奴隷スタートの異世界ライフ ~異世界転生したら速攻で奴隷として売られてしまったんだが~

タジリユウ

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第59話 討伐戦の報告

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 みんながワイワイと飲み食いをしている頃、俺とリールさんとシェアル師匠は冒険者ギルドのギルド長室に来ていた。

「あのギルド長、さっきのはローラン様がふざけていただけでべつにローラン様とは何もありませんからね」

「ああ、ローランの嬢ちゃんがちょっかい出してただけだろ。あの嬢ちゃんは子供の頃は両親にくっついてたまに冒険者ギルドにも来ていろいろと悪戯してたからな。猫かぶってるのも俺と副ギルド長なら知ってるからよ」

 へええ、ギルド長とローラン様は昔からの知り合いだったのか。それだけ昔ってことはギルド長が現役の時のころかもな。

「そうなんですね。あれ、それならなんで俺たちはここに呼ばれたんでしょうか?」

「ああ、ちょっと報酬の件で伝えたいことがあってな。さっきは他の冒険者の手前、報酬は期待しておけなんて言っちまったが、領主様の援軍に報酬は実費程度しか出せないんだ。リール殿とシェアル殿は以前も参加していたから知っていたと思うが、ユウキ殿には説明していなかったと思ってな。

 今回は変異種の発見に加えて、討伐もアルガン家の協力がなければ、かなりの被害が出ていたに違いない。それなのにほとんど報酬を渡すことができずに申し訳ない!」

 そう言いながら頭を下げるギルドマスター。まあそうだよね、元の世界の警察や自衛隊とかと同じで、国を守る領主の責務を果たしたにすぎないから報酬は出なくても当然といえば当然だ。

「ギルドマスター、頭を上げてください。僕たちもユウキくんに説明していませんでしたし、領主であるアルガン家の責務を果たしたに過ぎないのですから気になさらないでください。だよね、ユウキくん」

「ええ!アルガン家に仕えている者の責務を果たしただけです。それに討伐の指揮を取っていただき、多くの魔物を倒して、変異種の弱点を見つけてくれたのは冒険者の方々の力ですから!私たちはその手助けをしただけです」

 というか正直に言って今お金をもらっても使い道がない。家賃も食費も生活費は全てアルガン家が出してくれているため、現在全くと言っていいほどお金を使っていないのだ。せいぜいたまにもらった休日に街をぶらついて食べ歩きをするくらいしか自分のお金を使う機会がない。これで普通より高い給金をもらっているんだから老後は安泰だぜ!

「そうか、そう言ってくれると本当にありがたい!変異種の素材は1/3ほどになると思うが、討伐遠征の費用とともに後日アルガン家にお送りさせていただく。本来なら変異種の素材全てと多額の報酬金を渡したいのだが本当に申し訳ない。

 代わりといってはなんだが、今回のアルガン家の活躍については国王にきちんと報告しておくからな。あとは商業ギルドや鍛冶ギルドやここ冒険者ギルドの者達にも通知しておくから、何かあったら多少の力添えをしてくれるはずだ」

 おお、それはありがたい。冒険者ギルドや商業ギルド、鍛冶ギルドをすこしでも味方にできるのは領主としてとても利益になるはずだ。

「ご配慮感謝します。アルガン家から冒険者ギルドに依頼させていただく際にはどうぞよろしくお願いします。また何かございましたら遠慮なくアルガン家を頼ってください」

「ああ、今後ともよろしく頼む!さあこれで話は終わりだ。あんた達も飲んで食べていってくれ!」

「ありがとうございます。主人に報告しなければならないので長居はできませんが、少しだけ楽しませていただきます」

「おう、楽しんでいってくれ!」

 そのあと少しだけ冒険者ギルドで他の冒険者たちと飲み食いをして楽しんだ。もちろん最初にローラン様の誤解をといた。屋敷の使いで新商品を届けていることと今度フルーツサンドという新しいデザートを持っていくことを約束したことを殺気立った冒険者達に説明するのにはだいぶ骨が折れた。くそっ、絶対に持っていってなんかやらないからな!





「ただいま戻りました」

「ただいまですう!」

「ただいま戻りました」

「お帰りなさい、リール、シェアル、ユウキ!冒険者ギルドからの連絡があって、みんな大きな怪我をすることなく変異種の討伐に成功したって聞いたわ!本当によかったわ!」

「ユウキお兄ちゃん、お帰りなさい!リール様もシェアル様もお帰りなさい!」

「リール様、シェアル様、ユウキお兄ちゃん、みんな無事で本当によかったあ。お帰りなさい」

「うむ、3人とも無事に帰って来て何よりだ」

 屋敷に帰るとみんなが迎えてくれた。もう夜も遅い時間になるのにわざわざ起きて待っていてくれたようだ。まだ短い期間しかこの屋敷にいないが、もうエレナお嬢様の屋敷が俺の家なんだとしみじみと感じるよ。

「今日は疲れたでしょう!報告は明日で大丈夫だから今日はゆっくりと休んでちょうだい」

「ありがとうございます、それでは簡単な報告だけさせてもらいまして本日は休ませてもらいます」

 それはありがたい。さすがに今日は本気で疲れた。冒険者ギルドでご飯も食べて少しだけお酒も飲まされて眠気がやばい。これだけくたくたになったのは久しぶりだ。

「特に問題がなければその報告も明日でいいわよ。奥さんも心配しているでしょうし、早く帰って安心させてあげたほうがいいわ!」

「お心遣いありがとうございます。特に問題はございませんでしたので、明日報告させていただきます。それではお言葉に甘えまして本日はお先に失礼させていただきます」

「ええ、本当にお疲れさま。シェアルもユウキも今日はゆっくり休んでちょうだい」

「はい、ありがとうございます」

 その日はお風呂だけいただいて、そのまま布団にダイブした。いつも以上に疲れていたせいか一瞬で眠りに落ちてしまったようだ。布団に入ってからの記憶が全くない。





「うむ、それでは討伐隊に重傷者はなく、他の活性化した魔物の討伐数もかなりの数で、更にとどめはユウキが刺したということだな」

「付け加えるなら俺の力というよりはこの刀とシェアル師匠の強化魔法の力によるところが多いと思います」

「私も頑張りましたよう!」

 ゆっくりと休んだ次の日、リールさんとシェアル師匠と俺はエレナお嬢様とアルゼさんに昨日の変異種の討伐戦の報告をしていた。

「リールもシェアルもユウキもみんなすごいわ!」

「うむ、少ない人数でよくこれだけの成果を上げてくれたな。魔物の討伐数もそうだが、変異種のとどめまでさせたのは予想以上の成果だ」

「ええ、報酬は冒険者ギルドの規定上ほとんどもらえませんが、アルガン家の者が変異種を倒したとの名声は広まるでしょう。ギルドマスターも国王様に報告していただけるとのことでした」

「ほう、国王様にも報告が入るのはありがたい。領主様が変わってから、あまり良い報告ができていなかったからな。ユウキ、よくやってくれたな」

「ありがとうございます。でも先程もお伝えしましたけどあんまり俺の力というわけではないんですけれどね」

 実際のところは硬いだけの変異種で、反撃もなかったし、かなり相性の良い敵だった。それに刀とシェアル師匠の強化魔法がなければ倒せていたか微妙なところである。

「そんなことないわ、ユウキはいつも頑張っているもの!」

「ありがとうございます。エレナお嬢様にそう言ってもらえるだけでも頑張った甲斐があります!」

「まあ、ユウキったら」

 うむ、エレナお嬢様の役に立てたなら頑張った甲斐もある。そしてちょっと照れたエレナお嬢様はやっぱり可愛い!こうやってアルガン家を盛り上げまくって奴隷制度の廃止に繋げていこう。

「あとは数日後に変異種の素材と討伐の費用を持ってきてくれるといってましたね。素材の方は売ってしまいますか?」

「そうだな、今は特に金銭面で困ってはいない。エレナお嬢様、ユウキやリールの防具を作らせるのはいかがでしょか?余った素材は有事の際に備えて取っておくのが良いかと」

「そうね、結局その刀もお金をかけずに作ってもらえたし、高くなってもいいから良いものを作ってもらったほうがいいわね。素材が届いたら鍛冶屋さんに行ってきてちょうだい」

 おお、それはありがたい。武器の刀の方はかなり性能の良いものだが、防具はグルガーさんに作ってはもらったが素材自体はそれほど珍しい素材ではないからな。ただ、武器も防具も最高級品で腕のほうが微妙だと格好悪すぎる。武器や防具に振り回されないくらいの力は身につけんとな。

「ありがとうございます!あれ、アルゼ様やシェアル師匠の防具はよろしいのでしょうか?」

「私のこの執事服もシェアルのローブもかなり良いものだからな。まだ変える必要はないだろう。必要になった際に変えればいい」

「そうですね、私もまだ大丈夫ですう」

 そうなんだ。そういえば2人とも護衛をするときはいつも同じ執事服やローブだったのはそういう訳か。というかアルゼさんに至っては同じ執事服を着ているところしか見たことないぞ。

「アルゼも必要になったらすぐに言ってね。報告はそれくらいかしら。あとは何かある?」

「あとは報告するようなことはないです!ねっ、ユウキくん!」

「ええ、俺の方からはありません」

 思いっきりこちらのほうを見ながら確認してくるシェアル師匠。約束は約束だし俺の口からシェアル師匠のポカは言えない。

「あとはシェアルが引き止める我々を無視して放った使うなと言われていた火魔法が変異種に反射されて、危うく隣の領主であるローラン様に危害を与えてしまうところだったよね」

「いやぁぁぁ!!」

 だがあっさりとバラしてしまうリールさん。まあ俺には口止めしたけどリールさんにはしていないもんな。ほうれんそうはしっかりと行う、これ社会人の常識。

「……ほう」

 殺気に満ちた目でシェアル師匠を睨むアルゼさん。正直に言って変異種なんかよりもよっぽど怖い……

「幸いユウキくんがシェアルの魔法を斬ってくれたけど一歩間違えば大問題になってましたね。おまけに師匠である立場を利用してユウキくんに口止めまでしていましたね」

「ひぃぃぃぃ~!!」

「………………」

 リールさんが全て正直に報告していく。無言であるアルゼさんが非常に怖い。

「そっ、それはちょっと問題ね。でもシェアルのおかげで討伐もうまくいったのも事実よね」

「そっ、そうですよ!魔物の討伐数も一番だったと思いますし、変異種を討伐できたのもシェアル師匠のおかげだと思います」

 エレナお嬢様と俺のフォローが入る。

「……まあその点は考慮しよう。リール、ユウキご苦労だったな。今日は休みを与えるからゆっくりと休むがいい。明日からまたよろしく頼む。それでは2人とも退室していいぞ」

「はい、失礼します」

「はっ、はい。それでは失礼しますね」

このままシェアル師匠を置いていくのは可哀想だが、上司に言われては仕方がない。本当に仕方がないんだ。

「ユウキくん、たっ、助け……」

 バタンッ

 部屋を出る際にシェアル師匠が何か言いかけていたが俺には何も聞こえなかった。……聞こえなかったことにしておこう。

「シェアルのためにもならないからね、失敗は失敗できちんと報告しないと駄目だよ。まあ結果的にはギリギリ問題なかったから屋敷から追い出されることはないと思うから安心してね」

「はい、伝えにくいことを報告していただきましてありがとうございます」

 うん、やっぱり失敗を隠すのは良くないことだと思いました、マル。
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