48 / 112
第48話 大分県② 慈恩の滝、九重夢大橋、りゅうきゅう丼
しおりを挟む「滝を裏側から見られるとは面白いのう」
「水しぶきがここまで飛んできますね」
ここ慈恩の滝は上段20mと下段10mに分かれた2段の滝になっており、滝の裏側を見て回れる遊歩道が整備されている。
「裏側から見ることができる滝を裏見の滝っていうんだ。時計回りに回ると幸せを呼ぶと言われているらしいよ」
昔は夜にライトアップもされていたらしい。夜の滝とかすごい綺麗そうだよね。他にも大蛇伝説なんかも残されているらしい。
日本にもいろいろな有名な滝があるが、裏から滝を見られる場所は限られている。
「先ほどの温泉もそうですが、日本の自然というのもなかなかすごいですよね」
「そうだね。今ならある程度は科学的に解明されているけれど、昔の人はだいぶ不思議だっただろうね」
「こ、これはさすがに怖いのじゃ……」
「さすがに私も怖いですね……」
「これを怖くないって言う人はさすがにいないと思うよ」
当然俺も怖かったりする……
ここは九重”夢”大吊橋、大分県が誇る日本一の高さの歩行者専用吊り橋である。標高777mの橋の上からは震動の滝をはじめ、鳴子川渓谷が一望できる。
長さは390mで、高さはなんと173mもある。173mがピンとこない人も多くいるだろうが、東京タワーの展望台が150m、50階建ての高層ビルと同じくらいの高さと言えば、それがどれくらいの高さかわかるというものだ。
そんな遥かな上空に吊られている橋を歩いていくのだ。はっきり言って、クソ怖い……
「紅葉の季節とかだと、さらに綺麗な景色が一望できるらしいんだけどね」
「景色を楽しむ余裕なんてないのじゃ……」
まあそうなるよね。高い場所が苦手な人だときつい場所だ。さすがに無理はさせずに移動するとしよう。
俺は多少慣れてきて、周りの景色を楽しむ余裕がある。ここまで来ないと見られない景色というものもあるからな。高い場所が怖くない人はここでしか体験できないのでお勧めではあるぞ。
「そんなわけで本日の晩ご飯はりゅうきゅう丼だよ」
「りゅうきゅう……沖縄が関係しているのですか?」
「そのあたりは諸説あるらしいね。調理法が琉球の漁師から伝えられたっていう説もあるし、胡麻和えにする利休和えからこう呼ばれる説もあるらしいよ」
昔の沖縄は琉球と呼ばれていたので、沖縄から来た漁師が伝えたという説もある。
瀬戸内海に面し、豊富な魚介類に恵まれている大分県では様々な魚介が水揚げされている。漁師がその地元で採れた新鮮な魚を一口大に切って醤油、酒、砂糖を合わせたタレに漬けて丼にして食べた海の男のまかない料理として食べられていたようだ。
「ほう、この魚もうまいのじゃ!」
「これは関アジといって、大分では有名な魚なんだよ」
関アジは普通のマアジだが、豊予海峡で水揚げされた一種のブランド魚になる。エサが豊富な海で育った関アジは普通のマアジよりも大きく、脂がたっぷりとのっているのが特徴である。
この店のりゅうきゅう丼はその関アジをタレに漬けて、酢飯の上にこの関アジを乗せ、さらにゴマやネギをたっぷりの乗せた丼料理だ。
「ご飯と関アジとタレと薬味が一体となって本当においしいですね」
「普通のアジよりも脂が乗っていておいしいよね。味だけじゃなくて関サバなんてものもあるよ」
関サバも関アジと同様にこの辺りで獲ったマサバのことを関サバと呼ぶ。一ヶ所で関サバと関アジの両方が楽しめるなんて羨ましい限りである。
「タケミツ様、入りますよ」
「はい、どうぞ」
そのあとは温泉で有名な湯布院の温泉を楽しんだあとはいつも通り喜屋武さんとの打ち合わせだ。いつも通り明日の予定の打ち合わせを終えた。
「……はい、これで問題ないでしょう。明日もよろしくお願いします」
「なんだかんだでもう20以上の県を回ってきたから、あと半分ちょっとかあ」
「初めはどうなることかと思いましたが、今のところミルネ様もだいぶ楽しんでいられるようでなによりです」
「俺も最近仕事の感じはしなくなってきたな。純粋に旅を楽しんでいるみたいだよ」
最初は仕事のイメージが強かったミルネさんの案内だが、最近では俺自身が普通に旅を楽しんでいる。行ったことがあるとはいえ、同じ場所をもう一度訪れるのも楽しいものである。
さらに今回はお金の心配もしなくていいし、移動の手段も考えなくていいから最高なんだよな! 実際にこの湯布院に来るのも、山に囲まれているから自転車だとかなり苦労したからな。まさに強くてニューゲーム状態だ。
「そうですね、私もだいぶ楽しめるようになりました。今日みたいに温泉宿に泊まれる日は特に素晴らしいですね」
「九州は温泉も多いからね。それと当然お酒も楽しめるからね!」
そう、九州は水がとても綺麗なので、日本酒や焼酎などが有名なのだ。麦焼酎、芋焼酎、そば焼酎、米焼酎など、焼酎にも様々な種類がある。特に酒精の強い酒が好きな人には天国だぞ。
「地元の日本酒や焼酎を飲めるのは今回の特権だよね。あとつまみは関サバの刺身と大分の郷土料理のやせうまだよ」
「関サバは分かるのですが、やせうまとは?」
「平たいうどんを細かく切って砂糖ときなこをまぶしたお菓子だね」
個人的には酒と甘い菓子を合わせるのも好きなんだよね。それに関サバは間違いなく酒にある。
「素朴な味ですがおいしいですね。こちらの日本酒も焼酎もおいしいです」
その土地の酒を楽しむのも旅の醍醐味である。
そして酒を飲みすぎて酔った喜屋武さんの上司への愚痴を聞くことになった。まあ九州の酒って強い酒が多いから仕方ないよね。
相変わらず上司にはまだまだ不満があるようだ。
10
第4回ファンタジーカップ現在第3位!(o^^o)
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
お気に入りに追加
238
あなたにおすすめの小説
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる