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第137話 ビーチボールと海の家
しおりを挟む「2人ともよく似合っている水着で可愛いよ」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
……さすが茂木さん、多分俺達全員が思っていたであろうことをあっさりと口にする。やっぱりこの人は女の子と喋り慣れているようだ。
「あれ、茂木さん。脇腹のところ怪我しています? 大丈夫ですか?」
「ああ、これは昨日兄貴と一緒に暴れた時の……」
「おっと茂木さん、大丈夫ですか!?」
「痛っ!?」
みんなの視線が集まっている茂木さんの青あざになっている脇腹を目掛けて、持っていた荷物を投げつける。
「すみません、荷物がふっ飛んじゃいました。大丈夫でしたか?」
「は、はい、大丈夫っす」
「……茂木さん、昨日のことは秘密って言ったばかりでしょう」
「……あ、そうっした。忘れてました」
昨日のことは秘密にしようと昨日言ったばかりだったのに。本当に昨日ちょっとでも格好いいと思った気持ちを返してほしい。
「昨日はすみませんでした。練習の時に脇腹に当たっちゃって」
「いえ、もう痛くないんで大丈夫っすよ」
……さっき痛いって言ったばかりなのに。さすがに昨日チンピラ達とバトルをしてきたとは誰も思っていないとは思うけど。
みんな少しだけ訝しげな表情を見せたが、そのあたりは普段の信用があるため、特に変な疑われ方はしなかった。
さて、合流したはいいがこれからどうしよう……。女の子と一緒に海に来た経験なんてないからどうしていいかわからない。安倍や渡辺も俺と同じでどうしたらいいかわからない顔をしている。
そうだ、とりあえず荷物をどこかに置いておかないと。しまった、レジャーシートとかを持ってくればよかったな!
「兄貴、そこの海の家でパラソルとシートを借りてきました。あとビーチボールも借りてきたんで、あとでバレーでもしましょうよ」
「おお、いいですね!」
何度も海に来たことがあるのか、茂木さんは慣れた様子でパラソルやビーチボールを借りてきてくれた。
「さあせっかくの海なんで遊びまくりましょう!」
荷物をパラソルの下において海を満喫する。海に入って泳ぎ回り、砂浜でビーチボールで楽しんだ。
特にビーチボールは最高だった。砂浜で激しく動いたりジャンプをすることによって、どことは言わないが、川端さんと佐山さんの身体の一部が揺れるため、ものすごく目の保養となる。
茂木さん、ビーチボールを提案してくれてありがとう! 初めて茂木さんがいてくれて良かったと思ったよ!
お昼は海の家で各自昼食を取る。俺はラーメンとラムネにしてみた。
「ぷはあ~、やっぱり海の家で飲むラムネはうまいよな!」
「こっちのラーメンもうまいぞ。というか海の家で食べる物なら、たとえカップラーメンでもうまく感じる気がする」
子供の頃に海の家で食べたカップラーメンがとても美味しかったのは今でも覚えている。遊び回って疲れ切った身体に、塩分の効いたカップラーメンはとても沁みたな。値段は定価の3倍近いボッタクリ価格だったけどな。
「あとアイスやかき氷も美味しいよね」
「ええ。あっちの店でお洒落なかき氷が売ってたからあとで食べようね!」
「あ、あと焼きそばと焼きとうもろこしも定番だよね」
「そうっすね。暑い夏の海で熱いものを食べるのがいいんすよね」
いいな~とてもリア充しているって感じがする。本当にこのアルバイトに誘ってもらってよかったよ。
「ごめん、ちょっとお手洗いに行ってくるね」
「あ、ゆかり。さっきすごく混んでいたから、もしかしたら外の方が早いかも」
「ありがとう、のぞみ。ちょっと見て混んでたら外に行ってくるね」
「……ゆかり遅いね。ちょっと見てくる」
「確かに。ちょっと外のほうを見てくるよ。もしいなくてもすぐに戻ってくるから」
もしかしたら外に出て迷ってしまったのかもしれない。この海には海の家がいくつもあるからな。どの海の家の看板も似たような物だし、どの海の家か分からなくたってしまったのかも。俺も忘れないようにちゃんと店の名前を覚えておこう。
「……いえ、大丈夫です。ひとりで探しますから」
「大丈夫だって。俺達暇だから」
「そうそう、俺達このあたりが地元だから任せておきなって」
……佐山さんを発見したが、何やら変な男達2人に絡まれていた。う~ん、可愛いければ可愛いで、いろいろと面倒なやつらに絡まれて大変だな。幸いアイドルであることはバレていないようだ。早く何とかしてあげよう。
「佐山さん、こっちこっち」
「立原くん!」
「……チッ、野郎連れか」
「クソッ」
ヤンキーっぽい2人組だが、今の俺ならまったく怖くはない。
「すみません、連れがご迷惑をかけました」
「……チッ、行くぞ」
「ああ」
……すれ違い様に金髪の男の方が肩をぶつけてきて、もうひとりの鼻にピアスをつけた男の方は俺の足を踏んでいった。
少なくとも善意で佐山さんを案内しようとした訳ではなさそうだ。まあ痛くも痒くもないからいいんだけどな。あえて事を大きくする必要もないだろう。
「立原くん、大丈夫!?」
「うん、全然痛くなかったから大丈夫。それよりも佐山さんこそあいつらに何かされなかった?」
俺のことはどうでもいいが、もし佐山さんに何かしていたら、あいつらを校舎裏ならぬ海の家裏に呼び出さなければいけない。
「ううん、私は大丈夫。戻ろうとしたらどこの海の家か分からなくなっちゃって……探していたらあの2人に絡まれちゃったの……」
「佐山さんが無事なら良かったよ。さあ、みんなのところに戻ろう」
「うん。立原くん、ありがとうね!」
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