19 / 95
第19話 もしかしてチョロいん?
しおりを挟む「ユウキくん、ユウキくん」
「ううん……」
「ユウキくん、起きてってばあ!」
「ううん。うわっ!どうしてシェアル様がここに!?」
目が覚めるとなぜか目の前にはメイド服姿のシェアルさんが!もっ、もしかしてこれは夜這いというやつか?
よくよく見るとシェアルさんってかなり綺麗だし胸も大きいし、女性としてかなり魅力的なんじゃないか?据え膳食わねばというし、ここは男としての威厳を見せ付けなければ!
「しっ、他の子供達が起きちゃいますよう。それにしても珍しいですねえ、ユウキくんがこの屋敷に来てから初めて私のほうが起こしに来ましたよう」
「へっ?」
窓の外を見るとすでに日が昇っている。やべっ、寝坊した!昨日はあのあと今の俺にできそうなことをいろいろと考えていたら、寝るのがだいぶ遅くなってしまったんだ。
それにしても危ないところだった。寝ぼけてシェアルさんの胸にダイブしていたら事案が発生するところだった。昨日エレナお嬢様とアルゼさんにあれだけ大きな口を叩いておいて、次の日にそんな問題を起こしたら切腹ものの失態になるところだった。
「すみません、すぐに着替えて向かいます」
「ふふっ、そんなにあわてなくても大丈夫ですよう。部屋の前で待っていますねえ」
急いで着替えて部屋の前で待っているシェアルさんと合流する。今までは毎朝俺のほうが早く起きて、シェアルさんの部屋へ行きドアをノックして起こしていたのだがさすがに今日は俺のほうが寝すぎていたらしい。
「そういえば昨日アルゼ様に聞いたのですが、シェアル様はとても優秀な魔法使いだとか。魔法使いとして一流の腕前だとほめていらっしゃいました。この屋敷もシェアル様の結界によって守られているとお聞きしました」
「本当ですかあ?アルゼ様に褒められることはめったにないので嬉しいですねえ。一流ですかあ、えへへ~」
魔法の腕に関してのみだけだけど。この人褒められることに慣れてなさそうだしな。よし、おだてまくる作戦で行こう。
「それでですね、アルゼ様からもお話があるかもしれないのですが、俺を鍛えていただけないでしょうか?
俺は強くなりたいんです!シェアル様の一流の魔法を教えてください!俺もシェアル様のような優秀で一流の魔法使いになりたいんです!」
あえてもう一度言おう、魔法の腕に関してのみだけであると。
「一流ですかあ。ふふっ、いいでしょう!ユウキくんは幸運ですね、私のような優秀な魔法使いの弟子になれるなんて!私は厳しいですが頑張ってついてきてください」
あっこの人ちょろいな、ちょろインだ。
「はい、よろしくお願いします!」
「そうですねえ、サリアちゃん達もお仕事を手伝ってくれますし、明後日くらいから修行を始められそうですね」
「そうですね、俺も今日と明日はみんなに仕事を教えないと。明後日からよろしくお願いしますねシェアル師匠!」
「師匠!なんてすてきな響きでしょうかあ!よし、ユウキくん、これから私のことは師匠と呼ぶように!」
「わかりましたシェアル師匠!」
「えへへえ~」
……本当に優秀な魔法使いなんですよねアルゼさん?あまりにちょろすぎて不安なんですけど。
エレナお嬢様を全力で支えていくと決めたが、まずは目の前の仕事をしっかりとこなしていかなければならない。寝坊をして他の人達に迷惑をかけてしまっては本末転倒もいいところだ、明日から気をつけよう。
昨日からマイル達が増えたことにより7人分の食事を準備する。2人は遅く起きるかもしれないのですぐに温められそうな料理を作っておいた。
「うわ、おいしい!」
「美味しい、白いスープなんて初めて見たわ!」
予想通り昼過ぎまでぐっすりと寝ていた2人が起きてきたので、全員が起きたところで食事になった。屋敷の者はすでに朝食を取っていたので、俺達3人だけで食べている。2人の服はアルゼさんがすでに用意してくれていた。昨日の今日で屋敷に仕えることになったのにさすがである。
今日の朝ごはんは温めなおせばすぐに食べられるクリームシチューとパンとサラダだ。クリームシチューは栄養もあるし弱った体にもいいだろう。ミルクを使った料理はこの国では食べられてないのか、エレナお嬢様達も最初は驚いていたが、味については優しくて美味しい味だと好評だったからよかった。
「さあ食べ終わったら後片付けをして、シェアルさんと一緒に屋敷の掃除、その後は晩御飯をみんなで作るぞ!これまでのご飯は俺が作っていたけどこれからはみんなで作るんだからな」
「ええ、これユウキ兄ちゃんが作ったんだ。うわあ、僕にこんなに美味しいご飯作れるかな」
「う~ん、ユウキお兄ちゃんより美味しいご飯を作らなくちゃいけないのかあ、難しそう」
「うん?サリア、美味しいに越したことはないけど別に俺よりも美味しいご飯を作らなくちゃいけないわけじゃないよ」
俺が作った料理は屋敷の人に褒められているし、これ以上のものを求められているわけではないと思うんだよな。
「ごはんを作るのは女の人の仕事だもん。お母さんはお父さんより家のことができなくちゃだめっていつもお母さんが言ってたの」
「サリアはえらいな!そうだな、将来サリアも誰かと結婚するもんな。今のうちからいろいろな家事をできるようにしておこうな」
「……ユウキお兄ちゃんのバカ!」
「……ユウキ兄ちゃん鈍すぎるよ。僕でもわかるのに。サリアちゃんこれから苦労しそうだけど僕も協力するから頑張ってね」
「ありがとうマイル。よし、私頑張るからね、絶対にユウキお兄ちゃんを振り向かせてみせるもん」
なんか2人でごにょごにょ話している。そうだよな、2人もいつかは嫁と婿にいってしまうんだよな。いかんいかん、想像するとちょっと寂しい気持ちになってきた。ちゃらい感じのやつを連れてきたらお兄ちゃんは許しませんからね!
食器をみんなで片付けた後はシェアルさんと合流し、みんなに掃除の仕方を教えていった。シェアルさんはあまり使えな……じゃなくてちょっとドジであることはあらかじめ伝えておいたが実物を見てみんな絶句していた。
たぶんこれでもシェアルさんは頑張っていたんだよ。珍しくバケツの水は1回しかこぼさなかったし、箒やチリトリも1回ずつしか俺のほうに飛んでこなかったからな。2人がいたからいつもより慎重に掃除していたんだろう、いつもならこの倍はいろいろとやらかしているからな。
やはり人手がいるとだいぶ時間が早くなる。というよりシェアルさんがあまりやらかさなかったのがよかったのかもしれない。それだけで作業効率がだいぶあがるもんなあ。
みんなで掃除を終わらせた後は晩御飯の準備だ。今日の晩御飯はコロッケと唐揚にした。ジャガイモが結構多かったから消費したかったのと、そろそろ唐揚の屋台が始まるそうなので、その仕込をみんなに教えておきたかったからだ。
ちなみにシェアルさんも手伝ってくれると言ってくれたのだが今日はみんなに教えるからと言って丁重にお断りしておいた。シェアルさんはしゅんとなっていて少しだけかわいそうなことをした気持ちになったが、こちらも命がかかっているので彼女を厨房に立たせるわけにはいかない。
本当はソースが欲しいところだが、残念ながらまだこの世界では見つけられていないので、代わりに味噌ダレとマヨネーズを使用した。そこそこ美味しかったのだが、個人的にはやはりソースがいい。でもさすがにソースを一から作るのは難しそうだからな。
晩御飯の後片付けを終えた後はみんなで勉強会だ。アルゼさんに許可をもらい夜に1時間程度読み書きと計算をみんなに教えることにした。この世界では読み書きと計算ができるものは少ないようだし、身につけておいて損にはならないと思う。2人ができるようになればアルゼさんの仕事も少しは楽になるしな。と、そこまではよかったのだがなぜかマイルとサリアの他にも参加者がいた。
「……なんでシェアル師匠もいらっしゃるんですか?」
そう、なぜかここにシェアルさんがいた。仕事は終わったのでメイド姿ではなく、寝巻きとジャージの中間的な服である。メイド服よりも薄い服なので非常にえろ……ではなく目のやり場に困る格好である。
「ええっとですねえ、私も読み書きと計算ができないんですよう。せっかくだからサリアちゃん達と一緒に私も教えてもらいたいなあって思って。もちろんアルゼ様には許可を貰ってますよう」
「そうですか、アルゼ様から許可を貰っているなら大丈夫です。一緒に頑張りましょうね!」
「うん、魔法では私が師匠だけど勉強はユウキくんが先生だね。よろしくお願いします、ユウキ先生!」
……ユウキ先生か。お姉さんであるシェアルさんから先生なんて呼ばれるとなんかこうぐっとくるものがある。放課後、教師と女生徒との禁じられた恋、いやあ、なんかそそるシチュエーションだなあ。
「えいっ!」
「痛っ!」
サリアがいきなりわき腹をグーで殴ってきた。地味に痛い。
「ユウキお兄ちゃん、デレデレしてないで早く勉強しようよ。勉強が終わったらまたいろいろなお話してくれるんでしょう」
「べっ、別にデレデレなんかしてないよ。そうだなそれじゃあ始めようか」
変なことを考えていたのをサリアに見破られてしまった。いかんいかん時間は有限だ、さっさと始めよう。ちなみに2人からして欲しいといわれた童話は勉強が終わった後にご褒美として話してあげることにした。何事もご褒美があるだけでやる気がでてくるものだからな。
ちなみにシェアルさんも含めて誰も足し算や引き算すらできなかった。この世界はの教育水準は俺の想像以上に遅れているのかもしれない。
15
お気に入りに追加
364
あなたにおすすめの小説
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる