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第81話 新潟県② へぎそば、佐渡島、佐渡金山

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「確かこれはそばじゃったかのう?」

「うん、今回は正解だよ」

 さすがにイタリアンは分からなくて当然だけれど、今回のそばは正解だ。イタリアンはそこまで量がなかったから、今日は晩御飯までの間にもう一食そばを食べる。

 しかしこのそばはただのそばではなく、緑色をした新潟名物のへぎそばというものだ。どうしてこんな緑色をしているかというと、そばのつなぎに布海苔ふのりという海藻を使っているからだ。

 もともとは織物づくりの際の糊付けに使用していたらしいので、それをつなぎにすることで、ツルツルとした喉越しで強い歯ごたえが特徴的なそばになっている。

「この器がへぎっていう名前なんだ」

 へぎそばの由来となったへぎは木を剥いだ板でできた器、木を剥ぐのはぐがなまってへぐ、そこからへぎと変化していったようだな。このへぎの器に盛られたそばをへぎそばというわけだ。

「盛り方もとても美しいですね。この盛り方を見ているだけでおいしそうに見えてしまいます」

「これもへぎそばの特徴のひとつだよ。昔は織物が盛んだったから、糸を紡いだ形に見立てているらしいね」

 手振りや手繰りと呼ばれる方法で、一口大にまとめられたそばがへぎの上に綺麗に並んでいる。まるで美しい緑色の糸が並べられているようにも見える。

「ほお、以前食べたそばとはだいぶ味が違うのじゃな! こっちの方が歯ごたえがあるのじゃ!」

「ええ、食感がとても良いですね」

「地域によって同じそばでも味が違うのは面白いよね」

 この前食べた出雲そばとも戸隠そばとも違う味と食感だ。日本を旅するとこういった地域による味の違いを楽しめるから面白いのである。



「やっぱりこのフェリーという乗り物は気持ちがいいのう」

「潮風が気持ちいいですからね」

「食後の休憩がてらにのんびりと船旅も悪くないよね」

 へぎそばを食べたあとは食後の休憩がてらに3人でフェリーに乗って佐渡島へと向かっている。

 転移魔法を使えば一瞬で目的地まで移動できるが、たまにはフェリーの旅もいいだろう。今日はまだ時間があるし、のんびりと新潟港から佐渡島の両津港まで目指すとしよう。



「ほう、真っ白で顔が赤くくちばしの長い綺麗な鳥じゃな」

「これはトキといって、この世界でも日本と中国にしかもういない鳥なんだ」

「なるほど、珍しい鳥なのじゃな!」

 佐渡島へ到着し、早速トキの森公園へとやってきた。ここには国の特別記念物のトキがいる。昔は東アジアの地域一帯で生息していたトキだが、乱獲と生活環境の悪化により、その種の絶滅が危惧されていた。

 日本でも特別記念物に指定され保護や人工繁殖などを試みたが、努力の甲斐も空しく、日本国内のトキは絶滅してしまった。その後、中国より贈呈されたペアの人工繁殖が成功し、現在では多少の個体数が増えていったようだ。

 なぜ佐渡島なのかというと、トキが生息する場所である昔ながらの棚田が残っており、冬も湧水のたまり場があったためと言われている。

「この時の森公園だと飼育ゲージが見られたり、トキの資料が展示されているんだよ」

 日本の歴史を学ぶ上でも、絶滅動物がなぜ絶滅したかを学び、今後に役立てていくことは大事だよな。



「……これは思ったよりも重いですね」

「このサイズで12キロあるらしいけれど、見た目よりも全然重いよね」

 そして佐渡島と言えば金、金、金である! かねじゃなくてきんの方だ。

 続けて佐渡島の佐渡金山へとやってきている。佐渡金山は1601年に開山され、1989年に閉山されるまで400年近くの歴史を誇っている日本最大の金銀山だ。全盛期には世界でも最大級で最高品質の金を生産した類まれな鉱山だった。

 もちろん今では金銀を掘ったりはしておらず、資料館となっている。そしてこの資料館の一番の目玉がこのインゴットチャレンジだ。制限時間内にショーケースへ入った金塊を取り出すというゲームができるのだが、レプリカなどではなく本物の金塊らしい。

「それにしてもこれで約1億円ですか……」

 その重さは12キロでお金にすると約1億円だ。最近では金の価値が上がっているから、1億円以上になっているかもしれない。もちろん成功してもショーケースの中に返さなければならないが、実際に1億円相当の金塊に触れられる機会なんてここ以外にはないだろう。

 当然監視カメラがあり、警備員もいるので、変な考えは起こしたら絶対に駄目だぞ。

 まあ、肝心のミルネさんはそこまで金に興味がなさそうだったけれどな。異世界でも金は存在するようで、お姫様のミルネさんはこれくらいの金を見たことがあるそうだ。

「他にもここで実際に使われていた金山を掘る道具やトロッコなんかを見学することができるよ」

 昔は現代の機会なんてないから、ツルハシなんかを使って金を掘っていたんだろうな。もちろん事故なんかも多かっただろう……



 佐渡島から戻ってきて、晩ご飯は新潟県の海鮮料理だ。新潟は海に面しているので、のどぐろやズワイガニなんかの海鮮がとても有名である。当然お値段もそこそこするので、今回のような機会に楽しむとしよう。

 そして新潟と言えばコシヒカリの米が有名だ。米が有名ということは米を原料とした日本酒も有名。今日の夜に飲むのは日本酒に決まりだな。
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