奴隷スタートの異世界ライフ ~異世界転生したら速攻で奴隷として売られてしまったんだが~

タジリユウ

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第62話 フルーツサンドの約束

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 さて、今回でローラン様の屋敷に来るのは5回目となる。毎回新作のケーキを持っていき、感想を聞きながら世間話をして、そのあとルーさんや護衛の人と組手をさせてもらっている。

 最初は面倒だと思っていたが、ローラン様もきちんと新作ケーキの食レポはくれるし、何よりルーさん達護衛の人との組手が非常に勉強になる。他校で練習試合をするような感じでいつもとは違った心構えで訓練ができ、今ではむしろ楽しみにしている自分がいる。

「くっくっく、変異種を討伐した宴会のあのあとはどうじゃったか?妾のファンに刺されたりはしなかったか?」

 開口一番にそんなことを言ってくるローラン様。

「あのあと本気で大変だったんだからな!誤解を解くのが面倒だったし、嫌がらせとかもあったし!」

 そう、誤解はあの宴会の場で解いたはずだったんだけど、あのあと市場とかで何度か、襲撃まではいかないがゴミとか投げられたんだよな。最初は暗殺者からの襲撃かと思って剣まで抜いたくらいだ。

 そのあと犯人を問い詰めたところローラン様と仲良くしている自分が気に入らないとか言っていた。さすがにゴミを投げられたくらいで警備兵に突き出すのもあれなんでそのまま解放はしたけどな。

「ほう、それは何よりじゃ!それより早く新作ケーキをよこすのじゃ!あと約束していたフルーツサンドというやつもちゃんと持ってきているんじゃろうな!」

「よくその流れで約束とか言えるな!しょうがないから新作のケーキは持ってきたけど、フルーツサンドは持ってきてないぞ!屋敷の人達で美味しくいただいたな」

 元の世界でフルーサンドなんてたべたことなかったんだが、一応作ってみたら結構美味しかった。そのあと屋敷のスタッフみんなで美味しくいただきましたわ。

「なっ、なにい~!約束は約束じゃろうが!妾はずっと待っておったのじゃぞ。変異種討伐からどれだけ待ったと思っているのじゃ!」

 いやどれだけってまだ1週間も経ってないからな。

「おいルー!戦争の準備をせい。約束を守らないアルガン家に攻め込む準備をするのじゃ!」

「いやいやいや!」

 冗談じゃない!フルーツサンドを持ってきてないだけで戦争になってたまるか!よろしいならば戦争クリークだ、の人なみに沸点低いぞこいつ!

「……ユウキ、お前のことだからちゃんと持ってきているのだろう。お嬢様も冗談とはいえ軽々しく戦争などというのはおやめ下さい」

 さすがルーさん、短い付き合いだけどわかってくれている。なんだローラン様も冗談か、ちょっとだけ本気でビビッてしまったぜ。

「ええ、ちょっとした冗談です。まあ面倒はかけられましたけど約束は約束だからな、ちゃんと持ってきてるよ」

 前回の意趣返しにちょっとした冗談のつもりだった。実際にこっちは軽い被害も受けてるしこれくらいは許されるだろうと思ってな。

「な、なんじゃ、ちゃんと持ってきているんなら先に言わんか。わ、妾も軽い冗談に決まっておる!たかがフルーツサンドごときで戦争なんて冗談に決まっておるじゃろ」

 ……このお嬢様、少しは本気だったな。ローラン様はキレると何するかわからない、覚えておこう。

「ほら、さっさと新作ケーキと一緒にフルーツサンドを出すのじゃ」

「へいへい、ちゃんと感想はお願いしますよ」

 一応フルーツサンドの評価も上々だった。今度はファーストフード店みたいな感じで、冒険者をターゲットにしたサンドウィッチ屋さんでも出してみるのはありかもしれないな。



「うおっと!」

 ローラン様の食レポが終わった後、庭でルーさん達と組手を行なっている。見ていて面白いのかわからないがローラン様もいつも庭に出て組手を見ている。

 やっぱり一番最初の組手でルーさんに勝てたのは運がよかっただけで、それ以降の組手ではルーさんの本気のスピードについていくことができていなかった。

 前回の組手からようやくルーさんの動きに身体が対応できるようになってきて、少しずつ強くなってきたことを実感してきたのだが、今日のルーさん達は気合が違った。なんというか、組手にも関わらずいつも以上に気迫が感じられた。

「今日は前回以上に気迫がこもってましたね。前回ようやくルーさんのスピードについていけるようになったと思ったのに、また引き離された気分です」

 組手が終わるといつも感想戦のようなものをして、お互いの良かったところや悪かったところを確認している。

「……変異種の討伐で我々は結果を残すことができなかった。シェアル殿やユウキにはっきりと負けた。ローラン様の護衛としてもっと強く在らなければならない」

「そうだな、競っていたわけではないが我々は何もできなかった。私もローラン様の護衛として恥じぬようになりたい」

 もう1人はラウルさんと言って盾と片手剣をメイン武器としている。変異種討伐の際もルーさんと一緒にローラン様を護衛していた。

 なるほど前回の変異種の討伐の結果を受けてか。シェアル師匠はともかく俺に関してはたまたま相性が良い相手なだけにすぎないんだけどな。

「……ユウキはシェアル殿のファイヤーボールを刀という武器で切ったが、あれはどんな魔法相手でもできるのか?」

「あの時はうちの師匠が本当にすみませんでした。今のところあの刀で切れるのは、8割くらいの魔法ですかね。なんて言うのかな、ファイヤーボールとか魔法の中心がなんとなくわかるのはいけるんですけど、目に見えない風魔法や身体能力強化魔法みたいな魔法の実体が見えないものには使えなかったです」

 前回のシェアル師匠の失態のお詫びとして正直に話す。どちらにせよルーさんは魔法が使えないし、組手であの剣は使わないのであまり意味はないけどな。

「……なるほど。おそらくあのファイヤーボールは私には防げなかっただろう。正直に言って助かった、ローラン様を救ってくれて感謝する」

「そうだな、私もあの規模の魔法は防ぐことはできなかった。せいぜいローラン様の盾となることしかできない、感謝する」

「いやいや、そのファイヤーボール自体がうちの師匠のせいですからね!おふたりに感謝されるいわれはありませんよ!」

 そもそもの原因がこっちなのに感謝されても罪悪感で胸が痛くなるから勘弁してほしい。

「……主人を守るために私はもっと強くならなければならない」

「私もまだまだ若いもんには負けたくないからな、せいぜい頑張るとするさ」

「ええ!俺も主人のためにもっと強くなりたいです!これからもよろしくお願いします!」

 ルーさんもラウルさんも本当にいい人達だ。というかあの性悪な領主様にはもったいない。うむ、折を見てエレナお嬢様に鞍替えしないか聞いてみようかな。いや、今度こそ戦争だとか本気で言ってきそうだからやめておこう。
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下記作品は現在書籍化進行中です!(o^^o)
◆  ◇    ◆    ◇    ◆   ◇    ◆
異世界でキャンプ場を作って全力でスローライフを執行する……予定!
◆  ◇    ◆    ◇    ◆   ◇    ◆

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