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第50話 熊本県② 熊本城、人吉、熊本ラーメン

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「だいぶ立派な黒いお城じゃな」

「熊本城は日本三名城のひとつだからな。石垣は武者返しと呼ばれる侵入が難しい造りになったりしていて、難攻不落の城として有名だったらしいよ」

 黒い城は基本的には黒漆を塗って耐久性を高めているが、この熊本城ほど立派な城はそこまで多くない。

「な、なんじゃあれは!? 魔物か?」

「ああ、あれは着ぐるみを着ているだけだよ」

 ミルネさんが指をさしているのは某有名ゆるキャラだ。そういえば着ぐるみを見るのは初めてか。

「着ぐるみか……この世界には面白い生物もいるのじゃな……」

「……いや、そういうことじゃなくて、クマという動物を可愛く作った服を着ている感じだね」

 さすがにくまモンが実在していたらちょっと怖かったりする……一応クマだしな。

 そう、熊本城で一番有名なゆるキャラのくまモンである。熊本城ではくまモンのショーなんかが定期的に行われている。

「子供たちにも結構人気がありますよね」

「ゆるキャラの中では有名だからね。頼めば握手してくれたりするよ」

「……さすがに不要なのじゃ」

 あんまり有名キャラと握手しても喜ばない感じかな。某有名ランドのネズミのマスコットならどうなのかはちょっと気になったりする。

 熊本城の本丸の様子や当時の食事を再現したもの、美しい金色の屏風なんかを見て楽しんだ。

「ほう、温かくて甘くてモチモチしておいしいのじゃ!」

「さつまいもとあんこが優しい甘さですね」

「熊本県の郷土菓子のいきなり団子だよ。いきなりというのは熊本の方言で簡単とか直接とかの意味なんだ。いきなりお客さんが来ても、すぐにもてなせるという意味とサツマイモを直接生地で包んで蒸す簡単に作れる団子って意味らしいね」

 いきなり団子は輪切りにしたさつまいもをあんこと一緒に小麦粉の生地で包んで蒸して作った熊本の郷土お菓子だ。このあたりの畑は火山灰の影響もあってさつまいもの栽培が盛んでたる。

 そのため、このあたりの農家でのおやつとして昔からあるらしい。冷えたまま食べてももちろんおいしいが、温めて食べたほうがおいしく食べられる。

 さつまいもの優しい甘さとあんこの甘さがちょうどいい具合なんだよな。熊本城の付近でもたくさんの有名なお店があるぞ。



「このあたりはのどかですね」

「人吉はいろんなものが有名だけれど、街並みは本当にのどかだからね」

 人吉は某有名少女コミックの聖地で、街や駅などのあちこちに聖地巡礼ノートや作者さんのサインなんかもあったりする。

 アニメでも使われていた棚田や大きな橋などはそれを知らない人でも楽しめる。本当にのどかな場所でもある。

「この球磨川は川下りやゴムボートで川を下るラフティングなんかも有名だね。それに温泉や城跡、鍾乳洞なんかもあるんだよ」

 人吉はのどかな地域だが、観光する場所や球磨川でのアクティビティなんかもある。

 そしてSL鉄道の街でもあって、熊本から人吉を繋ぐ観光SL列車なんかもあったり、おかどめ幸福駅というパワースポットなどもある。のんびりとした景色を眺めながらの鉄道旅なんてのも悪くないな。

 ただ残念なことに人吉SLは2024年にその幕を閉じるようだ。整備が難しくなったそうだが、なんとも寂しいことである。



「これはおいしそうですね」

「しかしどのラーメンもそれぞれが特徴的なのじゃな」

 そして晩ご飯は熊本ラーメンである。

 博多ラーメンとは異なり、豚骨の匂いは少なく、麺は少し太めの麺を使っている。そして揚げニンニクや黒マー油を入れた濃厚なスープが特徴で、生卵の黄身が入っているお店もある。このお店なんかは黄身が2つも入っているからな。

「濃厚なスープが麺と絡みあっておいしいですね。ラーメンは本当にそれぞれの地域の特徴もあって面白いですよね」

「福岡から熊本まで南に来ただけでラーメンの味なんかは全然違うからね。麺もスープも全然違うでしょ」

 個人的にはニンニクなんかも大好物なので、揚げニンニクや黒マー油を使用した濃厚な味わいのスープなんかは最高である。

 まあ、夜ということもあって、ミルネさんも喜屋武さんもおいしそうにラーメンをすすっている。



「さて、今日の夜は当然熊本の焼酎だ」

 熊本の有名な黒川温泉で一日の疲れを取って、喜屋武さんと明日の予定の打ち合わせを終えれば、今日のお酒タイムである。

「やはり九州と言えば焼酎のイメージが強いですよね」

「確かに。九州は特に芋焼酎の原料となるさつまいもの栽培が盛んだからね。しかも今回は芋焼酎だけじゃなくて、球磨川の綺麗な水を使って作った米焼酎なんかもあるよ」

 焼酎の産地もいろいろとあるが、ここ九州は特に多い。そして球磨焼酎という米焼酎も有名である。そもそも米を使った焼酎自体が芋や麦に比べると少し珍しい。

「それに今日はいろいろなおつまみもあるのですね」

「焼酎やお酒が多いということは当然そのつまみもあるということだよ」

 今日のおつまみは辛子蓮根に馬刺しに馬肉の煮込みである。

 からし蓮根は熊本の郷土料理で、蓮根の穴に辛子を混ぜた味噌を詰めて、卵黄を混ぜた小麦粉の衣をつけて揚げた料理だ。蓮根のシャキシャキとした食感と辛子の辛さがクセになる味だ。

「……ツーンときますがとてもおいしいですね。それにこの焼酎とよく合います」

「馬肉にもよく合うよね。普段焼酎はあんまり飲まないけれど、やっぱり九州に来たらついつい飲んじゃうよ」

「米から作った焼酎だと香りが違いますね。少し九州に住みたくなってきました……」

 まあ喜屋武さんの気持ちも分からんでもない。九州っておいしいご飯やお酒が多いから、酒飲みにとっては天国なんだよな。酒に強い人が多いのも納得である。
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