92 / 165
第5章 いろんな客とトラブルがやってきた!?
第221話 暑い日にはこれ
しおりを挟む「よし、晩ご飯ができたぞ」
「見たことがない料理だな」
「これはとても細い麺ですね」
「ああ、今日は結構暑かったからな。さっぱりとしたそうめんという麺料理だ」
日が暮れ始めたこの時間帯になっても、今日はまだだいぶ暖かい。こんな時にはさっぱりとしたそうめんに限る。
こちらの世界にも小麦粉を使ったパスタやうどんのような麺料理はあるが、さすがにそうめんはみんな見たことがないらしい。似たような麺はあっても、そうめんのような極細の麺に加工するのはなかなか難しいのだろう。
「こんな感じで氷で冷やしてある麺を取ってつけ汁につけて食べるんだ。天ぷらと一緒に食べてもおいしいよ。あとはみんなが釣ってきてくれた川魚の塩焼きもひとりひとつずつあるからな」
大きな器に茹でたそうめんをいれて、サリアが水魔法で作ってくれた氷によって麺を冷やしている。そうめん自体は茹でるだけで、天ぷらは馬車に乗せて持ってきた野菜と肉を油で揚げた。
川魚はシンプルに串に刺して炭火で焼いてある。味付けは塩を軽く振ってあるだけだ。醬油と大根おろしも良いのだが、そこまで大きな川魚ではないので、塩焼きにしてそのままかぶりつくのがいいだろう。
「うわあ、冷たくてサッパリしていておいしいです!」
「つるっとしていてとってもおいしいニャ! こっちの天ぷらもサクサクしているニャ!」
「天ぷらのほうは冷たいつゆに少しつけると、食材の旨みと天ぷらの油がつゆに染み込んでよりおいしくなるよ」
一緒にこの料理を作ったイドもアルエちゃんもおいしそうにそうめんを食べている。温かい天ぷらに冷たいそうめんのつゆをつけて、そうめんと一緒に食べるとこれがまたうまいんだよね!
「こちらの温かいつゆのほうにつけてもうまいな。冷たくて細い麺と温かいつゆの組み合わせも面白い。俺はこちらのほうが好きかもしれない」
「ええ。それにこちらの温かいつゆにはいろいろな具材が入っていて、この細い麺と一緒に食べるととてもおいしいですよ」
ウドとアルジャが食べているのは温かいほうのつゆだ。今回そうめんには2種類のつゆを用意した。ひとつ目は普通のめんつゆをサリアが作ってくれた氷を使って冷やしたものだ。
そしてもうひとつは肉、ネギ、キノコ、野菜を炒めたものに水とめんつゆを加えてひと煮立ちさせた温かいつゆである。そうめんと言えば冷たいつゆが基本だが、温かいつゆもなかなかうまいんだよ。
温かいつゆに冷たいそうめんを一瞬くぐらすことによって、冷たいと温かいを同時に味わえて、箸が止まらなくなってしまう。ごま油で炒めた温かい肉と野菜の具材がこれまた冷たくて細いそうめんとよく合うんだよね。
「ブルルル♪」
「アリエスもとってもおいしいって言ってるニャ!」
アリエスの分は個別で大きな器に盛り付けてあり、器用にそうめんをくわえてつゆにつけてからちゅるちゅると食べている。今日はずっと馬車を引っ張ってくれたからだいぶお腹も空いているのだろう。
「これはいくらでも食べられてしまいますね! 今日のように暑い日にはピッタリです!」
「みなさんが釣ってくれたこのお魚もおいしいです。キャンプ場で食べるのとは違って、外でみんなで食べるご飯もいいですね!」
ソニアもサリアもおいしそうにそうめんや魚の塩焼きを食べてくれている。サリアの言う通り、いつものキャンプ場で食べる雰囲気とは違って、こういうのもいいものである。
元の世界でもそうだが、キャンプとは普段と違う非日常感を味わうものでもあるからな。今ではキャンプ場にいるのが当たり前の生活になっているから、こうやって別の場所に来て、みんなで役割を決めて料理を作ることが元の世界で言うキャンプをする感覚なのだろう。
アリエスのおかげでみんな一緒に遠出ができるようになったことだし、たまにこうやって別の場所にキャンプしに行くというのも悪くないのかもしれない。
「ふう~おいしかったな」
「とってもおいしかったですね」
「お腹いっぱいだニャ!」
そうめんは少し多めにひとり1.5束分くらい茹でたのだが、途中で麺が足りなくなって慌てて追加で麺を茹でた。そうめんってするすると入っていくからおなかが空いているときは2束くらい簡単に入ってしまうんだよね。
暑い時期に行くキャンプ場でそうめんというのもおつなものである。今度キャンプ場で流しそうめんなんかをやってもいいかもしれない。
「ユウスケ、今日の分のケーキをお願いします」
「まだ食べられるのかよ……」
みんなお腹いっぱいになったところで、ソニアからケーキの催促が入った。
いやまあ確かに今日はキャンプ場で週に2回ほど設けているデザートの日ではあるが、さすがにこの量のそうめんを食べてからケーキを求められるとは思わなかったぞ……
「ケーキは別腹ですよ」
いや、軽い果物やデザートなら別腹という言葉で許されるかもしれないが、さすがにケーキは重いだろ……少なくとも今俺にケーキは無理だな。
「それじゃあケーキ以外のお菓子にするか。あれならサッパリしているし、今日みたいな暑い日にはびったりのお菓子があるぞ」
「新しいお菓子ですか! ええ、もちろん構いませんよ!」
ストアで目的のものを購入する。さすが飲み物の冷たいか温かいかを選択できる超有能なストアの能力、ちゃんと冷えた状態で購入できるようだ。相変わらず神様からもらったストアの能力は超有能だ。
「ほら、これが水ようかんだよ」
158
お気に入りに追加
4,835
あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
異世界じゃスローライフはままならない~聖獣の主人は島育ち~
夏柿シン
ファンタジー
新作≪最弱な彼らに祝福を〜不遇職で導く精霊のリヴァイバル〜≫がwebにて連載開始
【小説第1〜5巻/コミックス第3巻発売中】
海外よりも遠いと言われる日本の小さな離島。
そんな島で愛犬と静かに暮らしていた青年は事故で命を落としてしまう。
死後に彼の前に現れた神様はこう告げた。
「ごめん! 手違いで地球に生まれちゃってた!」
彼は元々異世界で輪廻する魂だった。
異世界でもスローライフ満喫予定の彼の元に現れたのは聖獣になった愛犬。
彼の規格外の力を世界はほっといてくれなかった。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。