異世界魔王召喚〜オッサンが勇者召喚じゃなくて魔王召喚されてしまった件!人族と魔族の間で板挟みになってつらい〜

タジリユウ

文字の大きさ
上 下
17 / 54

第17話 戦争の理由

しおりを挟む

 人族の冒険者であるマルコ達にこの疑問をぶつけたところ、彼らは知らないと答えた。だが、魔王軍四天王で一番の知識を持つというデブラーなら、この答えを知っているに違いない。

「そういえばそちらをまだ説明しておりませんでしたな。300年前の戦争の発端となったのはによるものです」

「人族の裏切りか……」

「とはいえ、その頃は我もまだ今の魔王軍四天王という立場ではなく、一介のアンデッドでございました。ですので、この話は実際に我が見たものではなく、当時の者から聞いた話となります」

「………………」

 完全に骸骨だからもしやと思ったが、このデブラーとやら、300年以上昔から生きているらしい。ファンタジーの世界すげえな……

「当時人族と魔族の領地の境にウォルテアという国がありました。その国は小さいながらも人族と魔族が共存して平和に暮らしていたのです」

 確か戦争が起こる前は人族と魔族が共存していたと言っていたな。

「ですがある日、何の前触れもなく、突然その国に人族の軍隊が攻め入ってきたのです。そしてその国にいた魔族が皆殺しにされました。もちろん魔族も抵抗したようですが、突然の奇襲とその国にいた人族も襲ってきた軍隊に味方したようで、なす術はなかったようです」

「………………」

「当時の魔族達はその裏切りに当然怒り、人族の国や街を攻め始め、それに対して人族も応戦を始めましたこれが300年前より始まった戦争の起源となります」

 人族の裏切りか……

 たとえ始まりが人族の裏切りであったとしても、今となってはもはやこの長く続いている戦争を止める理由にはできなそうだ。もっとシンプルに魔族の宝を奪われたとかだったら、ある程度は解決する手立てもあったかもしれないのにな。

「……事情はある程度分かった。いくつか条件を吞むならば、協力しようと思う」

「本当ですか、魔王様!」

「どのような条件でしょうか!」

「それはだな……」

 俺が考えた魔族に協力する条件はいくつかある。

 ひとつ、俺が元の世界に帰還するために必要な魔鋼結晶を無理のない範囲で集めること。今すぐ元の世界に帰りたいということではないし、ルトラ達のこともあるが、一応は元の世界に帰還するための準備だけはしておきたい。

 ひとつ、できる限り人族を害さないようにすること。異世界とはいえ、相手にするのは俺と同じ人族だ。できる限り直接的な争いはしたくない。当然俺は本当に自分の身が危なくなった時以外、人を殺す気はない。

 ひとつ、この戦争の落としどころについては停戦協定を目指すこと。これだけ長く続いてきた戦争だ。たとえ俺が魔王の力を見せたところで、そう簡単に人族が降伏したり、この戦争をやめようとすることはないだろう。とりあえずは一度この戦争を止めることを目標とする。

 意外にもこれらの条件をリーベラもデブラーも吞むらしい。ひとつめはともかく、2つ目と3つ目の条件についてはなんらかの譲歩を要求されると思っていた。

 本音はどうか分からないが、その条件を呑んでもいいくらいに現在魔族は追いつめられているようだ。

「ですが魔王様ひとつだけ問題がございます」

「なんだ、リーベラ?」

「妾達2人は問題ないのですが、おそらく同じ魔王軍四天王であるジルべとルガロのやつは反対するでしょう……」

「我もそう思います。特にジルべは一族全員を人族に滅ぼされたため、人族に対する憎悪は普通の魔族以上です。人族を根絶やしにするまで、戦い続けようとするでしょうな」

 ジルべ……確か銀色の美しい毛並みをした大きなオオカミ人間だったな。真っ先に俺を襲ってきたやつだ。

 詳しい話を聞くとジルべの一族は銀狼と呼ばれ、その美しい毛皮は人族の貴族や権力者に人気があり、人族と魔族の戦争が始まってすぐに銀狼の一族は人族に狙われたようだ。

 今ではジルべ以外の銀狼はすべて滅んでしまったらしい。それを聞くと確かに人族は残虐な性格をしていると言われても返す言葉がない……

「もうひとりのルガロのほうは?」

 俺に向かって炎の魔法を撃ってきたやつだな。アレクと同じ青い肌をしていたが、あいつはそれに加えて頭から2本の角が生えていた。個人的には外見だけでいうと、彼が一番魔族らしいイメージだ。

「ルガロも一族とまではいきませんが、両親を人族に殺されております。やつも人族に復讐を考えておりますので、魔王様の条件には賛成しないでしょう」

「なるほどな……」

 アレクと同じで人族に強い恨みを抱いているか……確かにそんな状況で人族を殺さないなんて俺の甘い考えに従うとは思えない。

 というより、そもそも人族の俺を魔王として認めさせることすら難しいだろう。

「……お前達2人はどうなんだ? やはり家族や親しい人達を人族に奪われたりしたのか?」

「我の場合はそもそも家族すらおりませんでしたからな。同族は殺されてはおりますが、それはお互いさまです」

「妾は父親を人族に殺されましたが、戦争ですのでそれも仕方のないことかと……それよりも今はこれ以上魔族が虐げられないようにするほうが先決です!」

 魔族でもそれぞれいろんな考え方があるようだ。
しおりを挟む
下記作品は現在書籍化進行中です!(o^^o)
◆  ◇    ◆    ◇    ◆   ◇    ◆
異世界でキャンプ場を作って全力でスローライフを執行する……予定!
◆  ◇    ◆    ◇    ◆   ◇    ◆

感想 7

あなたにおすすめの小説

スローライフとは何なのか? のんびり建国記

久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。 ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。 だけどまあ、そんな事は夢の夢。 現実は、そんな考えを許してくれなかった。 三日と置かず、騒動は降ってくる。 基本は、いちゃこらファンタジーの予定。 そんな感じで、進みます。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...