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第162話 最強の証明

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「GAAAAAAAAA!」

 アンデを魔法無効化の範囲内に入れないように、天災の巨躯で目隠しをしつつ、極大魔法を使用する。

 極大魔法によってできた巨大な水の竜。水によってできた牙や爪だが、その身体は実体を持ってあらゆるものを切り裂き、飲み込んだものすべてを取り込み、溺死させる強大な魔法だ。下手をすれば、街一つくらい簡単に壊滅させることが可能な魔法でもある。

「……ふむ、仮に転移魔法でこれを避けたとしても、この水竜は我をひたすら追ってくる。これを防ぐには、先程と同じように我の極大魔法で相殺するか、マジックイレイザーで消滅させるかか……

 なるほど、確かにマジックイレイザーで極大魔法を消滅できるかは試したことがない。我のマジックイレイザーと貴様の極大魔法のどちらが勝つかという賭けというわけだな。いいだろう、その誘いにあえて乗ってやる!」

 アンデは俺の極大魔法を自らが作り出したというマジックイレイザーで対抗するつもりだ。

 俺のほうの魔力はもう限界に近い。これほどの短時間に極大魔法を2回と中級、上級魔法を何十発も撃っている。大魔導士の家にあった様々なチートな魔道具を使っていても、しばらく休まなければもう極大魔法は撃つことができない。

 アンデのほうも極大魔法を1回に中級、上級魔法は俺以上に撃っていた。にもかかわらず、まだ余力を残しているように見える。ここで決めなければもう俺に勝機はない!

「GAAAAAAAAA!」

「くるがよい!」

 巨大な水竜がいよいよアンデへと迫る。





――――――――――――――――――――――――

 極大魔法による巨大な水竜が迫ってくる。

 だが慌てる必要はない。我が組み立てた魔法の理論は完璧だ。たとえ極大魔法が相手であったとしても、魔法でさえあれば、そのすべてを消滅させることができるはずである。

 師匠が天災と戦った時の経験をもとに組み立てた理論を引き継ぎ、我が完成させた我だけの魔法。本当は完成したところを師匠にも見てもらいたかったのだがな。

 ……それにしても師匠はすでに亡くなっていたか。師匠ほどの実力があれば、ハイエルフである我の血肉をもとに研究をして、己の寿命を延ばすことなど造作もないことであっただろうに。

 だが師匠は頑なにそれをしようとはしなかった。口では、俺は人としての寿命にこだわりたいんだ、と言ってはいたが、おそらく半分ほどは我に気遣っておったのだろうな。

 ……まったく、当時魔法もまともに使えないハイエルフのガキであった我など、多少切り刻んで研究の素材にされても文句は言えんというのに。

 だからといって、俺は人としての生を謳歌すると、毎日女を連れ込むのだけはやめてほしかったぞ、あのバカ師匠が……

 ベッドやシーツの後始末をする我の身にもなってほしいくらいだ。貴族や王族のような身分の高い者から、街で引っ掛けたという冒険者や町娘など誰かれ構わずであったな。

 少なくとも人妻や恋人がいる相手にまで手を出すのは本気でやめてくれと何度も言ったものだ。何度かそのとばっちりで我まで殺されかけたのだぞ!

 ……いかんな、師匠の弟子であるこのマサヨシという者と戦っていると、嫌でも師匠との懐かしい思い出が溢れてくる。

 世界最強になって我を馬鹿にしていた者達を見返すなど、どうでもいいことであったのにな。本当は師匠と同じくらい強くなって、師匠と共に並んで歩ける男になりたいだけであった。

 我は才能がなく、すべてを鍛錬に費やしてもこれだけの年月がかかってしまった。強き者や強き魔物などと戦っていれば、師匠の行方を掴めるとも思っていた。師匠はすでに亡くなっていると聞いた時は残念であったが、まさかこんなところで師匠の弟子と出会うことになるとは思わなかったぞ。

 本当に楽しい戦いであった。あの天災の死骸には、さすがに肝を冷やしたぞ。まさかすべての魔法使いに天敵であったあの天災が倒される日が来るとはな。我もいろいろと策を考えていたが、倒せるかどうかは怪しいところであった。しかもそれを倒したのが、我と同じ師匠の弟子である者とは、まさに運命であるな。

 マサヨシには言わずにいたが、このまま我が勝ったとしても、マサヨシが助けたいという王族の者の処刑は防がせてもらうとしよう。数え切れないほどの師匠の子孫がいたとしても、それを見捨てる道理にはならんからな。

 だから安心して我に敗れるがよい。我の魔力も残り半分を切っておるが、おそらくマサヨシのほうはもう限界であろう。……いや、むしろ人族の者がハイエルフの我に近い魔力を持っていることを賞賛すべきか。

 この極大魔法を消して我の勝ちだ!



「GAAAAAAAAA!」

 巨大な水竜が我の近くまで迫る。

「……ぬっ!」

 やはり先程までの上級魔法や障壁魔法を消滅させた時よりも激しい抵抗を感じる。だが問題ない、すべて力でねじ伏せてやる!

 フッ

 手応えがあった。マサヨシが放った巨大な水竜が頭から消滅していく。

 これで我の勝ちだ! 我こそが世界最強だ!

「ん?」

 水竜が消滅したと同時に何やらいくつか我のほうに向かって飛んでくる物体があった。

 なんだ、マサヨシが投げてきた物か? 速度もないし、武器でもないから攻撃目的ではないのか? マジックイレイザーの範囲内に入っても消せないということは、魔法による攻撃ではない。なぜそんなものを投げてきた?

 バアアアアアアアァン!!

「がああああああああ!!」

 なにが起きた!?

  
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