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第48話 工場見学
しおりを挟む1時間ほどたち、みんなの両親への説明が終わり、俺とルイスとミレー、2人の親で工場へ行くことになった。2人の仕事場と仕事の内容を案内することになった。サリアとマイルの親はアルゼさんに案内されて2人の仕事の様子を見させてもらうらしい。
「しかし、驚きました。街には何度か来たことがあるのですがまさか本当に中心部のあんなに大きな屋敷で暮らしている領主様とは。いや、ユウキさんのお話を疑っていたわけではないのですが、あれほど大きな屋敷とは思っていなかったもので」
「いえ、気持ちはわかります。俺も最初はあんなに大きな屋敷で働くなんて思ってませんでしたから。最初の頃は飾ってある絵や花瓶なんかを絶対に壊さないように気を使っていました」
「それにものすごく気さくなお方でしたね。私たちみたいな村人にもいろいろと気を使っていただけましたし。あの方達の元で働けるなら1年くらい大丈夫そうね」
「ええ、俺もエレナお嬢様には救われました。ただできるなら、奴隷から解放された後も2人には一緒にここで働きたいですけどね。人でも足りていませんし、みなさんで街に住んでここで働くっていうのはやっぱり難しいですかね?」
「そうですね。私たちの村で先祖から受け継がれた土地もあるし難しいですね。ミレーが街で暮らしたいというのでしたら奴隷契約が解除された後にまた話し合いですね。もちろんその時のミレーの気持ちを大事にしたいですけど」
「うちも周りの家との付き合いを切って街に住むのは難しいですね。それに私には村での生活があってます。奴隷から解放された後にルイスがここに残りたいというならうちはルイスの意思に任せます」
「なるほど。そのあたりはその時になったら考えましょうか。あっ、そろそろ到着しますよ。ちなみに工場にいる2人の男は口は悪いですがいい人達なんですよ。もちろん奴隷紋の誓約で他の人を傷つけることはできないようになってますから」
さすがに2人が犯罪奴隷であることは言いづらいんだよな。まあ聞かれたら答える感じでいいか。
「ただいま!」
「あらユウキさん、お帰りなさい」
「ユウキさん、お帰りなさい」
「おう、ガキ主人じゃねえか。ガキどもは無事に親に会えたのか?」
「ええ、無事に会えましたよ。それで両親も今ここまで来ています。数日間ルイスとミレーの仕事を見学していくそうです」
「モラムのおっちゃん、ただいま」
「ブロンテお爺ちゃん、カミナお婆ちゃん、ただいま」
「おう、無事に帰ってきたか」
「ミレーちゃんもお帰り」
「おかえりさね」
「ローニ達は奥かな。簡単に自己紹介しょうか」
全員を食堂に集めて簡単に自己紹介をする。もう夕方だし今日は少し早めに切り上げてみんなで晩御飯だ。屋敷の方のご飯はサリアとマイルに任せてある。2人が料理を作ってるのをみたら2人の親は驚くだろうな。
「それじゃあ面倒な挨拶は抜きにして乾杯しましょう。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
せっかく2人の両親が街までやってきたということでエレナお嬢様から簡単なもてなしをするように言われている。せっかく醤油が手に入ったので、唐揚げのタレやキノコと貝のバター醤油炒めなど新しい料理も試してみた。
「すごい、こんな美味しいものはじめて食べましたよ!」
「本当!確かにミレーがうちのご馳走より美味しいっていうのもわかるわね」
「ゴホッゴホッ、いやあこちらのお酒は物凄く強いですね」
「そしたらこっちはどうだ、ミレーの親父さん。そいつは果実を混ぜてあるから酒精は強えがだいぶ飲みやすいぜ」
「いただきます。うん、これはだいぶ飲みやすいですね。いや飲みやすいだけでなくすごく美味しいです!」
「おっさんも飲める方じゃねえか!ルイスの親父さんの方もどうだ?」
「いやあ、実は私もお酒には目がなくて!ほお、これはうまいですな!今までに飲んだことのない味です」
「へへ、俺たちが作ってるんだから当たりめえよ。本当は作ってから時間が経つともっと上手くなるらしいんだけどよ。ああ、飲みやすいからって飲み過ぎると酒精が強えから明日地獄を見るから気をつけな」
「オラはこっちの方が好きだべ。でも今新しく作ってる酒も楽しみだ」
うん、大人達は完全に宴会モードだ。2人の父親は2人ともお酒が飲めるらしく、モラムさん、ガラナさん、ローニーと意気投合してる。ルイスの母親は料理をゆっくり楽しみながらカミナお婆さんたちと話している。子供達は黙々と唐揚げなどの料理を食べ続けている。
まあ馬車での旅も楽しかったけど出せるご飯には限界があるからな。おれも久しぶりに温かくて美味しい料理に満足した。
その日は俺も工場に泊まった。ベッドはまだあるので2人の両親も一緒に泊まっていった。俺はだいぶ疲れていたから早く寝たけど、大人達は夜遅くまで飲んでいたらしい。途中からアルゼさんもお酒を持ってやってきたらしく、また大宴会が始まったとか。まあたまには息抜きにこういう日はあってもいいだろう。なんだかんだで俺も楽しんでたしな。
次の日は工場での仕事を2人の親に見てもらう予定だったのだが、当然というべきか大人は酔い潰れていたため、お昼頃まで子供達とお爺さんお婆さんたちで作業をしていた。見学はルイスの母親だけである。
昼を過ぎてようやく復活した大人達が働き出した。蒸留酒の作り方は秘密だったので、子供達の作業を見学していた。なんだか学校の授業参観のことを思い出してしまうな。相変わらず口は悪いがモラムさんもガラナさんも2人の両親に気を使って作業をしていたので、もう大丈夫だと思い屋敷の方に戻った。
屋敷の方でもアルゼさんやリールさんがサリアとマイルの仕事を親に説明していた。俺も仕事が終わった後の夜の勉強会を行った。これこそ本当の授業参観だなと思いつつ、1人メイド服の生徒がいることに違和感を感じて少し笑ってしまった。
そして次の日も同じように仕事を見学してもらい、その次の日にみんなの親はそれぞれの村に帰ることになった。その日の朝にちょうど村への定期馬車が出ているので、子供達とアルゼさん、工場の代表でモラムさんとガラナさんが見送りに来ていた。
「それじゃあな、マイル。しっかり勉強してこい。辛くなったらいつでも帰ってきていいんだからな」
「うん、早く一人前の男になれるように努力する!また手紙を送るね!」
「サリア、気をつけてね。お父さんにはああ言ったけど街にも危険がいっぱいあるのを忘れちゃだめよ。魔法を使えるようになってもあなたは女の子なんだからね」
「うん、お母さんも元気でね!それからお父さんには街で働くのを許してくれてありがとう、大好きだよって伝えておいてね」
「それじゃあな、ルイス。ルイスの言う通りみんないい人達だったから大丈夫そうだ。父さん達もお金を貯めて早くお前を解放させられるよう頑張るからな!」
「ルイス、体に気をつけてね。ちゃんとみんなの言うことを聞くのよ。またすぐに会いに来るからね」
「お父さんもお母さんも元気でね。こっちは大丈夫だからあんまり無理しないでよ。今度モラムのおっちゃん達に剣を習うんだ!俺もっと強い男になるからな!」
「それじゃあミレー、元気でな。今度はお兄ちゃんと母さんも一緒に連れてくるからな。なあに、父さん達がちょっと本気で働いたらすぐにお金なんて稼いでやるからな、ちょっとだけいい子で我慢するんだぞ」
「うん、ちゃんといい子にしているよ!今度はお兄ちゃんとお母さんも一緒に来てね、ミレー待ってるから!」
相変わらず別れのシーンは泣きそうになってしまう。みんないい子すぎるんだもん。そして別れの挨拶が終わって馬車の時間が来たようだ。
「アルゼ様、ユウキ様、どうかサリアとマイルをよろしくお願いします」
「エレナお嬢様にもお伝えください。何度もお伝えしますが本当にサリアとマイルを助けてくれ感謝をしております。どうか2人をよろしくお願いします」
「畏まりました。お二人はアルガン家がしっかりと預からせていただきます。どうかご安心ください」
「はい、俺も何があっても必ず2人を守ります!約束します!」
サリアとマイルの両親が何度も頭を下げる。そうだな、俺も何が起きても2人を守れるようにもっともっと強くならなくては!盗賊を捕まえたくらいで慢心しては駄目だ!
「モラムさん、ガラナさん、どうかルイスのことをよろしくお願いします」
「モラムさん、ガラナさん、うちのミレーのこともどうかよろしくお願いします」
「ああん、それならアルゼの旦那たちに言えよ。俺たちはガキどもと同じで奴隷だぞ」
「いえ、お二人とエレナお嬢様には屋敷を出る前にすでにお伝えしました。あなた方と仕事をしている息子を見させてもらいましたがとても楽しそうにしていました。今度剣を教えてもらうって嬉しそうに話すんですよ。どうか息子をよろしくお願いします」
「ミレーもあなた方やお婆さんたちとすごく楽しそうにしていました。どうか娘をよろしくお願いします」
「……わかった、わかった。ちゃんとこっちで見ててやっから安心しろ。危ねえことはぜってえさせねえからよ」
「俺も約束してやんよ。その代わりにあんた達も必死で働いてさっさと奴隷紋をとってやんな。子供には辛いもんだからよ」
「はい、どうかよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
うん、やっぱり2人とも元犯罪者だけど根はいい人だと思うんだよな。最後に親子で抱き合ってみんなの親は自分たちの村に帰っていった。みんなを守るためにももっと頑張らないといけないな。
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◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
異世界でキャンプ場を作って全力でスローライフを執行する……予定!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
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