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第79話 ソース
しおりを挟む「アウトドアスパイスと、昨日作ってみた2種類のソースがあるから試してみてね」
昨日燻製料理を作っている間、今後のために肉へ合うソースを2種類作ってみた。さすがにこのキャンピングカーには市販のソースなんかはほとんど積んでいなかったが、色々な種類の調味料はたくさん積んでいたから、それを利用して作ってみたわけだ。
焼き肉のタレももちろんうまいのだが、ステーキには別の味のソースが良い。野菜なんかも加えるとそこまで賞味期限は長くないけれど、キャンピングカーには収納機能があるから、それぞれ多めに作っておいた。
「このソースをかけてもとってもおいしいです! 濃厚な味がして、ダナマベアの肉の味にも負けておりません!」
ジーナが掛けたソースはガーリックオニオンソースだ。
ダナマベアの牛脂ならぬ熊脂を熱して、その脂へジーナの村で採れたタマネギをすりおろしたものと、オドリオの街で購入したニンニクを刻んだものを加える。そこに醤油とみりんと砂糖を加えて少し煮立たせてできたのがこのオニオンソースだ。
ガーリックとオニオンと醤油の濃厚なソースの味がこれまたダナマベアのステーキの味を引き立てる。
う~ん、塩コショウやアウトドアスパイスの味付けもいいが、ステーキをソースで食べるのもいいんだよなあ。まあ、こればかりはそれぞれの好みの問題になる。
「こっちのソースはさっぱりとした味でとってもおいしいよ!」
コレットちゃんが掛けたソースはおろしソースだ。
こちらはシンプルにダイコンをすりおろしてポン酢を加えたものだ。醤油も酢もキャンピングカーに積んであったけれど、ポン酢を使った方が手軽でちょうどいい。時間があれば、ポン酢も醤油と酢を果実の汁を加えて自作してみてもいいかもしれないな。
おろしソースは酢の酸味と醤油のしょっぱさ、ダイコンの辛味が合わさってさっぱりとした味になるから、口の中のダナマベアのステーキの脂をすっきりと洗い流してくれる。
いくらおいしいステーキといえど、さすがに同じ味だと飽きてしまうからな。これだけ違う味ならたくさん食べられてしまう。
「ホーホー!」
「おっ、お代わりか。ちゃんと多めに焼いておいたから、もっと食べて良いぞ」
ダナマベアのステーキの肉は時間差で焼いてアルミホイルに包んでおいたから、大きめの肉でひとり3枚ずつ焼いてある。多すぎたら収納機能で収納しておけばいいのは便利だよな。
「シゲト、私もお代わりをお願いします!」
「シ、シゲトお兄ちゃん、僕もお代わりをお願いしたいです!」
「ああ、もちろんみんなの分もあるぞ。みんなで協力して狩った獲物だからな。しっかりと味わってみんなでいただこう」
「……ふう~さすがにお腹がいっぱいです」
「本当においしかった~!」
「ホー」
ダナマベアのステーキは多めに焼いたつもりだったけれど、ジーナとコレットちゃんはしっかりと3枚も食べきった。フー太と俺は2枚でだいぶお腹がいっぱいになったな。
ジーナはともかく、コレットちゃんもフー太も身体の割によくあれだけの量を食べることができたものだよ。
「ダナマベアは食べたことがありましたが、あれほどの味ではありませんでした。本当においしかったです」
「いろいろと焼き方やソースも工夫したからね。そう言ってもらえると、手間をかけていろいろ頑張った甲斐があったよ」
ジーナがいたハーキム村だと、たぶん味付けは塩だけだっただろうからな。こだわって下処理をして、アウトドアスパイスの香辛料や醤油などの調味料を使って作ったソースの味は新鮮だったことだろう。
「僕もあんなにおいしいお肉は初めて食べました!」
「森でコレットちゃんがダナマベアを見つけてくれたおかげで、あれを味わうことができたんだよ」
みんなで協力をしてあの味を味わえたこともあって、よりおいしく感じられたのかもしれないな。
「ホーホー♪」
「やっぱり最初に食べたステーキよりもおいしかっただろ。フー太があの重いダナマベアを一緒に運んでくれたおかげだよ」
フー太の言葉を理解することはできないけれど、今のフー太の身振り手振りでフー太が何を言いたいのかはだいたいわかった。
料理方法や調味料も大事だけれど、やはり何よりの違いはその肉の味だろう。スーパーで購入したお買い得の肉よりもあのダナマベアの肉は遥かにおいしかった。
もちろん自分たちで苦労して狩って、苦労して解体作業をしたという補正もかなりあるだろうけれどな。スーパーで購入した肉よりも自分たちで苦労した分、よりおいしく感じるのは当然のことだ。
さて、これで当分の間の肉を確保することができた。昨日はだいぶ疲れたけれど、今日は美味しいものを食べてだいぶ回復することができたし、明日向かうマイセン湖も楽しみだな。
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