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第19話 もしかしてチョロいん?

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「ユウキくん、ユウキくん」

「ううん……」

「ユウキくん、起きてってばあ!」

「ううん。うわっ!どうしてシェアル様がここに!?」

 目が覚めるとなぜか目の前にはメイド服姿のシェアルさんが!もっ、もしかしてこれは夜這いというやつか?

 よくよく見るとシェアルさんってかなり綺麗だし胸も大きいし、女性としてかなり魅力的なんじゃないか?据え膳食わねばというし、ここは男としての威厳を見せ付けなければ!

「しっ、他の子供達が起きちゃいますよう。それにしても珍しいですねえ、ユウキくんがこの屋敷に来てから初めて私のほうが起こしに来ましたよう」

「へっ?」

 窓の外を見るとすでに日が昇っている。やべっ、寝坊した!昨日はあのあと今の俺にできそうなことをいろいろと考えていたら、寝るのがだいぶ遅くなってしまったんだ。

 それにしても危ないところだった。寝ぼけてシェアルさんの胸にダイブしていたら事案が発生するところだった。昨日エレナお嬢様とアルゼさんにあれだけ大きな口を叩いておいて、次の日にそんな問題を起こしたら切腹ものの失態になるところだった。

「すみません、すぐに着替えて向かいます」

「ふふっ、そんなにあわてなくても大丈夫ですよう。部屋の前で待っていますねえ」

 急いで着替えて部屋の前で待っているシェアルさんと合流する。今までは毎朝俺のほうが早く起きて、シェアルさんの部屋へ行きドアをノックして起こしていたのだがさすがに今日は俺のほうが寝すぎていたらしい。

「そういえば昨日アルゼ様に聞いたのですが、シェアル様はとても優秀な魔法使いだとか。魔法使いとして一流の腕前だとほめていらっしゃいました。この屋敷もシェアル様の結界によって守られているとお聞きしました」

「本当ですかあ?アルゼ様に褒められることはめったにないので嬉しいですねえ。一流ですかあ、えへへ~」

 魔法の腕に関してのみだけだけど。この人褒められることに慣れてなさそうだしな。よし、おだてまくる作戦で行こう。

「それでですね、アルゼ様からもお話があるかもしれないのですが、俺を鍛えていただけないでしょうか?

 俺は強くなりたいんです!シェアル様の一流の魔法を教えてください!俺もシェアル様のような優秀で一流の魔法使いになりたいんです!」

 あえてもう一度言おう、魔法の腕に関してのみだけであると。

「一流ですかあ。ふふっ、いいでしょう!ユウキくんは幸運ですね、私のような優秀な魔法使いの弟子になれるなんて!私は厳しいですが頑張ってついてきてください」

 あっこの人ちょろいな、ちょろインだ。

「はい、よろしくお願いします!」

「そうですねえ、サリアちゃん達もお仕事を手伝ってくれますし、明後日くらいから修行を始められそうですね」

「そうですね、俺も今日と明日はみんなに仕事を教えないと。明後日からよろしくお願いしますねシェアル師匠!」

「師匠!なんてすてきな響きでしょうかあ!よし、ユウキくん、これから私のことは師匠と呼ぶように!」

「わかりましたシェアル師匠!」

「えへへえ~」

 ……本当に優秀な魔法使いなんですよねアルゼさん?あまりにちょろすぎて不安なんですけど。





 エレナお嬢様を全力で支えていくと決めたが、まずは目の前の仕事をしっかりとこなしていかなければならない。寝坊をして他の人達に迷惑をかけてしまっては本末転倒もいいところだ、明日から気をつけよう。

 昨日からマイル達が増えたことにより7人分の食事を準備する。2人は遅く起きるかもしれないのですぐに温められそうな料理を作っておいた。

「うわ、おいしい!」

「美味しい、白いスープなんて初めて見たわ!」

 予想通り昼過ぎまでぐっすりと寝ていた2人が起きてきたので、全員が起きたところで食事になった。屋敷の者はすでに朝食を取っていたので、俺達3人だけで食べている。2人の服はアルゼさんがすでに用意してくれていた。昨日の今日で屋敷に仕えることになったのにさすがである。

 今日の朝ごはんは温めなおせばすぐに食べられるクリームシチューとパンとサラダだ。クリームシチューは栄養もあるし弱った体にもいいだろう。ミルクを使った料理はこの国では食べられてないのか、エレナお嬢様達も最初は驚いていたが、味については優しくて美味しい味だと好評だったからよかった。

「さあ食べ終わったら後片付けをして、シェアルさんと一緒に屋敷の掃除、その後は晩御飯をみんなで作るぞ!これまでのご飯は俺が作っていたけどこれからはみんなで作るんだからな」

「ええ、これユウキ兄ちゃんが作ったんだ。うわあ、僕にこんなに美味しいご飯作れるかな」

「う~ん、ユウキお兄ちゃんより美味しいご飯を作らなくちゃいけないのかあ、難しそう」

「うん?サリア、美味しいに越したことはないけど別に俺よりも美味しいご飯を作らなくちゃいけないわけじゃないよ」

 俺が作った料理は屋敷の人に褒められているし、これ以上のものを求められているわけではないと思うんだよな。

「ごはんを作るのは女の人の仕事だもん。お母さんはお父さんより家のことができなくちゃだめっていつもお母さんが言ってたの」

「サリアはえらいな!そうだな、将来サリアも誰かと結婚するもんな。今のうちからいろいろな家事をできるようにしておこうな」

「……ユウキお兄ちゃんのバカ!」

「……ユウキ兄ちゃん鈍すぎるよ。僕でもわかるのに。サリアちゃんこれから苦労しそうだけど僕も協力するから頑張ってね」

「ありがとうマイル。よし、私頑張るからね、絶対にユウキお兄ちゃんを振り向かせてみせるもん」

 なんか2人でごにょごにょ話している。そうだよな、2人もいつかは嫁と婿にいってしまうんだよな。いかんいかん、想像するとちょっと寂しい気持ちになってきた。ちゃらい感じのやつを連れてきたらお兄ちゃんは許しませんからね!



 食器をみんなで片付けた後はシェアルさんと合流し、みんなに掃除の仕方を教えていった。シェアルさんはあまり使えな……じゃなくてちょっとドジであることはあらかじめ伝えておいたが実物を見てみんな絶句していた。

 たぶんこれでもシェアルさんは頑張っていたんだよ。珍しくバケツの水は1回しかこぼさなかったし、箒やチリトリも1回ずつしか俺のほうに飛んでこなかったからな。2人がいたからいつもより慎重に掃除していたんだろう、いつもならこの倍はいろいろとやらかしているからな。



 やはり人手がいるとだいぶ時間が早くなる。というよりシェアルさんがあまりやらかさなかったのがよかったのかもしれない。それだけで作業効率がだいぶあがるもんなあ。

 みんなで掃除を終わらせた後は晩御飯の準備だ。今日の晩御飯はコロッケと唐揚にした。ジャガイモが結構多かったから消費したかったのと、そろそろ唐揚の屋台が始まるそうなので、その仕込をみんなに教えておきたかったからだ。

 ちなみにシェアルさんも手伝ってくれると言ってくれたのだが今日はみんなに教えるからと言って丁重にお断りしておいた。シェアルさんはしゅんとなっていて少しだけかわいそうなことをした気持ちになったが、こちらも命がかかっているので彼女を厨房に立たせるわけにはいかない。

 本当はソースが欲しいところだが、残念ながらまだこの世界では見つけられていないので、代わりに味噌ダレとマヨネーズを使用した。そこそこ美味しかったのだが、個人的にはやはりソースがいい。でもさすがにソースを一から作るのは難しそうだからな。





 晩御飯の後片付けを終えた後はみんなで勉強会だ。アルゼさんに許可をもらい夜に1時間程度読み書きと計算をみんなに教えることにした。この世界では読み書きと計算ができるものは少ないようだし、身につけておいて損にはならないと思う。2人ができるようになればアルゼさんの仕事も少しは楽になるしな。と、そこまではよかったのだがなぜかマイルとサリアの他にも参加者がいた。

「……なんでシェアル師匠もいらっしゃるんですか?」

 そう、なぜかここにシェアルさんがいた。仕事は終わったのでメイド姿ではなく、寝巻きとジャージの中間的な服である。メイド服よりも薄い服なので非常にえろ……ではなく目のやり場に困る格好である。

「ええっとですねえ、私も読み書きと計算ができないんですよう。せっかくだからサリアちゃん達と一緒に私も教えてもらいたいなあって思って。もちろんアルゼ様には許可を貰ってますよう」

「そうですか、アルゼ様から許可を貰っているなら大丈夫です。一緒に頑張りましょうね!」

「うん、魔法では私が師匠だけど勉強はユウキくんが先生だね。よろしくお願いします、ユウキ先生!」

 ……ユウキ先生か。お姉さんであるシェアルさんから先生なんて呼ばれるとなんかこうぐっとくるものがある。放課後、教師と女生徒との禁じられた恋、いやあ、なんかそそるシチュエーションだなあ。

「えいっ!」

「痛っ!」

 サリアがいきなりわき腹をグーで殴ってきた。地味に痛い。

「ユウキお兄ちゃん、デレデレしてないで早く勉強しようよ。勉強が終わったらまたいろいろなお話してくれるんでしょう」

「べっ、別にデレデレなんかしてないよ。そうだなそれじゃあ始めようか」

 変なことを考えていたのをサリアに見破られてしまった。いかんいかん時間は有限だ、さっさと始めよう。ちなみに2人からして欲しいといわれた童話は勉強が終わった後にご褒美として話してあげることにした。何事もご褒美があるだけでやる気がでてくるものだからな。

 ちなみにシェアルさんも含めて誰も足し算や引き算すらできなかった。この世界はの教育水準は俺の想像以上に遅れているのかもしれない。
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