異世界魔王召喚〜オッサンが勇者召喚じゃなくて魔王召喚されてしまった件!人族と魔族の間で板挟みになってつらい〜

タジリユウ

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第26話 魔王の威厳

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 ……あれ、おかしいな。俺の想像だと、ここで魔王軍四天王のリーベラが現れた時以上の歓声が上がると思っていたんだけどな。

「……あ、あの、リーベラ様。今魔王様とおっしゃいましたか?」

「うむ! 先日魔王城にて魔王召喚の儀が行われ、こちらの魔王様が召喚されたのだ!」

 リーベラがドヤるが、今イチ周りの反応がよろしくない。ジロジロと俺を訝しげな目で見ていくる。

「どうした? 妾と魔王様が援軍に来たのだぞ、嬉しくはないのか?」

「い、いえ、とんでもございません! ですがそのう……先代の魔王様とは違って、なんというかそれほど大きくもなく、あまりお力を感じられないといいましょうか……」

 ああ、そういうことね。確かにオッサンは今目の前にいる魔族の指揮官と比べれば小柄だし、鎧の禍々しさもそこまでは感じられないのかもしれない。

「貴様、魔王様になんという御無礼を!」

「ひっ!?」

「止めろ、リーベラ。そうだな、確かに我は先代の魔王よりも小柄なのかもしれん」

「ま、魔王様!?」

「だが、貴様も相手を見た目だけで判断するのは愚か者のすることであるぞ」

 魔王威圧スキルオン!

「うおっ!?」

「ぐっ、これはなんという迫力!?」

「こ、これは……!?」

 さすがに魔族陣営の指揮官やその側近だけあって、魔王威圧でも膝をつく者はいなかった。だが、その効果は十分にあったらしい。

「大変失礼いたしました、魔王様! 申し訳ございません。いかなる罰でも謹んでお受けします!」

 魔族陣営の指揮官や他の者も俺に片膝をついて頭を下げたので、魔王威圧スキルを解除する。

 う~ん、頭を下げさせるのって人によっては気持ちよくなるのかもしれないが、オッサンにとっては嬉しくもなんともないな。むしろ不快感しかないぞ。

「よい、みなも面を上げよ。突然現れていきなり魔王として認められるとは我も思ってはいない。だからこそ我がこれからすることをよく見ておくがよい」

 かあああ! この魔王ムーブはオッサンには厳しいぜ……なんかこう、黒歴史を現在進行形で作り続けているみたいだ。

 しかし今後のことを考えても、敵だけではなく味方にも魔王の威厳というものを見せつけてやらなければいけないからな。

「我はでこの戦闘を終わらすとしよう」




――<人族side>――

「……ああん? なんかたったひとりでこっちに来るやつがいるぜ」

「昨日も一昨日も戦闘が始まるのはもうちっと後の時間だろ? 奇襲とか囮だとしてもひとりってのはさすがにおかしいだろ」

「さすがに魔族どももそこまで馬鹿じゃねえよ。だが、戦況の悪いことがようやくわかって、停戦か降参の交渉をしに来た可能性はあるな。一応部隊長に知らせておけよ」

「ち、面倒くせえな」

 遠くにいる魔族陣営からたったひとりでこちらに近付いてくる人影が見える。真っ黒な鎧をきたやつだ。魔族の中には普通の防具ではなく、あいつのような全身を覆うプレートアーマーを着込むやつもいる。

 俺の役割はこの戦場で伝令の役割で、味方陣営の中での上からの指示を伝えたり、反対に下からの戦況を上に伝えたりする。

 戦闘もしないで楽な仕事をしているとか見当外れのことを言うやつもいるが、敵だって情報伝達をする俺達を狙ってくるし、弓矢や魔法が飛び交う戦場を走り回るのだから、そんな簡単な仕事ではない。

 念話のスキルやそういった魔道具なんかもあるらしいが、そんな珍しいスキルや高価な魔道具はもっと上のお偉いさんくらいしか使っていないんだよな。

「伝令! 敵陣営より、鎧を身に纏った魔族がたったひとりでゆっくりと近付いてくるのですがいかがしますか!」

「……たったひとりだと。停戦の交渉か何かか。まあよい、どちらにしろ停戦や降参を受け入れるつもりはない。生かして奴隷にするのは魔族の女どもだけで十分だ。さっさと斬り捨ててしまえ」

「はっ! そのように伝えます!」

 上層部の判断は話す必要もなく斬り捨てることらしい。魔王とかいうヤバいやつが勇者様に討ち取られてからは人族が圧倒的に有利な状況だ。魔族を生かしておく必要もないのだろう。



「おっ、早速だな。てかたったひとり相手に10人も出んのかよ。大人気ねえな」

 先ほどの伝令を戦闘部隊に伝えたところ、早速10人ほどの兵士が鎧の魔族を取り囲んでいる。たまに力自慢の馬鹿な魔族が単身で乗り込んでくることもあるから用心のためだろう。

 何か話をしているようだが、ここからは聞き取れない。可哀想にな、停戦の交渉なんて無駄なのによ。

 バタンッ

「んなっ!?」

 何が起こったのか分からないが、黒い鎧の魔族を取り囲んでいた兵士達が急に倒れた。鎧の魔族が直接何かをしたようには見えなかったから何かの魔法を使ったのかもしれない。

 鎧の男は倒れた兵士達にとどめを刺すそぶりも見せず、そのまま先ほどと同じようにゆっくりと歩みを再開する。

「おいおい、何が起きたんだよ?」

「わからねえ。魔法かなにかか?」

 俺と同じようにあの鎧の魔族が何をしたかわからないやつばかりだ。

「おっ、次のやつらが出たぜ」

 先に出た兵士達が倒れたことにより、今度は別動隊が出てきた。

「なんだありゃ! 弓矢も魔法も届いてねえぞ! あっ、また何もないのに倒れたぞ!」

 今度はこちらの兵士が遠距離からも弓矢と魔法を放っていたようだが、なぜか鎧の魔族の前で見えない壁のようなものに阻まれてしまっている。

 そして先ほどと同様に手を出してもいないのにこちらの兵士が次々と倒れていく。

 いったい何が起こっているんだ……
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◆  ◇    ◆    ◇    ◆   ◇    ◆
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◆  ◇    ◆    ◇    ◆   ◇    ◆

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