おばさん刑事、恋をする！ 〜超年下イケメン双子と甘々生活〜

一日目（その十四）

　晩ご飯をおいしくいただき、片付けも終わり、そして今、夜の九時をまわったところだ。

「環くん、本当においしかったー。ごちそうさまでした」
「いえいえ、どういたしまして。お粗末様でした」

　食事の終わったローテーブルで、環くんの淹れてくれたプーアール茶を三人で飲んでいる。

「ねえ、環くんはいつごろから料理を始めたの？　手慣れているし、メニューも豊富に持っていそうだけど」
「あはは、僕はね、けっこう前からやってるよ。母親が小さい頃に亡くなってね。その後お手伝いさんが来て僕たちにいろいろ作ってくれるんだけど、錬が『お母さんが作ったのじゃなきゃやだー！』って泣いちゃってね。それで代わりになろうと必死に作るようになったのが最初かな。ねっ、錬。覚えてる？」
「……忘れた」
「あはは。都合の悪いことは忘れるよね、錬は」

　環くんは、母親が亡くなっていることをさらりと言うと錬をからかい始めた。

（お母様、亡くなってるんだ。それでふたり暮らし？　お父様は生きてらっしゃるのかしら。不自由させないために、こんなにいいマンションをふたりに用意して……とか？　年齢でいえば、たぶん私と同世代よね、ご両親。だから錬は私を連れてきたのかな。もしかしてお母様と……重ねたりして？）
「ユリちゃん」

　名前を呼ばれてハッとなる。

「あー、あの……ごめんなさい私。その、辛いこときいちゃったわね」
「ユリちゃんが気にすることじゃないでしょ。もう昔の話だし。そんなに気にしないでよ。わかった？」
「うん……」

　優しく言ってくれる環くんの言葉に頷きながらも、頭の中をまだいろいろな考えがグルグルとしていた。


　　　＊　＊　＊　＊　＊　＊　


「ユリ」

　錬が口を開く。

「ーー言っとくけど、俺がアンタを連れてきたのは母親を思ってとか……そんなんじゃねーから」

　まるで私の考えを読み取ったかのように、そう言った。

「……そう、なの？」
「そんなんで連れてこねーよ」
「でも、じゃあ……なんで連れてきたの？」

　錬が困った、って顔をしている。

「まあ、あれだ。さっきも言ったろ？　退屈だったから。アンタといると、いい暇つぶしになりそうだったからな」
（暇つぶしって……またそんなこと言って、失礼ね。でも……）
「はいはい、わかったわよ。どうせおばさんの刑事が珍しかったんでしょ。いいわよ、もう」
（こんなやりとりが……とても楽しく思えてしまうのは、なぜかしら？）

　自分の気持ちはよくわからないけれど、まあ楽しいし、いっか。

「こうなったら、せいぜい遊んであげるわ」

　錬のマネをして、少しニヤリとしてみせた。

「ユリちゃん、顔ひきつってて怖いよー」
「くっくっ」

　ふたりとも、ずいぶんと失礼な反応だった。