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第5章 いろんな客とトラブルがやってきた!?
第278話 ミルク割り
しおりを挟む「お待たせしました、トマトジュースです」
アルジャがテントを組み立てている間に、アンネルさんの注文していたトマトジュースを持ってきた。
アンネルさんの目はすでにトロンとしていて、横になったらすぐに寝てしまいそうだから結構急ぎめで作ったぞ。
「ありがとう!」
持ってきたトマトジュースをとてもおいしそうに飲むアンネルさん。トマトジュースや野菜ジュースは好きな人が分かれるけれど、ここまで好きな人も珍しい。
「それとこっちも少し試してみませんか?」
「これは何?」
トマトジュースとは別にコップへ少量だけ入れた赤と白が混ざった液体も一緒に持ってきた。
「これはトマトジュースとミルクを混ぜたものですよ。好きな人は好きらしいので、試してみてください」
先日アンネルさんがキャンプ場へ来た時にいろいろと調べてみたけれど、どうやらアンネルさんの主食とする血液の成分はミルクと近いらしい。
そしてさらに調べると、トマトジュースをミルクと一緒にとると、トマトの善玉コレステロールを増やす役割のリコピンという成分の吸収率が高まるようだ。しかし、味の方は普通のトマトジュースよりもこれまた複雑になってしまった。
サリアは普通のトマトジュースは駄目でミルクを加えるとそちらの方が良くなったらしい。逆にアルジャは普通のトマトジュースは大丈夫だったが、ミルクを加えると微妙になった。この辺りの好みは本当に人それぞれだったな。
「っ!? こっちの方がおいしい!」
「気に入って頂けて良かったです。それでは今度からこちらをお出ししますね」
どうやらアンネルさんはミルクを加えた方が好みのようだ。どちらもキャンプ場で出しているし、それを混ぜるだけでキャンプ場としても大した手間ではないからな。
「ありがとう、ユウスケ」
「いえ、お気になさらず。それではごゆっくりどうぞ」
そしてアンネルさんはトマトジュースのミルク割りを飲み干して、テントへと入っていった。
それにしても、これから丸1日眠るというのもすごい話だ。俺も2徹した時は15時間近く眠っていたことはあったけれど、さすがに1日中寝ていたことはないからな。
「ユウスケさん、アンネルさんはどうでした?」
「ああ、例のトマトジュースのミルク割りを気に入ってくれていたぞ。それからテントの中で寝るってさ。明日の昼頃まで起きないって言っていたな」
「……そうなんですね。良かったです」
そう言いながら、サリアはなぜかほっとしていた。
……いや、前回もそうだけれど、別にやましいことなんてしていないからな!
「今日はひとりで来られたのですね」
「ああ、サンドラの家に寄ったけれど、サンドラは出掛けていたから先にひとりで来たみたいだ。もしかしたら、サンドラも明日じゃなくて今日かもしれないな」
ソニアの質問に答える。
アンネルさんの話によるとサンドラの家に書置きをしてきたらしいから、それを見たサンドラも週末の明日じゃなくて今日このあとに来るかもしれない。
……というか、サンドラの家ってどこにあるんだろうな。普段のドラゴンの身体はめちゃくちゃデカいし、古代竜というくらいだから、どこかの火山とか谷の奥底に住んでいたりするのだろうか。
「なるほど。慌てて古代竜の姿で来なければ良いのですが……」
「サ、サンドラさんなら大丈夫ですよ!」
「う~ん、サンドラは少しそそっかしいところがあるからな……」
サリアがサンドラのフォローをするけれど、あいつも少しそそっかしいところがあるからちょっとだけ心配だ。
サンドラが古代竜であるということはこのキャンプ場へ来ているお客さんの中でもほんの一部しか知らない。正直なところ、このキャンプ場にはいろんな種族のお客さんたちが来るから、普通のお客さんにバレる分には問題ない。
とはいえ、この国の第三王女のエリザさんやその兄のレクサム様あたりに知られると、いろいろと問題があるかもしれないからな。幸い今日はおふたりともキャンプ場に来ていないから大丈夫だとうは思うけれど。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ユウスケ、サンドラ殿が来たぞ」
「了解、ウド、今行くよ。ちゃんと人の姿で来てくれていたか?」
「ああ。いつもの小柄な姿だった」
「ふう~それなら良かったよ」
結局昨日サンドラはこのキャンプ場へ来ることはなかったが、今日は朝早くからキャンプ場に来たみたいだ。いつもは忙しい時間帯を外して昼過ぎに来るサンドラが朝の時間に来たのはアンネルさんが昨日来たからだろう。
そしてちゃんと古代竜の姿ではなく、いつもの姿で来たらしくてちょっと安心した。
さて、多分アンネルさんはまだ寝ているところだろうけれど、サンドラを案内するとしよう。
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