? ふと気づく。
「環くん、鍵……かかってなかった? 私、鍵をかけて寝たつもりだったけど……」
環くんは立ち止まると、おもむろにポケットに手を入れ、なにかを取り出す。
「鍵ならあるよ、ここに」
手にした鍵を顔の近くでプラプラさせて、振り向きながらにっこりと微笑んだ。
「⁉︎」
この双子たちはもう、ほんと信じられない!
「それからユリちゃん。荷物が届いているからね」
「へっ? 荷物?」
そういえば、替えの洋服やらなんやらを頼んでもらったのだった。
「わかった。ありがと。すぐ行くね」
「うん、待ってる」
環くんを見送ると、急いで支度に取りかかる。
はああ、それにしても、朝から心臓に悪すぎるわ……
準備が整うと、下だけ自分のジーパンに履き替え、上は錬のトレーナーを借りたまま、急いでリビングへと向かった。
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