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第63話 神様からの忠告

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 目を覚ますと例の白い部屋にいた。相変わらず真っ白でどこまでも続く地平線で目がおかしくなりそうだ。って、おい待て!また俺は死にかけて神様のところにきたのか!?

 記憶をたぐっても夜の鍛錬の後にベットで普通に寝た記憶しかないぞ。寝た後に病気か何かか?それともあのポンコツ師匠が何かやらかしたのか。

「おお勇者よ、死んでしまうとは情けない」

 後ろから声をかけられて振り向くと、さっきまで何もなかった空間にちゃぶ台とそこに座っている幼女がいた。

「まじで!?本当に俺は死んじゃったの?死にかけたとかじゃなくて?」

「いやごめんごめん、ただの冗談。今回は別に命に別状はないよ」

「…………」

 やっぱりこの幼女は神様だけど一度ぶん殴っていいよね。夜の神くんもきっと許してくれるはず。

「いやあ一度これをやってみたくてね。ところで知ってるかい?シリーズによってこのセリフは情けないとか何事だとか不甲斐ないとか変わるんだぜ」

「どうでもいいわ!」

 いやまあ初めて知ったけどさあ。本当に暇な神様だな。

「世界を救うために旅してる勇者にこの物言いはなかなか酷いと思うけどね。まあ安心してくれたまえ。今の君はぐっすりと眠っているだけだから」

「ああよかった。寝てるだけなのに何が起きたのかと思っちゃいましたよ。それでアドバイスってなんですか?」

「まあまあ、いつも通りアドバイスは最後にするからちょっとくらい話していきなよ。ほら座って、座って!」

 相変わらず暇そうな神様だ。まあアドバイスも貰えるしちょっとくらいなら付き合おう。

「それにしても君の世界は漫画だけじゃなくてゲームとかいう娯楽もすごいね。ゲームはこっちの世界で作れないのかい?」

「漫画はできたとしてもゲームは絶対無理ですね。簡単なテトリスとかでも作れる気がしないですね」

 そもそも液晶画面からして作れる気がしない。

「う~ん、確かに難しそうかあ。でもいつか漫画は作って欲しいね。そういえば勇樹くんはどんなゲームが好きなんだい?」

「確かにいつかは漫画は作りたいですけどね。え~とモン○ンていう狩りのゲームとかポケ○ンていうモンスターを育てて戦わせるゲームとかが好きですね」

「ふ~ん、じゃあリアルに魔物とかを狩れるこの世界は君にとっては最高の世界ってことだね!」

「3乙どころか1乙で全て終わりな世界とか嫌すぎるわ!」

 ああいうのはコンティニューできるからこそのゲームだからね。

「ボクは実際にゲームはやれないけど64とかいうゲームのスマ○ラとかゴールデン○イっていうやつが見てて面白そうだったね」

「古いわ!」

 それ親父とかの世代のゲームだわ!あのコントローラー独特な形をしてるやつだろ。

「64こそがすべての対戦ゲームの礎となっているとボクは確信しているよ。あの世代のゲームこそ神ゲーの宝庫だと言っても過言ではないね」

 どうしよう神様が神ゲーを勝手に認定してしまったんだが。

「そういえば対戦ゲームで4人でできるのはそこらへんからだっけ。今ではネットで100人と対戦できる時代だもんなあ」

「ちっちっちっ、甘いね。スーファミのボンバー○ンを忘れてはいけないよ。あの時代に5人で対戦できるゲームを開発できるなんて当時の開発者は神だね!」

 いや知らんわ!さすがにスーファミは世代じゃない。ゲームキューブあたりからしかわからんよ。まあ開発者も他の世界の神様に神認定されて嬉しいだろう。

「というか漫画もそうですけどゲーム詳しすぎません?どこらへんから知っているんですか?」

「スペースインベーダーとかパックマン、ポンテニスあたりからかな」

「最初期からじゃないですか!」

 どんだけ暇神なんだよ!ていうかポンテニスってなんだよ、俺でも知らんよ。

「漫画と違ってどんなに見ることができても自分でプレイできないと本当に辛いよね。ここだけの話、64と君の魂だったら間違いなくボクは64を選ぶね!」

「俺の魂は64以下かよ!」

「さすがに冗談だよ。64だけあってもソフトやテレビや電気がないとプレイできないのはボクでも知っているからね、君の魂の方が大事だよ!」

「…………」

 全てセットならどっちが大事なのかは聞きたくないから絶対に聞かんぞ。

「それにしても勇樹くん、元気そうだね。最近は訓練もこなして商売も順調だし大きな魔物も討伐したし楽しんでいるじゃないか」

「ええまあ、おかげさまでぼちぼち暮らせてます」

「なにやら随分いろいろな料理を広めてくれたけど君の世界ではあんなに凝った料理をみんな作るのかい?」

「ええ好きな人は本当に手間暇かけて作りますよ。店で出す料理とかは三日三晩煮込んだりしますからね。もしかしてこっちの世界の料理を広めるのはまずかったですか?」

「いや、むしろどんどん広めていってほしいね。こっちの世界はあんなに手間をかけたりする料理はほとんどないからね。食文化が豊かになれば生活も豊かになるからさ」

「そうですか、ならよかった。でもこっちの世界のお肉は本当に美味しいですよね。元の世界では品種改良とかをしてやっとできた肉の味を簡単に超えてましたよ。確かにあの味なら焼いて塩を振るだけでも満足できますね」

「だからこそ料理があまり発展しなかったっていうのはあるかもね。パンを膨らましたり、ケーキみたいな見た目の美しい食べ物なんてみんな驚いただろう」

「ええ、みんな綺麗だって驚いていましたよ。発酵パンの発見は確か元の世界でも偶然だったから、いつかはこの世界でも発見されていたでしょうね。ケーキとかは貴族とかのお金持ちがいつか作りそうな気がします」

「そういえばケーキにはいくつ種類があるんだい?毎月新作を出しているじゃないか」

「元の世界では何百種類ものケーキがありましたからね。それに乗せるフルーツとかクリームとかを変えれば無限の種類になりますね」

「ほえ~、それはすごいね。それだけ種類があれば限定商品と言って毎月出しても問題ないわけか、よくできてるね。あとはお酒もすごいよね。蒸留酒とかはまだいいけどよくそれを作ったあとに何年も何十年も寝かせる気になるよ」

「確かにすごいですよね。こっちの世界だと明日どうなるかわからないから、何年も寝かせるという発想はないんじゃないですか。魔物やら盗賊やら暗殺やらでいつ死んでもおかしくないし、そんな先のこと考えるなら今日飲んじゃおうみたいな。まあ未だにあんなに強いお酒は美味しいとは思えないんですけど」

「それはあるかもね。こっちの世界もはやく君の世界みたいに平和な世界になって欲しいものだよ。勇樹くんもあと何年かしたらお酒が美味しく感じるようになるかもしれないよ」

「本当にそんな日が来るんですかね。アルゼさんとかモラムさんとか涼しい顔して蒸留したてのお酒をガブガブ飲んでて信じられないですよ」

「こっちの世界だと酒を飲めることが一人前みたいな考え方があるからね。君の世界では違うのかい?」

「そういえばちょっと昔までは飲み会とかで後輩に無理矢理飲ませるのが当たり前だったらしいですね。今はだいぶ厳しくなってそういうのは禁止されましたね」

「やれやれそっちの世界はそっちの世界で世知辛いねえ。おっと残念ながらだけどそろそろ時間だ。勇樹くんとの話は楽しくて時間が経つのが早いね。それじゃあ恒例のアドバイスだよ」

 よくわからないが神様と話すのは時間制限があるようだ。相変わらず大した話はしてないんだけどな。てか前回のアドバイスは安○先生からのありがたいお言葉をいただいただけなんだけどな。

 今回もどうせ大したアドバイスではないんだろうなと思っていたが、急に神様が真剣な顔でこちらを見つめてきた。

「さて、今回はちょっと真面目なアドバイスだ。アドバイスというよりは忠告だね。君がいるアルガン家が成長するのをよく思わない輩がいるようなんだよ。ボクの口からは具体的に誰かということはできないのが辛いところなんだけどね」

「よく思わない輩ですか……」

 思いつくところだと他の領主様とかが一番ありえるか。まあローラン様に関してはないとは信じたいからもう一人の領主様。あるいはエレナお嬢様が失脚したら繰り上がって領主様になれる貴族様あたりか。

「そいつらが近々アルガン家を強襲する可能性があるようだね。自分達だけでなく関わりのある人達の守りを固めることをおすすめするよ」

 おお、これはかなり助かるアドバイスだ。正直に言って屋敷は普段からシェアル師匠の魔法で防御されているから油断している節がある。もう一度身の回りの守りについて確認する必要がありそうだ。

「神様、貴重なアドバイスをありがとうございました。感謝します」

「うん、ボクも勇樹くんとのお話はなかなか楽しんでいるからね。君の生活も奴隷を解放するという君の願いも応援しているから頑張ってね!」

「はい神様、本当にありがとうございます!」

「いい返事だね!それじゃあ時間切れだ、元気でね!」

 神様が手を振ると少しずつ意識が遠のいていく。今回は本当に貴重なアドバイスをもらえた。目を覚ましたらエレナお嬢様とアルゼさんに相談してみよう。
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