151 / 165
第5章 いろんな客とトラブルがやってきた!?
第279話 それは秘密
しおりを挟む「ユウスケ、おはようなのじゃ!」
「おはよう、サンドラ。さっきウドから聞いたと思うけれど、アンネルさんは昨日来て、多分今日の昼過ぎくらいまで寝ているって言っていたぞ」
ウドと一緒にキャンプ場の入口へと行くと、そこにはいつも通り赤いメイド服を着て赤い髪をした少女姿のサンドラがいた。
「妾の家にアンネルのやつからの書置きか置いてあったのじゃ。いつもより早い時間に来てしまって、すまなかったのう……」
「今日はそれほど混んでいなかったから、気にしなくても大丈夫だぞ。いつもみたいに料理をたくさん出すのはもう少ししてからになりそうだから、ちょっとだけ待っていてくれ」
「うむ、もちろんなのじゃ!」
相変わらずちゃんとこのキャンプ場のことを考えてくれるから助かる。そろそろ遅めの朝食と昼食をとるお客さんが増えて忙しくなってくる。さすがにその間はサンドラの料理をひたすら作るのはなかなか難しいからな。
「それにしても妾を置いてひとりで勝手にここに来るとはアンネルのやつめ!」
「よっぽどこのキャンプ場の寝具が気に入ってくれたみたいだな」
確かに最近の寝袋やマットなんかはかなり快適に寝られるようできている。アンネルさんがあれほど気に入っている気持ちも分からなくはない。
「ここの寝具は普通の物よりも遥かに質が良いからな。俺やイドが普段使わせてもらっているベッドもかなり寝心地が良い」
「確かにそうかもな。……だけどウド、一応アンネルさんにそのことは秘密にしておいてくれ」
このキャンプ場の従業員のベッドはダルガたちドワーフのみんなが土台を作ってくれて、その上に俺の能力によりショップで購入したマットレスや布団をかけて使っている。
キャンプ用のマットや寝袋なんかもだいぶ快適に過ごせるけれど、あっちのマットレスや布団なんかとは異なる寝心地だ。
……アンネルさんにそのことを伝えると、寝袋やマットにつられてこのキャンプ場の従業員になりたいとか本気で言い出してきそうで怖い。さすがに今は従業員の募集を行ってはいないからな。
「本当にあやつは寝具のことになるとこだわるからのう……とはいえ、さすがに妾でも壊せないユウスケの結界のことは知っておるから、下手な真似はせんとは思うぞ」
「まあ、結界があるからその辺りは心配していないよ」
アンネルさんはあんまりパワータイプな人ではなさそうだし、結界が壊される可能性はないだろう。同様に盗難とかもできないからな。
どちらかというと、アンネルさんが成長した姿で男性従業員を誘惑した方がやばい気もする。ウドもアルジャも男だし、そういった方面から攻められるとヤバいかもしれない。
……うん、一番ヤバそうなのは俺かもしれないけれどね。
「それじゃあ、いつもの場所へ案内するよ。アンネルさんが言うには昼頃起きてくるってさ」
「そうなのか。それではあやつが起きるまで待っているとしよう」
「了解だ。そういえば今日はランドさんとバーナルさんが来ているぞ」
「おおっ、それはちょうどいいのじゃ。あとでアンネルのやつを紹介するとしよう」
今日は獣人冒険者のランドさんとバーナルさんも朝からキャンプ場に来てくれている。あの2人はサンドラの正体が古代竜であることを知っていて普通に接してくれる友人だ。たぶんアンネルさんとも普通に接してくれるだろう。
……一応あとで様子を見ておくとするか。
「お待たせしました。トマトジュースのミルク割りと日本酒がひとつずつになります」
「ありがとう、ユウスケ」
「うむ、ありがとうなのじゃ」
「ランドさんとバーナルさん、こちらがご注文のビールです。料理は順番にそれぞれ持ってきますね」
「おう、いつもサンキューな、サリアの嬢ちゃん」
「やっぱりまずはこの冷えたビールからだよな!」
そして昼が過ぎて、ようやくアンネルさんが起きてきたようだ。先程注文をもらって、サリアと一緒に飲み物と料理を持ってくる。それまでの間、サンドラはランドさんとバーナルさんと一緒にバドミントンをして楽しそうに遊んでいた。
ランドさんとバーナルさんは獣人でかなり身体能力が高いのだが、それでもサンドラ相手に2対1で互角くらいなんだから、やっぱりサンドラは古代竜なんだよなあ……
よくあんなに俊敏に動けるものだよ。サンドラに聞いたら、あの姿ではだいぶ力が制限されていてあのスピードだと言うからな。
「ぷはあ~! 相変わらずここのビールはうまいぜ!」
「うむ。こっちの日本酒もうまいのじゃ!」
673
お気に入りに追加
4,836
あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。