おばさん刑事、恋をする！ 〜超年下イケメン双子と甘々生活〜

一日目（その三）

　

　コーヒーをいつの間にか飲み干していた。
　おかわりは、いいや。

　　……あれから四年。
　今回の視察、なぜ、彼がうちの署に？
　たまたまなのか、それとも意図的に？
　一年ほど前に、離婚したと聞いた。
　原因は奥さんの浮気だ。
　忙しい春輝に構ってもらえず、年の離れていた若いお嬢さんは同年代の男と遊び、結果、子どもができたのだと聞いた。
　春輝との間に子どもはなかった。
　そして、ふたりの間に慰謝料はなし。
　離婚の原因が奥さんの浮気のため、春輝が首を切られることも、どこかへ飛ばされることもなかったようだ。
　最も彼は仕事においては優秀だ。
　その人材をこんなことで手放すなんて、上のお偉い方々もしたくなかったのかもしれない。
　この時間、署には来ているのだろうか？
　なにかあれば、上川課長が連絡をくれるとは思うがーーいや、課長のことだからなにかあっても連絡はくれないかもな。
　それにしても……なんでこんなことに。


　　　＊　＊　＊　＊　＊　＊


　コーヒーを飲み終えてから、しばらくボーっと天井を見ていたが、ふいに思い立つ。
　あまり考えていても仕方がない。

「よし！　本屋に行こう」

　頬を軽くパンッと叩くと、勢いよく立ち上がる。
　そうと決まれば、まずは洗濯をしてしまおう。
　浴室に向かい洗濯機のスイッチを入れると、お水が少し溜まってから軽く溶かした粉石鹸を投入する。
　そして、すでに仕分けをしてある洗濯ネットを放り込むと後は待つだけ。
　その間にフローリングワイパーでササーッと床の掃除をし、コーヒーを飲んだカップを片付ける。その辺も片しつつ、何の本を買おうかと考える。
　そうね、せっかくの休みだもの。久々に料理本を買ってきてなにか作ろう。
　料理はいつぶりだろう？　うどんを先週作ったな。お湯を沸かし、だし調味料をガッと入れて茹でただけではあるが、立派な料理だ。
　どうしよう、なんにしよう。パスタの本か、それとも丼物か。
　久々に作る料理に思いをはせつつ、歯を磨きに浴室へ行くと、洗濯がもう少しで終わりそうだった。


　　　＊　＊　＊　＊　＊　＊


　顔を洗ってリビングに戻ると、手提げのメイクボックスを取り出し、テーブルで化粧水をつける。
　フェイシャルパウダーを軽くはたいたら、眉毛を描き、ピンク系の口紅を軽く塗って、はい終わり！

「ピピーッ、ピピーッ」

　ちょうどよく洗濯終了のアラームが鳴る。
　カゴにネットの中身を開けると、ササッと折り畳み式の室内物干しにそれぞれ干していく。
　さて、今度は髪の毛だ。
　セミロングの髪は全体に優しくブラッシングをし、後ろの高めの位置でひとつに結き直す。
　クルクルっとお団子にしたらピンで留め、最後に前髪を少しだけ水で濡らしてブロウをしたら、はいできあがり！
　クローゼットから白いコットンの長袖シャツを取り出して着ると、袖を少し折って付属のヒモでくくって留める。
　そして色落ちしたブルージーンズを合わせると、ここで少し悩む。

「上着……いるかな？」

　シャツが大きめだし、ちょっと厚手のしっかりした生地だしいっか。
　九月も半ばを過ぎるとちょっと微妙な時期で悩んじゃうけど。
　うん、大丈夫。いいお天気だし。
　そして仕上げは、見かけによらずかなりの物が入る黒のボディバッグを肩から斜めにかけて準備完了！
　時計を見ると、昼十二時になろうとしていた。

「まあ、昼抜きでもいっか」

　白のスニーカーをサッと履くと、足早にアパートを後にして本屋に向かった。