上 下
16 / 89

一日目(その十六)♡

しおりを挟む


 リビングに戻ると、ふたりの強い視線を感じる。

「あー、ごめんね。お待たせしちゃって」

 その視線を避けながら元の席に座ろうとするが、環くんに呼び止められる。

「ユーリちゃん! こ、っ、ち」

 三人掛けソファに座っているふたりの間に座るよう促されると……嫌な予感しかしない。
 ーーそして予想通り……ふたりに挟まれ、尋問が始まったのだった。

「ユーリちゃん。今の男の人、誰?」

 左側の環くんにきかれる。

「私の上司よ。捜査一課の課長」

「そいつじゃなくて。ナリタハルなんとかっていう、その後電話を代わったヤツだよ」

 右側の錬にきかれる。

「本庁から来ている……偉い人よ」

「なんでそんな偉い人が、ユリちゃんと話したがるの?」

「……さあ、知らないわ。単なる気まぐれじゃないの?」

「そんな偉いヤツに『アンタの顔なんか見たくない』とか言うのかよ」

「ああ……はは、そうね。なんでだろ」
「「…………」」

 沈黙が続いた後、ふたりが声を揃えて言った。

「「元カレ?」」
「……あー、どうだったかなー……はは」
(さすが双子、息ピッタリ!)

 私の答えに納得したのかしないのか。錬も環くんも、なにも言わずにしばらく黙っている。

(なんで私こんなに恐縮してるの? 別に悪いことをしているわけでもなし! それに、ふたりに責められる理由なんてないのに。そうよ! どーんと構えてればいいのよ、どーんと。……ううっ、でも、空気が重い。ふたりの視線が痛い……)


   * * * * * *


 沈黙の中、環くんは突然立ち上がると、なぜか私の足元に来て正座をし私を見上げた。

「……環、くん?」

 そして両手でそれぞれ拳を作ると、それを私の膝にチョコンと置く。

「……?」

 そして小首を傾げると、なんとも甘い声でこう鳴いた。

「ニャアッ」
「⁉︎」
(……な、なにを突然この子は。猫? 猫なの?)

 続いて膝に頭をスリスリと擦りつけたり、手でカキカキしてくる。

(えー……一体なんなの? か、可愛すぎるんですけど!)

「ミ……ミャッ?」
「⁉︎」

 驚いて右側を見ると、なんと錬が戸惑いながらも私の頬に自分の頬を当て、スリスリと頬ずりをしてくるではないか。

「えっ⁉︎    えっ⁉︎    待って……」
(なに? 錬、アナタも? アナタも猫なの? なんなのかしら、ふたりとも。……もしかしてこれって、さっきの猫カフェからの、猫マネ⁉︎)

 ふたりの可愛すぎる行動に動揺していると、錬がペロペロと耳を舐めてくる。

「えっ! ちょっと待って! やだ、錬」

 すると今度は環くんが左手で私の内腿を触り、右手を背中に回し腰の辺りをまさぐりだす。

「た、環くん、やだっ! やめて」
「だってユリちゃん、僕たちと遊んでくれるんでしょ? ニャッ?」

 環くんはそう言うと、顔を下腹部辺りに近づけ鼻を擦りつけてくる。

「いやあっ……、違う、そういう意味じゃない……」

 錬は耳たぶをカプッと何度か甘噛みすると、今度はいきなり耳の中へ舌先を侵入させてきた。

「あんっ!」

 思わず声が漏れる。
 その声に大きく反応した錬が、更に奥へと舌先を進め、いきなり中で激しく動き回る。

「あっ、やっ」

 錬の少し荒い息遣いと、ピチャピチャといういやらしい音が響き合い、自分の耳の中から聴こえてくる。

「やあっ、ダメぇ……」

 体中から力が抜けていく。

「んっ!」

 胸元がヒヤリとしたかと思うと、環くんの右手がシャツの中へと入り込む。
 更にタンクトップをくぐり抜け私の左胸に辿りつくと、まるで大きさを確かめるように優しく撫で回す。

「あっ、やだ、環くん、あ……んっ」

 そして指先がその先端に触れると、一気に体に甘い電気が走る。

「あっ! はぁん……」

 自分でも驚くほど甘い吐息が漏れる。

「ユリちゃん、可愛い♡」
「ユリ、あまり可愛い声……出すな」


   * * * * * *


(どうしよう……ダメ……こんなの、久々すぎて)

 錬は私のメガネをそっと外すとテーブルに置き、両手で私の頬を包むとキスをしてきた。

「んっ、んぅ」

 すぐに舌が入ってきて、優しく絡めてくる。

(あのときは、触れたくらいだったのに)

 そして右手を私の右胸へと移し、服の上からまさぐりだす。

「んんぅ、や……らめぇ」

 環くんはとうとうシャツをまくり上げるとお腹にキスをし、熱を帯びた先端めがけ、舌を徐々に上へと這わせてくる。

「あっ、あぁん」

 止められない、どうしよう……このままふたりと……ん? ふたりと? つまり…3《ピーッ》ってこと? ハタチそこそこの子たちと?

「だ、だめーっっ!」

 慌ててふたりを押しのけると、ソファから勢いよく立ち上がる。
 テーブル上のメガネを手に取ってかけると、ボディバッグと貰った服を抱え、急いで階段へと向かう。

「ふ、ふたりとも、からかわないでって言ったでしょ! そ、それに、私が嫌がることはしないんでしょ? 私、もう寝るから! さっきの部屋借りていいのよね? 明日はここに九時集合ね! ……じ、じゃあ、おやすみなさいっ!」

 そう言って一気に階段を駆け上がると、部屋に入り後ろ手に扉を閉め、大きなため息をつく。

「はああ」

 そうだ! 鍵……鍵をかけておこう! 念のため。

「ふうう」

 鍵をかけるともう一度ため息をつき、その場にへたり込むと、しばらく動けなかった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

その壊れた恋愛小説の裏で竜は推し活に巻き込まれ愛を乞う

BL / 連載中 24h.ポイント:2,756pt お気に入り:538

貴方の子どもじゃありません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:22,103pt お気に入り:3,771

愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:97

獣人だらけの世界に若返り転移してしまった件

BL / 連載中 24h.ポイント:9,238pt お気に入り:2,365

あなたの巨根を受け入れたかっただけなのに

恋愛 / 完結 24h.ポイント:191pt お気に入り:139

人気アイドルが義理の兄になりまして

BL / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:293

【R18】俺様CEOの子どもを出産したのは極秘です

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:15,166pt お気に入り:480

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

BL / 完結 24h.ポイント:305pt お気に入り:2,323

処理中です...