異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

タジリユウ

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第5章 いろんな客とトラブルがやってきた!?

第284話 出発

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「どうして私にだけ秘密にしていたの!」

「そ、それは……サリアはまだ攻撃魔法を覚えたばかりだろう。こんな危険な戦いに連れて行くわけにはいかない」

「確かに私はまだあんまり魔法を使えないけれど、それでもみんなが戦うのに私だけ戦わないなんて嫌よ! お父さんなんて大っ嫌い!」

「ぐはあっ……」

 サリアの父親であるアルベさんが膝から崩れ落ちた。

 娘であるサリアに大嫌いと言われてかなりショックだったようだ。この人、サリアには厳しく見せているようで実は甘々だからなあ……

「まあ、落ち着くのじゃ、サリア。自分の娘を危険な戦場へ連れて行きたくないと言うアルベとカテナの気持ちも分かってやるといい」

「でも、村長……」

「知ってしまった以上、あとはサリアの意思に任せるしかないのう。しかし、これから向かう場所は本当に危険だから、一緒に来ると言うのであれば覚悟が必要であるぞ」

「……分かりました。確かに私はちゃんと魔法を使えるようになってからまだ全然ですが、それでも私だってみんなと同じ気持ちです! わたしも一緒に行きます!」

「そうか、サリアが自分の意思で決めたのなら、もう言わん。じゃが、自分の命を第一にするのだぞ、これは儂ら全員に言えることであるからのう」

「はい!」

「うう……サリアが危険な場所へ……何としても阻止しなければ……」

「お父さんとはしばらく口を聞きたくないです!」

「ぐはああああ!」

「あなた。サリアももう立派な大人になったのよ」

「ううう……」

 アルベさんが再び崩れ落ち、それをカテナさんが慰めている。

 どうやらサリアも一緒に行くことになったようだ。

「う、うまく収まってよかったのじゃ!」

「元はと言えばサンドラが余計なことをサリアに言ったから」

「そ、そんなことはないのじゃ!」

「………………」

 アンネルさんに言われて目を泳がせている古代竜のサンドラ。

 アンネルさんの言う通り、本当ならばサリアにはこのキャンプ場に残ってもらうつもりだったのだが、サンドラのせいでそのことがサリアにバレてしまった。

 というか、サンドラは嘘を吐いたり誤魔化したりすることが致命的に苦手なようだ。サンドラの性格上、嘘を吐いたり誤魔化したりすることはこれまでにほとんどなかったのだろうな。

 だけど、むしろこれで良かったのかもしれないな。さすがにサリアも自分だけが知らないところで、みんなが命を懸けて戦うのはあまり良い気がしないだろう。もちろん俺も含めて命なんて懸ける気はこれっぽっちもないが。

「うう……サリア……」

「ふんっ!」

「ぐはあああ!」

 ……まあ、アルベさんは運がなかったということで。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「それじゃあキャンプ場の守りは頼むな」

「はい、こちらはお任せください!」

「俺も力の限りを尽くそう」

「皆さん、気を付けてくださいね!」

「みんな怪我しちゃ駄目ニャ!」

「ブルルルル!」

 アルジャとウド、イド、アルエちゃん、アリエスがキャンプ場の前で俺達を見送ってくれる。

 いよいよこれからスタンピードを相手にするため、もうひとつのエルフ村へと向かう。すでにここにはオブリさんたちエルフのみんなに加えて、ドワーフのみんな、ランドさんやバーナルさんたち冒険者のみんな、サンドラとアンネルさんも準備を終えている。

 ソニアとサリア以外の従業員のみんなにはこのキャンプ場に残ってもらう。俺の結界の能力を戦闘で使う以上、このキャンプ場は無防備になってしまうからな。

「エリザさんもご協力ありがとうございます」

「とんでもないですわ! 今度こそお役に立てそうで良かったです!」

 そしてキャンプ場の守りを行ってくれるのは従業員のみんなだけではない。第三王女様のエリザさんとその護衛騎士であるベレーさん、執事のルパートさんが一緒にこのキャンプ場を守ってくれることになった。

 本当はみんなと一緒にエルフ村の方に来たかったようだが、さすがに王族の人たちにエルフの村のことがバレるのは少しまずいし、万一第三王女であるエリザさんが怪我でもしたら、あのシスコンな第一王子がこのキャンプ場に攻めてきそうだからな……

 それに今回の戦いは数日以上掛かるし、エリザさんたちも一緒にこのキャンプ場を守ってくれるのならさらに安心だ。アルジャも元Bランク冒険者とはいえ、昔ここにきた盗賊たちのように数で来られると厳しいかもしれないからな。

 ……それにしても、エリザさんたちも前回の変異種の時に間に合わなかったのをまだ覚えていたらしい。

 サンドラと同じで前回何も協力できなかったことが悔いに残っていたのかもしれない。

「キャンプ場にある物は自由に使っていいですからね。すみませんが、しばらくの間キャンプ場をお願いします」

「承知しました。 皆さん、御武運をお祈りしております」

 従業員のみんなとエリザさんたちに見送られ、いよいよ決戦の場所へ移動する。

 さあ、誰一人大きな怪我をすることなく無事に帰って来るとしよう!
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