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第78話 高級マンション?

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 次の日、確かに工場の爆発事故とテロ事件の動画は削除されていた。本当にあの八木という人がこの動画をあげていたということになるな。

 そして放課後、約束の16時に八木さんが車で迎えに来てくれた。車のことには詳しくないのだが、あまり見たことのない車だし、この車はかなり高価な車なのかもしれない。

「そういえば動画が削除されていたのを確認しました。ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ大変申し訳ございませんでした。すぐに他の動画も上がるでしょうけど、そちらもすべて削除させていただきますのでご安心ください」

 おう、そんなことまで可能なのか。

 そして車はうちから少し離れたとてつもなく大きなマンションの地下へと入っていった。というかこんな高級マンションというものが日本に存在していたのか?

 受付やホテルの従業員のような人がいるマンションなんて初めてだよ。というかこんなマンションに住めるこの人の歳はいくつくらいなのだろう?

「八木さんてすごく若そうに見えますけれど、おいくつなんですか?」

「今年でちょうど20歳になったばかりです。妹の風華は12歳で少し歳は離れていますね」

 20歳か、やはり見た目通りかなり若い。にもかかわらずこんな高級マンションに住めるなんてよっぽど八木さんの仕事は儲かるのだろうか。うわっ、エレベーターで最上階のボタンを押しちゃったよ! こんなマンションの最上階の家賃ってものすごく高いんじゃ……

 ガチャッ
 
「ただいま~風華、立原さんを連れてきたよ~!」

 最上階には扉がひとつしかなかった。ということはこの最上階のフロアはすべてがこの人の家なのだろう……セレブ恐るべし!

 すでに造りからして普通のマンションとは違う。なんかもうすべてが広くて大きい! 玄関をこんなに広くする意味があるのかというくらい広い。廊下だけでうちのアパートの一室以上の広さがあるのだが……

 なんて庶民らしいことを考えていたら奥の部屋からひとりの女の子が現れた。黒髪のポニーテールの可愛らしい女の子だ。
 
「は、はじめまして! 八木風華です。助けてくれて本当にありがとうございました!」

 大きく頭を下げてお辞儀をしている。とても礼儀正しい女の子だな。今時の小学生ってみんなこうなのか。

「はじめまして、立原正義です。正直に言って八木さんを助けられたのは本当に運が良かっただけだから、あんまり気にしないでね」

「いえ! あんなに大きい車にぶつかったのに、ほとんど怪我がなかったのは立原さんのおかげってお兄ちゃんから聞いています。あっ、お兄ちゃんとどっちかわからなくなっちゃうから風華って呼んでください!」

 そりゃそうか。たしかお兄さんの名前は守さんだったな。

「よろしくね、風華ちゃん。俺のことは立原でも正義でも好きに呼んでくれていいからね」

「はい! それじゃあ正義お兄さんって呼びますね!」

 お兄さんか、なんだかちょっとだけむず痒い。

 この時点でだいぶ警戒は解いて良さそうだな。家を出てから気配察知スキルを使っていたが、俺を尾行している車もなかったし、この部屋にいるのも本当にこの2人だけだ。

 ほんの少しだけ守さんの言っていることはすべてデタラメで、この女の子の写真を利用して、この部屋におびきよせて罠にかけるなんて可能性もゼロではないかと思っていた。

「それでは玄関で立ち話もなんですから、まずは中へどうぞ」

「はい、お邪魔します」



 お、おう……これはすごい……

 案内された部屋はまるでホテルのスイートルームのような一室だった。まずは広い、とにかく広い。何十畳とあるような広いフロアに10人くらいは座れそうな、とても大きなL字型のソファが置いてある。

 そのソファの前には、うちにある32型のテレビの3倍以上はありそうな大きなテレビがあった。それもテレビ台に置くのではなく壁に埋め込まれてるやつだ。

 そしてその横には大きなテーブルがあり、いろいろな軽めの料理やケーキなどが置かれている。リビングとダイニングが繋がっているにしても広すぎる。いつから日本はこんな格差社会になっていたんだ……

「立原さん、風華を助けてくださいまして本当にありがとうございました」

「ありがとうございました」

「風華ちゃんが無事でよかったです」

 グラスを持って乾杯をする。しかしお金持ちはオレンジジュースすらも庶民とは違うのか。パックに入ったオレンジジュースとかではなく、なにやら高級そうな瓶に入っているブラッドオレンジジュースとかを出してくれたぞ……

 そして料理やケーキも普通のデリバリーとかで頼めるやつよりも立派なものだ。このケーキとか、ものすごく美味しい。さすがにそこらのケーキ屋さんで買った数百円のケーキとは比べものにならない。
 
「すごい、どれもとっても美味しいです!」

「それはよかったです。頑張って準備をした甲斐がありました」

 お互いに聞きたいことや言いたいこともいろいろとあると思うが、まずは料理やケーキを楽しませてもらった。
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