キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

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第134話 酒補給機能

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 補給機能を拡張してから1日が過ぎ、キャンピングカーのトイレにあったトイレットペーパーがしっかりと買ったばかりの大きなロール上に戻り、シャンプーやリンスの容器も一杯になり、小さくなっていた石鹸も大きな状態に戻った。

 そして酒の空き瓶がいっぱいに満たされていた。こちらの世界で購入したお酒も悪くはないのだが、やはり元の世界の酒が飲めるのはとてもありがたい。

 本当は今日の夜に久しぶりの一杯といきたかったところだが、酒好きのドワーフに酒を贈るのが有効ということならば、こっちが優先だ。元の世界の綺麗で透明なガラスの瓶からこちらの世界で購入した瓶に入れ替えて持ってきた。

「このお酒は他のお酒と違って、かなり酒精が強くなっているので、気を付けて飲んでくださいね」

「ほう、むしろそれは望むところじゃな! ……ふ~む、確かにこいつは他の酒とは異なった深い香りをしておるのう。先に少しだけ味をみてもよいかのう?」

「ええ、もちろんです」

 まだ仕事中なのにいいのかなと思いつつも、机からグラスを取り出す。……というか、なぜに仕事場の机に酒を入れるグラスが入っているのかと思いつつ、お酒の入った瓶から酒を注ぐ。

「……この芳醇で複雑な香り。美しい宝石のような見事な琥珀色。確かにこれは今まで儂が飲んだことのない酒じゃ!」

 グラスに少しだけ注いだお酒をめちゃくちゃ真剣に見つめているバリンさん。どれだけに酒に対して真剣なんだよ……

「むむっ、これは深い味じゃわい! 最高級の酒の味と香りがこれでもかと凝縮されておる! 確かに酒精がとんでもなく強いが、舌の上でふんわりと広がるこの風味はこれまでに儂が一度も味わったことのない酒じゃ! シゲトと言ったのう、この酒はなんなのじゃ!」

「ちょっ、少し落ち着いてください!」

「お、おう。すまなかった」

 グラスに入った酒を目を瞑りながらじっくりと味わっていたバリンさんの目が突然開き、こちらに詰め寄ってきた。

 どれだけ、酒が好きなんだよ!?

「これは俺の故郷の酒でウイスキーと言います。何度か蒸留して、香りの良い木の樽でじっくりと寝かすことによってこの味と香りになるようですよ」

 今回はキャンピングカーに積んでいたビール、日本酒、ウイスキーの中からウイスキーを選んだ。今日は鍛冶屋にくる予定だったし、もしかしたらお酒を交渉に使う可能性があるかと思って、ビールよりも珍しく、日本酒よりも飲み手を選ばないウイスキーを最初に補給したわけだ。

 これまでの検証の結果、キャンピングカー内にある対象の種類で一番少ない物を補給することから、缶ビールと日本酒の瓶をキャンピングカーのアイテムボックスに入れておいたら、予想通りこのウイスキーが補給された。

 この世界にはエールや蒸留酒なんかはあるが、元の世界のウイスキーは材料を厳選し、高い技術で2~3回蒸留をおこない酒精を強めてそれを樽の中で数年間寝かせることによって完成するお酒だ。

 キャンピングカーに積んでいた俺の好きなウイスキーはそれほど高い物じゃないが、この世界の蒸留酒とはレベルが数段異なるほど酒精が強くて深い味わいがある。どうやらこの世界の住人にもこのウイスキーの味は刺さるようだな。

「何度か蒸留したものは儂も飲んだことはあるが、これほどの酒精はなかった。それにじっくり寝かすことによって、酒にこれだけの風味が加わるのか! こいつは儂が今まで飲んだどの酒よりもうまいわい!」

 やはり元の世界の酒の酒造技術は高いのだなと改めて思う。俺もこちらの世界の酒は悪くないと思いつつ、元の世界の酒が飲みたくて仕方がなかったからな。

「気に入っていただけたようでなによりです。あとこれだけあるので、今回依頼する費用の足しにしてください」

「ぬおおおお、それは最高じゃ! 任せておけ、素材もあるようじゃし、依頼料はこの酒だけあればええわい。明日までには終わらせておこう!」

「えっ、いいんですか!?」

 受付の人に聞いた話だと、オーダーメイドの場合は素材などを持ち込んだとしても最低金貨何十枚かはかかると聞いていた。金貨数枚分くらい値引きしてくれたり、値引きがなくともやる気を出してくれたりすればそれでいいかなと思っていたんだけれど。

「もちろんじゃ! こいつは最高の依頼じゃわい!」

 ……下手をしたら香辛料を売るよりも、ドワーフの人たちにお酒を売った方が儲かりそうな気もしてきたぞ。とりあえずだいぶ割り引いてくれるようで何よりだ。

「ちなみにですが、もしもこの酒をもう一本か別の特別なお酒をもう一本渡すといったら、これと同じ防具を作ることは可能ですか?」

「なに、別の特別な酒じゃと! そいつは気になるのう! それなら迷わず受けるわい!」

 本当にお酒が好きなんだなあ……

 ドワーフという種族全体がそうなのか、バリンさんが特別酒好きなのかはわからないけれど、少なくともジーナの防具も何とかしてくれそうだ。日本酒は好き嫌いがわかれそうな気もするけれど、これだけの酒好きならば日本酒も楽しめるだろう。

 明日になって酒補給機能でもう一度お酒が補給されたら持ってくるとしよう。

 その後はバリンさんと細かい条件などを話し合った。



【お知らせ】
本日よりこちらの作品の第2巻の電子書籍が発売されました♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)
書店には明後日くらいから並ぶ場所が多いかと思います。
アルファポリス様のHPの試し読みより、登場人物紹介のイラストや1枚の挿絵、特殊機能『透明化』の説明部分を読めますので、ぜひ読んでみてくださいm(_ _)m
https://www.alphapolis.co.jp/book/detail/1047697/11841
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