キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

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第126話 仕込んでいたもの

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「ふあ~あ……」

「ホホー」

「おはよう、フー太」

 今日はフー太の方が早く起きていたらしい。相変わらずもふもふしていて癒されるなあ。

「すぴ~すぴ~」

「……カルラもよく眠れているみたいだな」

 組み立て式のベッドの上からはカルラの寝息が聞こえてくる。

 初めてのキャンピングカーのベッドでよく眠れているようで何よりだ。組み立て式とはいえ、寝心地はこの世界の村や街のベッドよりもいいからな。

「それじゃあ静かに朝食の準備をしようか」

「ホー!」

 さて、今日はノクターラの街へ向かう予定だ。朝食を食べたら早速移動するとしよう。





「……よし、ちょっと早いけれど、今日はここまでかな」

「ホーホー!」

「シゲト、お疲れさまです」

「シゲトお兄ちゃん、お疲れさま!」

「お疲れだぜ」

「みんなもお疲れさま」

 朝からキャンピングカーで進み、今日は少し早めのところで停車する。

 ここからノクターラの街まではもう少しなので、明日は朝から街へ入るとしよう。

 「さて、今日はちょっと早く着いたし、以前に仕込んでおいたいろいろを試してみよう」

「んっ、なんか面白いことでもあんのか?」

「実はカルラと出会う前にいろいろと準備していたものがあるんだ」

「へえ~朝や昼ご飯みたいにうまい飯みたいなのを期待しているぜ!」

 ちなみに今日の朝ご飯は昨日解体したドラゴンの肉を使った生姜焼きで、昼ご飯はドラゴンの肉の野菜巻きだ。やはりドラゴンの肉は本当にうまかった。

「片方はみんなにも手伝ってもらうから頼むね」



 事前に仕込んでいたことは2つある。

 ひとつはみんなで狩りをしたワイルドディアとダナマベアのベーコンだ。以前に解体をした2体の魔物でソミュール液と塩漬けにした肉を1週間ちょっと冷蔵庫に入れてあったものを昼食後に少しずつ流した水へ浸しておいた。

 まずは塩抜きといって、肉に染みこませた塩を抜いていく工程だ。なぜ塩漬けにしたあといちいち塩抜きをするのか疑問に思うかもしれないが、多めの塩に漬けたあと水へ浸して塩を抜いた方が肉に均一な塩味が付くというわけだ。

「……うん、そこまでしょっぱくなさそうだから、これでいこう」

 きちんと塩抜きされているかを確認するために肉を少しだけ切って焼いてから食べてみる。

 これくらいの塩加減ならちょうど良さそうだ。この塩抜きした肉を燻製器の中に入れて燻製をする。

 ちなみに今回燻製をするための燻製チップも自作してみた。元々キャンピングカーに積んでいた燻製チップは有限だからな。実は燻製チップの作り方は結構簡単で、細かく切った木のチップを乾燥させるだけである。

 簡単だが木を細かく刻む作業は結構大変なのだが、そこはジーナがロングソードを使って一瞬で細かく刻んでくれた。あとはそれを乾燥させただけである。燃やしてみて香りが強くて良さそうな木を選んでみた。

「よし、こっちの方はこれでしばらく燻製しておけばオッケーだ。燻製の煙がちょっと目立つから、周囲にも今まで以上に気をつけていこう。それじゃあ次はみんなでパンを作るよ」

 ベーコンの方はこのまましばらく燻製しておけばオッケーだ。続いてもうひとつ仕込んでいたものを使ってパンを焼く。

「シゲトお兄ちゃん、前は秘密って言ってたけれど、これはなに?」

「これは天然酵母といって、パンをよりおいしく焼くためのものなんだ」

 この世界のパンは大麦やライ麦のような小麦粉以外の穀物を使って作られた黒パンが主流だ。そして多少生地を寝かせて発酵をさせているようだが、パンを柔らかく膨らませるため酵母やイーストなんかは使っていなかった。

 小麦を使った白パンに酵母を使ったパンは消費期限が短いから、もしかするとあえて固いパンを作っている可能性はあるけれどな。アイテムボックス機能があれば、いつでも焼き立てのパンが食べられるから、その辺りは気にしなくていい。

「いろいろな果物を水に漬けただけですが、本当にこれでパンの味がおいしくなるのですか?」

「パンに味を付けるというよりも、発酵の際に炭酸ガスを発生させてパンを膨らませて柔らかく……うん、できるか分からないし実際にやってみよう」

 やはり酵母による発酵という仕組みを説明を理解するのは難しいようで、みんな頭にハテナマークを浮かべている。

 というか、俺も詳しい仕組みまではわからないし、実際に天然酵母を作ってパンを焼くのは初めてだ。元の世界で天然稿を作ってパンを焼いてみようと思って調べていたけれど、手間と時間がかかるため手はだせなかったんだよな。

 うまくおいしいパンが焼けることを祈るとしよう。
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