129 / 165
第5章 いろんな客とトラブルがやってきた!?
第258話 優勝者
しおりを挟む「続きまして第2位の発表となります!」
「「「おおおおおおお~!!」」」
再びの大歓声が上がる。残る賞品をもらえるチームはたった2つ。そしてそのうちのひとつが……
「第2位は商人チームのエイベン虫カレーです!」
「「「おおおおおおお~!!」」」
「おお、やったぞ~!」
「まさか2位を取れるとはな!」
「いろいろ工夫した甲斐があったな!」
商人チームの3人が抱き合いながら喜んでいる。
商人チームの3人はそれぞれ個別で商売をしている商人さんたちだ。このキャンプ場で知り合って、たまに顔を合わせて商売の話をしていたところ、仲良くなって、チームを組むことになったらしい。
「それでは代表の方、前へどうぞ!」
前に来てくれた商人は30代くらいの恰幅のよい人だ。実はこの商人さんはキャンプ場を始めた初日から来てくれている人なんだよな。
街から街を馬車で移動している際に、このキャンプ場を利用してくれている。そのため、ドワーフのみんなみたいに毎週のように来られるわけではないが、このキャンプ場を始めてからずっと通ってくれている大切なお客様だ。
「おめでとうございます。こちらが賞品のチケットとなりますので、あとでこちらの中から好きなものをお選びください」
「ありがとうございます、ユウスケさん。これでこのキャンプ場にある温かい寝袋が手に入ります!」
どうやら商人さんたちの狙いはこのキャンプ場で使っている寝袋のようだ。ランドさんやバーナルさんみたいな冒険者と同様に、商人さんたちも遠くの街まで野営をしながら馬車で移動をするから、柔らかな寝具があると嬉しいんだろうな。
「それではこちらのカレーに投票をしてくれた人たちの感想となります」
商人さんチームのカレーは例のイモムシカレーだ。エイベン虫という食用の虫に衣をつけて油で揚げたものをカレーのトッピングにのせている。ルーの味も揚げ物と一緒に食べておいしいように、少し濃いめに味付けされているようだ。
「『サクッとした歯触りと中からトロリとした濃厚なエイベン虫の味が現れてカレーとよく合っていた』、『味の濃いエイベン虫とカレーが一体となってとてもうまかった』、『この虫は初めて食べたが、とてもおいしかったのじゃ!』以上となります。それでは大きな拍手をお願いします」
パチパチパチ
……最後のは多分サンドラの感想だろう。一応投票は匿名で行われているが、感想は手書きで書くため、多少は分かってしまうんだよな。ちなみに文字を書けない人たちは従業員が代筆している。
確かにカツカレーのようにサクサクとした衣をつけた揚げ物はカレーにとてもよく合う。このキャンプ場で出している揚げ物をうまく真似て、衣をつけてエイベン虫を油で揚げたらしい。
……それにしてもこの世界のみんなはあの見た目についてはあまり気にならないんだな。俺個人として、確かに味だけ言えば、参加チームの中ではトップクラスの味だと思うのだが、どうしてもこの見た目がなあ。
衣が付いているとはいえ、モロにイモムシの形だから、別の世界から来た俺にとって見た目がだいぶきつかったんだよね。
とはいえ、ソニアやサリアも気にせず食べていたし、こちらの世界で昆虫食は普通のようだ。……でもこのキャンプ場で出すことはないに違いない。
「さて、いよいよ1位の発表となります!」
「「「おおおおおおお~!!」」」
ここで今日イチの大声援だ。いよいよ第1回カレー大会の優勝者の発表となる。
「栄えある優勝チームは……エリザさんチームのスパイシーカレーです!」
「「「おおおおおおお~!!」」」
「やりましたわ!」
「お嬢様、やりましたね!」
「やった、やったあ!」
エリザさんの元へ護衛のベレーさんたちが集まっている。執事のルパートさんはいつもと変わらないように見えるが、いつもより少しだけ表情が緩んでいる気がする。
「うおおおおおおおお!」
……あっちの方で騒がしくして、周りの人に取り押さえられているのは多分レクサム様だろう。エリザさんが優勝して嬉しいのは分かるのだが、あんなに騒いだら他の人やエリザさん本人にバレるだろうに。
「それでは代表の方、前へどうぞ!」
てっきりエリザさんが出てくるのかと思ったが、前に出てきたのは執事のルパートさんだった。そういえばエリザさんはこの国の第三王女様だし、あんまり目立ってしまってはお忍びでキャンプ場にまで来てくれている意味がなくなってしまう。
同様に護衛部隊のベレーさんたちも目立ち過ぎたらまずいのかもしれないな。第三王女様の護衛ということで、多少の人目にはついているだろうし。
「おめでとうございます。こちらが賞品のチケットとなりますので、あとでこちらの中から好きなものをお選びください」
「ありがとうございます、ユウスケさん」
代表者のルパートさんに賞品を渡した。
200
お気に入りに追加
4,833
あなたにおすすめの小説
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。