奴隷スタートの異世界ライフ ~異世界転生したら速攻で奴隷として売られてしまったんだが~

タジリユウ

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第51話 エドガーさんとランディさんへのお願い

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「エドガーさん、お久しぶりです」

「ユウキさん、お久しぶりです。その節は本当に助けていただきましてありがとうございます」

 今日は屋敷に行商人のエドガーさんが来ている。ミレーの村でわかれてからちょうど一月くらいだ。

「こちらこそあの時はみんなの村への説明ありがとうございました。エドガーさんがいなかったら信じてくれるか怪しいところでしたからね。本当に助かりました。あれグレッグさんとユアンさんはもう帰られたんですか?」

「先程アルガン様にご挨拶をした時までは一緒でしたが、そのあと一度暇を与えました。街にそれほど長く滞在するわけではないですからね。いろいろと自分の時間も必要です。あっ、ユウキさんとリールさんにはくれぐれもよろしくと言っておりましたよ」

 今日はエドガーさん達がエレナお嬢様に挨拶に来ていた。さっきまでいた2人はいつの間にか街に繰り出していたようだ。

「そうですか、またこのあとすぐに出発しちゃうんですね」

「はは、それが行商人というものですからね。その代わりに道中にユウキさん達みたいな出会いもありますからなかなか面白いものですよ。それにしてもアルガン様はとても気さくな方でしたね。まさかあんなに簡単にただの行商人がこの街の領主様と会えるとは思っていなかったので驚きましたよ」

「ええ、とても優しい方ですからね。それに俺とリールさんがとてもお世話になったことを伝えておきましたから」

「そうですね、私のような者の話をちゃんと聞いてくれましたよ。それにお世話になったのはこちらの方です。何せ命を救われましたからね。この前はちゃんとしたお礼を渡せませんでしたから。

 とりあえずユウキさんに言われておりました醤油をかなりの量で仕入れてきました。もちろん今回のお代は結構です。今後の仕入れる量については後ほど教えてください。できることは限られておりますが、あと何か私達に出来ることはありませんか?」

「おお!ありがとうございます。これからお店の料理でも使う予定なので量は多い方がいいです。今回の分でこの前助けた分のお礼としては充分です。今後の分はちゃんと料金を支払いますからね。実はそれとは別にエドガーさん達にひとつお願いしたいことがあるんですよ」

「ええ、私達にできることなら何なりと」

「これから行商をする際にですね、訪れる村や街で盗賊達の情報を集めて欲しいんです。もちろん情報料はお支払いします。普段から行商をしているエドガーさん達なら盗賊達にも怪しまれることなく情報を集められると思うんです」

「盗賊達の情報ですか。もちろん我々も盗賊には常に気をつけておりますから今まで以上に情報を集めても不審には思われないでしょう。ちなみにご理由をお伺いしても大丈夫でしょうか?」

「実はですね、私達の主人は奴隷制度の撤廃を望んでおります。その一環としてそもそもの奴隷の供給を断つために盗賊達を討伐しようとしてます。なので盗賊達の情報、特に盗賊達のアジトや出没場所などの情報が欲しいんです」

「おお、それは素晴らしいです!確かに奴隷の被害の殆どが盗賊の被害と聞いております。ひどいところでは村の住民が全て奴隷にされたこともあると聞いております」

 ひとつの村がまるまる奴隷にされるのか。かなり大きな盗賊団でないとそんなことできないぞ。

「それに我々行商人の一番の敵が盗賊です。我々は大きな商隊ではないので護衛もそれほど雇えません。大きな盗賊に出会したら荷物を捨てて逃げることしかできないですからね。ユウキさん、私からもお願いします、どうか奴らの討伐をお願いします。もちろんお代などいりませんので!」

「いえ、近くをかぎ回っている奴らがいると盗賊達にバレたら命の危険もありますからね。報酬は受け取ってもらうことが条件です。それともうひとつ、こちらはエレナお嬢様には秘密でお願いします。エレナお嬢様はとても優しいお方なので俺達が少しでも危険になることは許してくれないかもしれないので」

 うん、命の危険が増えるかもしれないのだ。さすがに報酬を受け取ってもらうことが条件とアルゼさんやリールさんからも言われている。

「う~ん報酬はいらないんですけどね。わかりましたありがたく受け取らせていただきます。それとアルガン様にもお伝えしないようにしますね。もしかして常闇の烏という盗賊団を壊滅させたのもユウキさん達ですか?」

「さすがに情報が速いですね。ええ、アジトの情報を手に入れたのでミレーの村に行った時に俺達で潰しました」

「おお、やっぱり!その辺りの情報はすぐに出回りますからね。さすがに誰が捕まえたのかまでは聞いておりませんが、とてもありがたいと行商人の間で話しておりました」

 なるほど、行商人達のためにもなっていたなら尚のこといいな。

「ユウキさん、承知いたしました。他の行商人仲間からも情報を集めてきますね!情報を集め次第アルゼ様宛に情報を送らせていただきます」

「はいエドガーさん、今後ともよろしくお願いします!グレッグさんとユアンさんにもよろしくお伝えください」

「ええ!今後ともよろしくお願いします!」

 エドガーさんとがっしり握手をする。よかった、醤油も定期的に購入できるし、エドガーさんとは長い付き合いになりそうだ。



 エドガーさん達と会った数日後、俺とアルゼさんは久しぶりに商業ギルドを訪れていた。

「これはこれはお久しぶりですね。アルゼ殿にユウキ殿!」

「ご無沙汰しております、ランディ殿」

「お久しぶりです、ランディ様」

「お互い忙しい身ですからね。まあそれも全てはアルガン様のおかげです。まさかパンの改良から始まってここまで販売された様々な物がすべてこれほど売れるとは思っておりませんでしたよ。商業ギルドに卸していただいているものも全て好評です!

 そうだ、以前にアルガン様に許可をいただきました商業ギルド主催のリバーシと将棋の大会が開催されます。アルゼ殿やユウキ殿もぜひ参加されてはいかがでしょうか」

「ありがたいお話ですが私はそれほど強くありませんので。ユウキはどうだ?」

「私もそれほど強くはないので。もうランディさんには勝てませんよ」

「ははっ、そういえばあの時は一本取られましたね、懐かしい。あの後に発売されたトランプや人生ゲームの販売も好評ですよ。室内での娯楽もだいぶ充実してきました」

 今となってはランディさんとリバーシで勝負したころが懐かしいな。ちなみにあのあとも工場でトランプや人生ゲームを作って商業ギルドに卸している。トランプは厚紙が難しいので薄い木の札、人生ゲームは職業を冒険者や商人に変えて作ってみたが工場のみんなも好評だった。

「それは何よりです。こちらは手土産の新作のケーキです。魔法で冷やしているので早めにお召し上がりください」

「おお、これが噂の新作ケーキですか!そういえば遅くなりましたがアルガネルケーキ店の2号、3号店の同時開店おめでとうございます。いやあ、これでケーキも多少は手に入りやすくなりますね!販売形式が抽選になってからはなお入手困難になりましたよ。新作ケーキも開店してから毎日即完売でどうすれば手に入るのか考えておりました」

 先日アルガネルケーキ店の2号、3号店が同時開店した。しかし貴族達金持ちのケーキに対する情熱を舐めていた。ケーキは生物だし開店のためにあまり作りだめする事ができない。

 菓子職人を大量に新しく雇ったがそれでも人手が足りず、オープニングスタッフとして開店から少しの間だけの短期で人を雇うつもりだったのだが、供給量が全く追いついていないので開店からしばらくたっていてもまだ働き続けてもらっている。さすがにもう少しすれば需要も収まると思うんだけどな。

「ありがとうございます。ランディ殿にそう言っていただけますと我々も自信が持てます」

「いえいえ、私の助言などなくとも今のアルガン家でしたら問題ございませんよ。失礼ながら、領主が変わった直後は多くの人や物がアルガン様の領地より離れてまいりました。しかし、今ではそれ以上の人や物が集まっておりますからね」

 そういってもらえるとこれまで頑張ってきた甲斐がある。昔よりもこの領地が栄えてきたとランディさんの口から聞けるとは嬉しい限りだ。

「そういえば今回は何の御用でしょうか?また新しい商品でも卸していただけるのでしょうか?」

「いえ、今回は久しぶりにランディ殿にご挨拶するのが一番の目的です。お互い忙しい身でなかなか会えませんでしたしな。あとはついでに一つお願いがあります」

「はい、こちらもなかなかご挨拶に行けずに申し訳ございません。それでついでの願いとは?」

「たいしたことではないのですがそろそろユウキにもちゃんとした武器と防具を持たせようと思っておりまして良い鍛治師を紹介してほしいのです。あいにく私の武器を手入れしてもらっている鍛治師では剣を扱っていないのです」

 そう、アルゼさんのレイピアのような特殊な武器は特殊な鍛冶場に依頼しているので俺の武器と防具は作れないそうだ。そこで顔が広い商人ギルドのランディさんに腕の良い鍛冶師を紹介してもらおうと考えたわけだ。まあ挨拶のついでにだが。

「なるほど、お安い御用です。もっととんでもないことを頼まれるかと思いましたよ。すぐに紹介状を書かせますね。ただアルゼ殿はご存知かと思いますが、腕の良い鍛冶師というのは大抵がドワーフで気難しい者が多いです。たとえ紹介状を書いたとしても断られることが多々あります」

「ええ、アルゼ様より伺っております。そちらに関しては色々と策がありますので」

「ほう、その策というものも気になりますがそれを聞くのは無粋ですね。作戦の成功を祈っております」

「ありがとうございます。上手くいってもいかなくてもまた報告に来ますので!」

「ええ、お待ちしております」

 ランディさんにこの街で腕の良い鍛冶師を紹介してもらったが果たしてどうなることやら。
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下記作品は現在書籍化進行中です!(o^^o)
◆  ◇    ◆    ◇    ◆   ◇    ◆
異世界でキャンプ場を作って全力でスローライフを執行する……予定!
◆  ◇    ◆    ◇    ◆   ◇    ◆

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