95 / 95
第95話 ワイバーンの調理法
しおりを挟む「よし、こっちの屋根はこれで大丈夫そうだな。次はあっちの屋根だ」
ニアさん達が付近の調査に出かけた後、ローラン様は家の中で村長さんと今後のことや村のことについて話をしている。ルーさんとエレノアさんも護衛なので家の中でローラン様と一緒にいる。もしもワイバーンが来たら、すぐに見張りの人が鐘を鳴らすことになっている。
そして俺はというと、晩ご飯の準備までまだ時間があるので、村の人達と一緒にワイバーンに壊されてしまった家の屋根を補強している。この村の家の屋根は木の板を釘で打ち、その上に金属のトタンのようなものが打ちつけられている。ワイバーンの襲撃により金属部分に穴が開けられ、木の板にまで穴が開きそうなところであった。
「すまないな、客人なのに手伝ってもらってよ。この村には若い男手がそれほどないから助かるよ」
「いえ、もう少し時間があるので気にしないでください」
この村は総勢40人ほどの村人が生活をしている。しかしそのほとんどが老人や女性、子供達で若い男は5人ほどしかいない。というのもこの村だけでは自給自足の生活が難しいらしく、若い男性や女性は街にまで出稼ぎに行っているらしい。
「ああ~俺らにそんなかしこまった言葉はいらねえよ。俺はベッグだ、よろしくな。普段はバドーと一緒に狩りをしている」
ベッグさんは俺より少し年上くらいだろう。差し出してきた手を握って握手をする。
「わかったよ。俺はユウキだ、よろしく」
「しかし本当に助かったぜ。俺らじゃあんなにたくさんのワイバーンに歯が立たなくてよ。ゴブリン程度ならどうとでもなるんだが、あれだけの数は反則だよな」
屋根を直しながらベッグさんと話をする。穴の開けられた場所に木の板とトタンを釘で打ち付けていく。
「確かにあれだけの数がいると上級冒険者とかじゃないと難しそうだな」
「ああ。一体程度ならみんなで囲めばなんとかなりそうなんだが、あれだけの数がいたらもう無理だ。
それにしてもさっきのあんたの仲間達は凄かったよ!あれだけの数のワイバーン相手に怯みもせずに立ち向かっていたぜ。空から襲ってくるあいつらを撃ち落としたり、槍や魔法で翼を斬ったりしてたな。俺は魔法を見たのは初めてだったけど格好良かったぜ」
やっぱり魔法を使える人はこの村にはいないらしい。街でも魔法を使える人は珍しいくらいだからな。
「そうなんだ、俺も見てみたかったな」
前の馬車が邪魔をして戦闘シーンは見れなかった。ニアさん達の戦闘は非常に勉強になるから本当は見ていたかったんだが仕方がない。
「よし、これで屋根の補強は終わりだ。助かった、思ったよりもだいぶ早く終わったよ」
「大したことはしてないよ。そういえば、さっき倒したワイバーンはどこにいったんだ?できればワイバーンの肉を晩ご飯用に少しもらいたいんだけど」
「ああ、それならあっちの方で女達が解体していたな。なんでも皮や牙は高価な素材になるらしいから、解体してすべてあんた達に渡すって村長が言ってたぞ」
ローラン様に聞いたが、確かにワイバーンは高級素材になるらしい。なにせ空を飛んでいるからな。発見することは容易でも撃ち落とすのはなかなかに難しい。
そしてその肉はあのライガー鳥以上の高級品で、滅多に市場に上がらないそうだ。小さくてもドラゴンに分類されるそのワイバーンの肉は極上の脂がのった霜降り肉らしい。ついに俺もこの異世界でドラゴンステーキ童貞を捨てる時がやってきたらしい。
「これがワイバーンの肉か!」
今俺の目の前には夢にまで見たドラゴンの肉がある。綺麗に解体された枝肉、牛肉よりもさらに深い赤みがかかった鮮やかな色に薄らと白い脂身のサシが入っている。
さて、どのように調理しようか?かなりの量があるし、とりあえずドラゴンもといワイバーンステーキは確定としてもう2~3品は作りたい。
ローラン様には許可をもらってこの村の人達の分も作るからかなりの量になる。とはいえ実際の作業はエレノアさんや村の女性達が手伝ってくれるからだいぶ楽になりそうだ。焼くのは調査部隊が帰ってきてからになるから、今のうちに下処理とかをやれるだけやっておこう。
「ただいま戻りました」
日が赤く染まり地平線の向こうへ落ちかけたころ、ニアさん達調査部隊が村に帰ってきた。遠目から見たところ全員大きな怪我もなく無事のようだ。そして一体のワイバーンを担いでいる。
「よかった、みんな無事に戻ったようですね。してワイバーンの巣は見つかりましたか?」
「申し訳ございません、未だ巣の発見までは至っておりません。しかしおおよそですが、ワイバーン達が戻っていく方角は掴めました。道中またもや3体のワイバーンがこちらを襲ってきましたが、返り討ちにしてあえて2匹逃がすことで奴らの巣の位置を確認しました。明日の朝より捜索を続行したいと思います」
なるほど、あえて逃すことでワイバーン達が戻る方向を特定したということか。ワイバーンはゴブリン達よりも賢いが、人並みに知能がある訳ではないから罠ということもないだろう。
「よくやりましたね!くれぐれも明日も慎重にお願いしますわ。細かい話はまた後で聞きましょうね。さあ、みんな疲れたでしょう、すぐに晩ご飯にしましょう。ユウキ、準備をお願いね」
「はい!」
本当にみんな無事に戻ってきてなによりだ。さあ、下ごしらえをしていた料理の仕上げをやってしまおう。
15
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
異世界でキャンプ場を作って全力でスローライフを執行する……予定!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
お気に入りに追加
364
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(6件)
あなたにおすすめの小説
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。


加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

宇宙戦争時代の科学者、異世界へ転生する【創世の大賢者】
赤い獅子舞のチャァ
ファンタジー
主人公、エリー・ナカムラは、3500年代生まれの元アニオタ。
某アニメの時代になっても全身義体とかが無かった事で、自分で開発する事を決意し、気付くと最恐のマッドになって居た。
全身義体になったお陰で寿命から開放されていた彼女は、ちょっとしたウッカリからその人生を全うしてしまう事と成り、気付くと知らない世界へ転生を果たして居た。
自称神との会話内容憶えてねーけど科学知識とアニメ知識をフルに使って異世界を楽しんじゃえ!
宇宙最恐のマッドが異世界を魔改造!
異世界やり過ぎコメディー!

モブっと異世界転生
月夜の庭
ファンタジー
会社の経理課に所属する地味系OL鳳来寺 桜姫(ほうらいじ さくらこ)は、ゲーム片手に宅飲みしながら、家猫のカメリア(黒猫)と戯れることが生き甲斐だった。
ところが台風の夜に強風に飛ばされたプレハブが窓に直撃してカメリアを庇いながら息を引き取った………筈だった。
目が覚めると小さな籠の中で、おそらく兄弟らしき子猫達と一緒に丸くなって寝ていました。
サクラと名付けられた私は、黒猫の獣人だと知って驚愕する。
死ぬ寸前に遊んでた乙女ゲームじゃね?!
しかもヒロイン(茶虎猫)の義理の妹…………ってモブかよ!
*誤字脱字は発見次第、修正しますので長い目でお願い致します。

異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!

元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
48話マイルの親のセリフ後に、指摘された文がそのまま残ってますよ。
誤字脱字報告ありがとうございますm(_ _)m
なぜか他の方からのご指摘文章が入っていおりました…
教えていただきありがとうございます!
更新ありがとうございます😊
時間に余裕があれば、焼き料理や揚げ料理だけでなく煮込み料理とかも作って欲しいかも。煮込みスジ肉のぶっかけ飯とか、モツ鍋とか。あっ、でも圧力鍋とか無いし、素人にはハードル高いかな?
コメントありがとうございます(#^ ^#)
スジ肉とかモツ鍋とか美味しいけど手間がかかるからなさそうですね。
あと圧力鍋って昔の技術だと少し難しそう…
主人公なら圧力鍋から自作することでしょうw
更新ありがとうございます😊
ローラン家討伐隊一同の思いは一つ!
「「「「「ユウキくん、お嫁に来て欲しい!!!!!」」」」」
コメントありがとうございます(*^ω^*)
ユウキくんがいるとローラン様が大人しくなりますw
あと単純に日々の食卓が豊かに!