異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

タジリユウ

文字の大きさ
上 下
150 / 165
第5章 いろんな客とトラブルがやってきた!?

第278話 ミルク割り

しおりを挟む

「お待たせしました、トマトジュースです」

 アルジャがテントを組み立てている間に、アンネルさんの注文していたトマトジュースを持ってきた。

 アンネルさんの目はすでにトロンとしていて、横になったらすぐに寝てしまいそうだから結構急ぎめで作ったぞ。

「ありがとう!」

 持ってきたトマトジュースをとてもおいしそうに飲むアンネルさん。トマトジュースや野菜ジュースは好きな人が分かれるけれど、ここまで好きな人も珍しい。

「それとこっちも少し試してみませんか?」

「これは何?」

 トマトジュースとは別にコップへ少量だけ入れた赤と白が混ざった液体も一緒に持ってきた。

「これはトマトジュースとミルクを混ぜたものですよ。好きな人は好きらしいので、試してみてください」

 先日アンネルさんがキャンプ場へ来た時にいろいろと調べてみたけれど、どうやらアンネルさんの主食とする血液の成分はミルクと近いらしい。

 そしてさらに調べると、トマトジュースをミルクと一緒にとると、トマトの善玉コレステロールを増やす役割のリコピンという成分の吸収率が高まるようだ。しかし、味の方は普通のトマトジュースよりもこれまた複雑になってしまった。

 サリアは普通のトマトジュースは駄目でミルクを加えるとそちらの方が良くなったらしい。逆にアルジャは普通のトマトジュースは大丈夫だったが、ミルクを加えると微妙になった。この辺りの好みは本当に人それぞれだったな。

「っ!? こっちの方がおいしい!」

「気に入って頂けて良かったです。それでは今度からこちらをお出ししますね」

 どうやらアンネルさんはミルクを加えた方が好みのようだ。どちらもキャンプ場で出しているし、それを混ぜるだけでキャンプ場としても大した手間ではないからな。

「ありがとう、ユウスケ」

「いえ、お気になさらず。それではごゆっくりどうぞ」

 そしてアンネルさんはトマトジュースのミルク割りを飲み干して、テントへと入っていった。

 それにしても、これから丸1日眠るというのもすごい話だ。俺も2徹した時は15時間近く眠っていたことはあったけれど、さすがに1日中寝ていたことはないからな。



「ユウスケさん、アンネルさんはどうでした?」

「ああ、例のトマトジュースのミルク割りを気に入ってくれていたぞ。それからテントの中で寝るってさ。明日の昼頃まで起きないって言っていたな」

「……そうなんですね。良かったです」

 そう言いながら、サリアはなぜかほっとしていた。

 ……いや、前回もそうだけれど、別にやましいことなんてしていないからな!

「今日はひとりで来られたのですね」

「ああ、サンドラの家に寄ったけれど、サンドラは出掛けていたから先にひとりで来たみたいだ。もしかしたら、サンドラも明日じゃなくて今日かもしれないな」

 ソニアの質問に答える。

 アンネルさんの話によるとサンドラの家に書置きをしてきたらしいから、それを見たサンドラも週末の明日じゃなくて今日このあとに来るかもしれない。

 ……というか、サンドラの家ってどこにあるんだろうな。普段のドラゴンの身体はめちゃくちゃデカいし、古代竜というくらいだから、どこかの火山とか谷の奥底に住んでいたりするのだろうか。

「なるほど。慌てて古代竜の姿で来なければ良いのですが……」

「サ、サンドラさんなら大丈夫ですよ!」

「う~ん、サンドラは少しそそっかしいところがあるからな……」

 サリアがサンドラのフォローをするけれど、あいつも少しそそっかしいところがあるからちょっとだけ心配だ。

 サンドラが古代竜であるということはこのキャンプ場へ来ているお客さんの中でもほんの一部しか知らない。正直なところ、このキャンプ場にはいろんな種族のお客さんたちが来るから、普通のお客さんにバレる分には問題ない。

 とはいえ、この国の第三王女のエリザさんやその兄のレクサム様あたりに知られると、いろいろと問題があるかもしれないからな。幸い今日はおふたりともキャンプ場に来ていないから大丈夫だとうは思うけれど。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「ユウスケ、サンドラ殿が来たぞ」

「了解、ウド、今行くよ。ちゃんと人の姿で来てくれていたか?」

「ああ。いつもの小柄な姿だった」

「ふう~それなら良かったよ」

 結局昨日サンドラはこのキャンプ場へ来ることはなかったが、今日は朝早くからキャンプ場に来たみたいだ。いつもは忙しい時間帯を外して昼過ぎに来るサンドラが朝の時間に来たのはアンネルさんが昨日来たからだろう。

 そしてちゃんと古代竜の姿ではなく、いつもの姿で来たらしくてちょっと安心した。

 さて、多分アンネルさんはまだ寝ているところだろうけれど、サンドラを案内するとしよう。
しおりを挟む
感想 434

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

異世界じゃスローライフはままならない~聖獣の主人は島育ち~

夏柿シン
ファンタジー
新作≪最弱な彼らに祝福を〜不遇職で導く精霊のリヴァイバル〜≫がwebにて連載開始 【小説第1〜5巻/コミックス第3巻発売中】  海外よりも遠いと言われる日本の小さな離島。  そんな島で愛犬と静かに暮らしていた青年は事故で命を落としてしまう。  死後に彼の前に現れた神様はこう告げた。 「ごめん! 手違いで地球に生まれちゃってた!」  彼は元々異世界で輪廻する魂だった。  異世界でもスローライフ満喫予定の彼の元に現れたのは聖獣になった愛犬。  彼の規格外の力を世界はほっといてくれなかった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。