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第47話 ただいま

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 無事に盗賊たちの制圧が完了した。俺が倒した盗賊以外にリールさんと2人で10人以上の盗賊を捕らえていたようだ。キャンプ地から荷馬車を持ってきて拘束した盗賊たちを押し込む。

 もちろん中途半端な拘束はせず、武器がないことを確認した後に両手両足を金属の手錠をつけた後に縄で縛り上げた。半数以上は両手両足の骨が折れてるから逃げられないとは思うが念の為だ。

 こいつらが攫っていたのはさっき人質にされていた子供が3人だった。元にいた場所を聞くと、ここから少し離れた村の方だった。盗賊たちはエレナお嬢様がいる街ではなく、ここから近いそこそこ大きな街で憲兵さん達に引き渡す予定だ。その後にこの子たちは3人が責任を持って村まで送ってくれるとのことだ。

 盗賊たちと子供たちを3人に任せて俺とリールさんはミレーの村に戻った。身体中が泥だらけだったから水で身体を拭いたけど、やっぱり風呂に入りたくなった。街にいた時はエレナお嬢様の屋敷で風呂に入ることができたけど、あれはやっぱり贅沢なことなんだな。そしてキャンプ中は火が使えず冷たい食事しか取れなかったから温かい食事が身に沁みた。

 ミレーの村でぐっすりと休んで翌朝早朝にはルイスの村に出発した。3日ほどミレーとゆっくりと話した両親は俺たちの話を信じてくれたようだ。ただしミレーの父親であるビーンさんは一度街までミレーを送りに来てエレナお嬢様と話したいそうで一緒についていている。

「ユウキお兄ちゃん、特訓大変だった?」

「意外と大丈夫だったかな。むしろ屋敷での訓練の方が地獄だったかも」

 ぶっちゃけあの盗賊100人よりもアルゼさんやリールさんやシェアル師匠のほうが全然やばい。ようやく力や速さで追いつけたような気はするんだけど、それでも全く敵わないんだよなあ。

「ユウキさんはすごく強いんだってね。それに面白い物を作るのが得意なんだってね」

「そんなことないですよビーンさん。俺より屋敷にいる人の方が全然強いですからね。あと俺が作っているわけではなくて、とても遠いところで別の人が作ったことがあるものをいろいろ変えて教えているだけですよ」

「なるほど、それでもすごいですよ。この村には何にもありませんからね。それにミレーがあんな物をつくれるようになったなんて驚きです」

 あんなものとはリバーシと将棋もどきだ。ミレーとルイスの村に一つずつ置いてきた。

「ええ、ミレーは手先がすごい器用で助かってます。今工場ではもう一人と一緒に将棋の駒に絵を書いてもらっていますけどこの勇者の絵とかすごいうまいですよね」

「そうですか、ミレーが……。皆さんには本当に感謝しています。盗賊に捕まっていた時の話も聞きましたがうちの子は大丈夫でしたが、同い年くらいの男の子は何度も殴られていたと聞きました。それに奴隷にしてもボロボロになるまでこき使われて人間として扱われないと聞いていましたから」

「俺もエレナお嬢様にとても感謝しています。俺も普通の人以上の生活が遅れるとは思っていなかったです」

「はは、娘が帰ってこれたお祝いにご馳走を作ったら工場で食べていた料理のほうが美味しいと言われましたよ」

「だってみんなが作ってくれるご飯の方が美味しかったんだもの。ミレーね、ユウキお兄ちゃんが作ってくれた唐揚げが一番好き!」

「はは……」

 嬉しいんだけどさすがにコメントに困る。そんな感じでミレーの父親とも少しずつ打ち解けながら旅路を進んだ。意外なことにミレーの父親はリールさんと話が合うようで、俺が馬車を運転しているときに後ろで作物や花を育てる話をしながら盛り上がっていた。



 ギリギリ日が暮れるまでにルイスの村に着くことができた。ルイスも久しぶりに両親と過ごしたおかげで楽しそうに笑っていた。ルイスから話を聞いてこちらの話を信じてくれたようだ。次の日の朝、ルイスの両親も一緒に荷馬車に乗ってサリアとマイルの村を目指す。



 サリアとマイルの村にも問題なく到着することができた。一度魔物に遭遇したが、数匹でしかもすぐに諦めて逃げていったので大丈夫だった。本当にこの世界で遠くに旅行に行くのも命懸けである。

「ユウキお兄ちゃん、おかえり!」

「ユウキ兄ちゃん、おかえりなさい。特訓は大丈夫だった?」

 村に入るとすぐにサリアとマイルが飛び込んできた。2人に会うのも1週間ぶりだ。2人とも元気そうでよかった。

「おっと、ただいま。特訓は大丈夫だったよ。いつも屋敷の訓練で鍛えられているからね」

「よかったあ。森の中でキャンプするって聞いてたから心配したの。ユウキお兄ちゃんがすごく強いのは知ってるけどあんまり危ないことしちゃ駄目だよ」

「ほら、サリアちゃん。ユウキ兄ちゃんなら大丈夫だって言ったじゃん。普段アルゼ様やリール様やシェアル師匠にあれだけ鍛えられていたんだもん」

「はは、あの3人より強い人なんて見たことないからね。それよりも2人はどうだった?このまま屋敷で働けそうか?」

「うん、お父さんもお母さんもわかってくれて、しっかりと鍛えて勉強してこいって!あと1月に一度手紙を送るから宛先を教えて欲しいって。それと3ヶ月に一度くらいはお父さんとお母さんが街の方に来たいって言ってるんだけど大丈夫かな?」

「そっか、よかったな!なるほど手紙という方法もあったか。大丈夫だよ、エレナお嬢様とアルゼ様からいつでも屋敷にきても大丈夫って言われてるから」

「サリアも同じで大丈夫!お父さんが最後まで許してくれなかったんだけどお母さんがサリアの気持ちを大事にって言って説得してくれたの!」

「おお、2人ともよかった。また一緒にいれるな」

 俺も2人を抱きしめる。よかったまだ2人と一緒にいられるのはとてもありがたい。

 ハッ、殺気!?

「………………」

 サリアの父親がこちらを睨みながら拳を握っている。やばい、盗賊なんて目じゃないくらいの恐ろしい形相をしている。すぐにサリアとマイルから離れた。

「えっと、サリアに許可を出してくれてありがとうございます」

「……サリアの気持ちが一番だからしょうがない。俺一人なら街まで走っていけるからな。ところでユウキくん、話は変わるがちょっと放課後に体育館の裏に来てくれないかな」

「すみません、ちょっと忙しいのでまた次の機会にお願いします」

 どう考えてもヤキを入れられてしまう。というか全言語理解でどうやったらこんな翻訳になるんだよ。あれか、ちょっと畑仕事終わったら倉庫の裏に集合な、みたいな感じか。

「ほらあなた、いい加減にしなさい!さあユウキさん、お疲れでしょう。詳しい話はゆっくりと家の中でしましょう」

「あっ、はい」

 サリアの母親から助け舟が来た。さすがに戦っても負ける気はしないんだが迫力的には盗賊やアルゼさん以上に怖い。

 そのあとサリアの両親とマイルの両親に話を聞いたところ、今までの2人の話や屋敷での生活を聞いて屋敷で働くことを許可してもらえたようだ。

 ただし、2人が辞めたくなったらすぐに辞めれるようにすること、一月に一度手紙を送ること、3ヶ月に一度街で2人と会う許可を求められた。条件については事前にエレナお嬢様とアルゼさんと話していた許容範囲なので問題なかった。

 次の日の朝、マイルの父親とサリアの母親が一度街まで同行するため、これで俺とリールさん、子供たちが4人とその親が6人の大所帯となった。

「うおーサリア!いいか、嫌なことがあったらすぐに連絡するんだぞ!いつでも仕事を辞めて村に戻ってきていいんだからな。いや、やっぱり俺もついて行こう、それがいい!」

「はあ、いいからあなたは畑仕事をお願いね。サリアが大事なのはわかるけど、私に任せてしっかりと働いてちょうだい」

「お父さん、サリアならもう大丈夫だよ!恥ずかしいから大人しくしてて!」

「ぐはあ!」

 相変わらずサリアにべったりな父親が精神的ダメージを負った隙に出発する。正直なところあの父親と一緒に街に戻るのは精神衛生上よろしくない。街の中でサリアと目線があったというだけで喧嘩でも起こしそうだ。

 そこから街までの4日間は順調な馬車の旅だった。人数がだいぶ増えたため、寝る時は馬車に子供たちだけで、大人は馬車を囲むようにテントを張って野宿をした。基本的に食事はみんなの村でもらった野菜や麺を使って作ったがそこそこ好評だった。

 日中はみんなや親たちといろんな話をしたが、意外とそれぞれの村での生活は村ごとに違っていて驚いた。設備が違ったり、育てている作物が違ったり、村で取れる作物を使った料理などいろいろな話をしたが楽しかった。最近は街で忙しく過ごしていたから、こうしたのんびりした時間も気分転換になってリフレッシュできた。

 ようやく半月の長い旅を終えて街の大きな城壁が見えてきた。ここまで来るとようやく帰ってきたんだなと実感が湧く。わずか半年ほどしか過ごしていないがエレナお嬢様の屋敷がもう俺の家になっているんだなと思えた。



「おかえりなさい、リール、ユウキ、マイル、サリア、ルイス、ミレー。長旅ご苦労様!」

「「「ただいま戻りました、エレナお嬢様」」」

「うむ、みんなよく戻ってきてくれた。帰って早々のところを悪いが屋敷での仕事がかなり溜まっていてな、屋敷の仕事を手伝ってくれ」

 あれ、なんかアルゼさんが疲れ切った顔をしているんだが。そういえば俺たちがいない間は屋敷のことはシェアル師匠とアルゼさんの2人で回していたのか。そりゃ疲れるわけだわ。

「もう、じいったら。まだ帰ってきたばかりで疲れているんだから明日からでいいでしょう」

「いえ、馬車で座っていただけなんで大丈夫ですよ。むしろ身体が固まっちゃってるんで少し動きたかったところです」

「すまんな、仕事を減らすどころか増やす奴が一人いてな。リールの奥さんがいてくれなかったら食事もままならないところだった」

「すいませえん~」

 おう、やっぱりシェアル師匠がいろいろとやらかしたんだろうな。

「こちらがみんなのご両親ですね。はじめまして、この街の領主の一人のアルガン=ベルゼ=エレナと申します」

「「「ははあ!!」」」

 みんなの両親たちが片膝をついてエレナお嬢様に跪く。屋敷の中に案内された時からものすごい挙動不審になっていたが、やっぱりこれだけ大きな街の領主の屋敷であることを再確認して驚いているのだろう。

「そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ。領主といってもまだなったばかりで何もわからないものですから。あちらに椅子がありますからお昼ご飯でも食べながらみんなの仕事内容やお給金を説明させてもらいますね。そのあとは実際の仕事の内容を見ていってくださいね」

 そしてエレナお嬢様とアルゼさんはみんなの両親に説明をしに別の部屋へ。マイルとサリアに書類仕事の計算を任せて、俺とルイスとミレーは屋敷の掃除、リールさんと奥さんは庭の手入れとパンを焼く作業に取りかかった。半月分とはいえ、だいぶ汚くなっていた。やはりこれだけ大きな屋敷だと維持をするのもなかなか大変だ。
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