48 / 87
第48話 大分県② 慈恩の滝、九重夢大橋、りゅうきゅう丼
しおりを挟む「滝を裏側から見られるとは面白いのう」
「水しぶきがここまで飛んできますね」
ここ慈恩の滝は上段20mと下段10mに分かれた2段の滝になっており、滝の裏側を見て回れる遊歩道が整備されている。
「裏側から見ることができる滝を裏見の滝っていうんだ。時計回りに回ると幸せを呼ぶと言われているらしいよ」
昔は夜にライトアップもされていたらしい。夜の滝とかすごい綺麗そうだよね。他にも大蛇伝説なんかも残されているらしい。
日本にもいろいろな有名な滝があるが、裏から滝を見られる場所は限られている。
「先ほどの温泉もそうですが、日本の自然というのもなかなかすごいですよね」
「そうだね。今ならある程度は科学的に解明されているけれど、昔の人はだいぶ不思議だっただろうね」
「こ、これはさすがに怖いのじゃ……」
「さすがに私も怖いですね……」
「これを怖くないって言う人はさすがにいないと思うよ」
当然俺も怖かったりする……
ここは九重”夢”大吊橋、大分県が誇る日本一の高さの歩行者専用吊り橋である。標高777mの橋の上からは震動の滝をはじめ、鳴子川渓谷が一望できる。
長さは390mで、高さはなんと173mもある。173mがピンとこない人も多くいるだろうが、東京タワーの展望台が150m、50階建ての高層ビルと同じくらいの高さと言えば、それがどれくらいの高さかわかるというものだ。
そんな遥かな上空に吊られている橋を歩いていくのだ。はっきり言って、クソ怖い……
「紅葉の季節とかだと、さらに綺麗な景色が一望できるらしいんだけどね」
「景色を楽しむ余裕なんてないのじゃ……」
まあそうなるよね。高い場所が苦手な人だときつい場所だ。さすがに無理はさせずに移動するとしよう。
俺は多少慣れてきて、周りの景色を楽しむ余裕がある。ここまで来ないと見られない景色というものもあるからな。高い場所が怖くない人はここでしか体験できないのでお勧めではあるぞ。
「そんなわけで本日の晩ご飯はりゅうきゅう丼だよ」
「りゅうきゅう……沖縄が関係しているのですか?」
「そのあたりは諸説あるらしいね。調理法が琉球の漁師から伝えられたっていう説もあるし、胡麻和えにする利休和えからこう呼ばれる説もあるらしいよ」
昔の沖縄は琉球と呼ばれていたので、沖縄から来た漁師が伝えたという説もある。
瀬戸内海に面し、豊富な魚介類に恵まれている大分県では様々な魚介が水揚げされている。漁師がその地元で採れた新鮮な魚を一口大に切って醤油、酒、砂糖を合わせたタレに漬けて丼にして食べた海の男のまかない料理として食べられていたようだ。
「ほう、この魚もうまいのじゃ!」
「これは関アジといって、大分では有名な魚なんだよ」
関アジは普通のマアジだが、豊予海峡で水揚げされた一種のブランド魚になる。エサが豊富な海で育った関アジは普通のマアジよりも大きく、脂がたっぷりとのっているのが特徴である。
この店のりゅうきゅう丼はその関アジをタレに漬けて、酢飯の上にこの関アジを乗せ、さらにゴマやネギをたっぷりの乗せた丼料理だ。
「ご飯と関アジとタレと薬味が一体となって本当においしいですね」
「普通のアジよりも脂が乗っていておいしいよね。味だけじゃなくて関サバなんてものもあるよ」
関サバも関アジと同様にこの辺りで獲ったマサバのことを関サバと呼ぶ。一ヶ所で関サバと関アジの両方が楽しめるなんて羨ましい限りである。
「タケミツ様、入りますよ」
「はい、どうぞ」
そのあとは温泉で有名な湯布院の温泉を楽しんだあとはいつも通り喜屋武さんとの打ち合わせだ。いつも通り明日の予定の打ち合わせを終えた。
「……はい、これで問題ないでしょう。明日もよろしくお願いします」
「なんだかんだでもう20以上の県を回ってきたから、あと半分ちょっとかあ」
「初めはどうなることかと思いましたが、今のところミルネ様もだいぶ楽しんでいられるようでなによりです」
「俺も最近仕事の感じはしなくなってきたな。純粋に旅を楽しんでいるみたいだよ」
最初は仕事のイメージが強かったミルネさんの案内だが、最近では俺自身が普通に旅を楽しんでいる。行ったことがあるとはいえ、同じ場所をもう一度訪れるのも楽しいものである。
さらに今回はお金の心配もしなくていいし、移動の手段も考えなくていいから最高なんだよな! 実際にこの湯布院に来るのも、山に囲まれているから自転車だとかなり苦労したからな。まさに強くてニューゲーム状態だ。
「そうですね、私もだいぶ楽しめるようになりました。今日みたいに温泉宿に泊まれる日は特に素晴らしいですね」
「九州は温泉も多いからね。それと当然お酒も楽しめるからね!」
そう、九州は水がとても綺麗なので、日本酒や焼酎などが有名なのだ。麦焼酎、芋焼酎、そば焼酎、米焼酎など、焼酎にも様々な種類がある。特に酒精の強い酒が好きな人には天国だぞ。
「地元の日本酒や焼酎を飲めるのは今回の特権だよね。あとつまみは関サバの刺身と大分の郷土料理のやせうまだよ」
「関サバは分かるのですが、やせうまとは?」
「平たいうどんを細かく切って砂糖ときなこをまぶしたお菓子だね」
個人的には酒と甘い菓子を合わせるのも好きなんだよね。それに関サバは間違いなく酒にある。
「素朴な味ですがおいしいですね。こちらの日本酒も焼酎もおいしいです」
その土地の酒を楽しむのも旅の醍醐味である。
そして酒を飲みすぎて酔った喜屋武さんの上司への愚痴を聞くことになった。まあ九州の酒って強い酒が多いから仕方ないよね。
相変わらず上司にはまだまだ不満があるようだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
228
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる