いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する

タジリユウ

文字の大きさ
上 下
36 / 189

第36話 山の麓にある村

しおりを挟む

 エガートンの街で屋台やワイバーン料理を満喫して街を出る。どちらもとてもいいお店だったし、転移魔法でまた来るとしよう。

 しかしワイバーンであれだけ美味しいならば、いったいドラゴンはどれほどの味なのだろうか。一応事前にダルガさん達にいろいろと話を聞いたところ、ドラゴンの肉は非常に美味であるとされているが、全くと言っていいほど市場に出ることがないらしい。

 ドラゴンはそもそも素材としてもとても珍しく、鱗一枚ですら市場に現れれば大騒ぎになるらしい。そんな中、その肉を食するなどという行為は王族や上級貴族の娯楽中の娯楽になるそうだ。王女であるサーラさんもまだドラゴンを食べたことはないらしい。

 そして鱗や牙、爪や骨だけではなく、その血や肝は秘薬などの精製に使用され、ドラゴン全身の素材が余すことなく使われるそうだ。ドラゴンは人を襲って喰らうが、人里近くに現れることは非常に稀で、数十年に一度高くそびえる山の頂上付近に巣を作り住み着くことがあるらしい。

 俺が今回討伐しようとしているドラゴンもエガートンの街の北部にある山脈に3年ほど前から住み着いていると聞いている。当然、そのドラゴンの素材を求め、多くの冒険者達が一攫千金の夢と龍殺しの名声を求めて北の山脈へ挑んだが、まだ討伐を果たした者はいない。

 大魔導士の力を継承した俺ならおそらく倒せると思うが、無理だと判断したら即時撤退する予定だ。美味しいものは食べたいが、命を懸けるつもりなど毛頭ない。ドラゴンを倒すことができなくとも、逃走したり転移魔法の発動する時間を稼ぐことなら間違いなく可能なはずだ。



 エガートンの街を出てから更に数時間走った後、ようやく山脈の麓にある小さな村が見えてきた。ルクセリアやエガートンの街のように立派な壁はなく、木でできた柵が村のまわりを囲っている。

 村の中に入るのも特に許可証を見せる必要もなく、入ることができた。村の中に入ると、俺と同じような武器と防具を身につけた冒険者のような身なりをした人達が結構いたから、ドラゴンに挑戦、あるいは大半はこっちの方だとは思うが、ワイバーンを狩りに行くのだろう。



「おお、兄ちゃん、立派な鎧を着けてワイバーン狩猟かい? まだ宿が決まってなかったらうちに来なよ! 晩飯も込みだし安くしておくよ!」

「さあいらっしゃい、いらっしゃい! 今日獲れたばかりのワイバーンの串焼きはいかがだい? ワイバーンの串焼きが食べられるのはこのあたりではうちだけだよ!」

 小さい村の割にはあちこちに店や客引きがいてだいぶ賑わっていた。おそらくこの村を拠点に北の山脈を目指す冒険者達を狙って商売をしている観光地のような場所なのだろう。

 宿屋に武器や防具屋、食料の調達など魔物と戦いに行くために必要なものがこの村で全て揃うことになる。屋台や酒屋など、冒険者が好ましい店なども多くあるし、なかなか楽しい村じゃないか。

「おっとそこのカッコいいお兄さん! これから北の山脈に入るなら携帯食料や調理器具なんてどうだい?」

 俺も村を歩いてたら客引きのおじさんに声をかけられた。カッコいいだなんてお世辞だとわかっていても嬉しいことを言ってくれるじゃないか。太っていた頃にはお世辞ですらそんなこと言われたことがなかったからな。

「何があるんですか?」

 お世辞のトークに誘われておじさんのお店を見てみる。当たり前だが、街の店よりも小さく、家の一部屋を商店に改造したような感じだ。

「ウチは干し肉やパンみたいな携帯食料品を売ってるよ。全部うちで作ったもんだ。あとは外で使いやすい包丁やまな板みたいな調理器具なんかもあるよ!」

 確かに棚にはたくさんのパンや干し肉などが並んでいる。サーラさん達と初めて会って外で野営をした時も、この店のパンや干し肉みたいな物を食べたな。

 だが俺には収納魔法があり、しかもこの収納魔法は収納した時のままで時が止まっている。つまりは携帯食料などなくても、普通の料理を収納魔法でしまえばそれで問題解決である。

「んっ? すみません、これはなんなんですか?」

「おっ、お兄さん、お目が高いですね! これはうちの店で一番の商品である魔道具の調理用コンロですよ」

 30cm四方の正方形の箱のようなものに魔法陣が刻まれ、その上に鍋などが置けるように金属の板が十字に固定されている。

「おお、これが魔道具なんですね」
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

処理中です...