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第5章 いろんな客とトラブルがやってきた!?

第215話 第一王子様

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「ユ、ユウスケさん! 大勢の騎士の方がいらっしゃって、ユウスケさんを呼んでほしいと仰っています!」

「来たか。ありがとうサリア、すぐに行くよ」

 今日はキャンプ場の通常営業日。お昼前の時間帯にどうやらいつもとは違ったお客さんがこのキャンプ場を訪れたようだ。

 とはいえ、そのお客様の正体はエリザさんと冒険者ギルドマスターのドナルマさんからすでに聞いている。エリザさん……この国の第三王女であるベルナッド=アンリーザ様の兄であるこの国の第一王子様がついにこのキャンプ場にやってきたのだ。

「それじゃあソニア、一緒に来てくれ」

「わかりました」

「ウドはイスとテーブルの設置を頼む」

「ああ、任せてくれ」

 すでに第一王子様が来た時のための打ち合わせは済んでいる。といってもそこまで恭しい歓迎はしない。他の従業員には通常通りの営業をしてもらって、俺とソニアで対応をする。

 ソニアはAランク冒険者でもある。護衛というよりは、これくらい腕の立つ者がこのキャンプ場にいるという牽制の意味合いが強い。

 一応このキャンプ場を訪れた目的は、例のイノシシ型の変異種討伐の褒賞を与えるという名目だが、あれほどの変異種を討伐できる力を持つこのキャンプ場を確認する意味もあるはずだ。

 実際にはオブリさんやダルガや他の冒険者達の力をたくさん借りたのだが、このキャンプ場が舐められないためにも、ある程度強い人材がいることを見せつけておかなければならないからな。



「大変お待たせしました。このキャンプ場の責任者のユウスケと申します」

「初めましてユウスケ殿、私はこの国の第一王子であるベルナッド=レクサムだ」

 キャンプ場の入り口にこのキャンプ場には場違いなキラキラとした細かい模様の刺繍が入った豪華な服装をした20代後半くらいのイケメンの男性が堂々とした姿で立っていた。兄妹だけあってエリザさんと同じ金髪碧眼で、顔つきも少し似ている気がする。

 そしてそのレクサム様の隣には濃い青色の髪の色をした30代くらいの髭を生やした厳粛な面持ちの男が控えている。全身ピカピカで銀色の鎧を身に纏い、これまた高価そうなロングソードを携えている。まさしく騎士というイメージだな。

 その後ろには同じように鎧をまとった騎士団が20人ほど控えており、レクサム様が乗ってきたと思われる豪華な馬車があった。

「この度は遠路はるばるイーストビレッジキャンプ場までお越しいただいてありがとうございます。冒険者ギルドマスターのドナルマさんからレクサム様がいらっしゃることはすでに聞いております。ここで立ち話もなんですので、まずは中へどうぞ」

「うむ、それではお邪魔させてもらうとしよう」

 レクサム様達をキャンプ場の中に受け入れ、ウドが準備してくれていたタープとイスとテーブルがある場所へ案内する。

「ほう、変わった座り心地のイスであるな」

「申し訳ございません。なにぶんこのキャンプ場には身分の高い方を受け入れるような部屋などはございませんので、どうかご容赦くださいませ」

 キャンプ場の管理棟にも貴族を受け入れるような部屋なんてないので、タープを張ってその下にテーブルとイスを組み立てた。

 ……しかし改めて見てもすごい光景だな。キャンプ用のタープとテーブルとイスに王族が座っている。さすがにこのアウトドアな光景に王族とか騎士の格好は似合わない気もする。

「ユウスケ殿、そこまで畏まる必要はないぞ。そちらの護衛の女性もイスに座ってくれ」

「それでは失礼します」

 レクサム様の許可を得てイスに座る。とはいえ、当然ながらレクサム様以外の騎士達は立ったままである。こういう時って少しだけ気まずいよな。

「ユウスケ殿、この国の脅威であった変異種を討伐してくれたことに感謝する。報告によれば、今回の変異種は歴代の変異種の中でも相当な脅威であり、討伐部隊への甚大な被害が予想されたそうだな。最悪の場合、私の妹がいる街にまで被害が及んでいた可能性まであったようだ。今回の件については本当に感謝している」

「と、とんでもございません! 変異種を討伐できたのは俺の力ではなく、他のみんなの力のおかげです。どうか頭をお上げください」

 まさか、いきなり王族の偉い人が頭を下げてくるとは思わなかった。エリザさんから第一王子は常識人だと聞いていたが、前に現れた貴族は横柄な態度を取ってきたし、さすがにその行動は想定の範囲外だった。

「聞いていた通り、だいぶ謙虚なお方のようだな。自身の力でなくとも、ユウスケ殿に力を貸してくれる者の力もユウスケ殿の力と言っても過言ではないぞ」

 いや、さすがにそれは過言だ。俺だけの力では攻撃を防ぐだけで傷ひとつ与えられないからな。討伐できたのはみんなの力のおかげである。

「まずは変異種討伐の礼としてこちらの金貨500枚を受取ってほしい。正式な国からの依頼ではなかったゆえ、金額が少ないのは申し訳ないがな。そしてこれは国からの感謝の気持ちで他意はないゆえ、遠慮なく受け取ってほしい」

 後ろにいた騎士のひとりが金貨の入った袋をテーブルの上に置いてくれた。

 確かに変異種の牙の素材に比べたら少ないが、ちょうどその分のお金は使い切ったところなので、金貨500枚はとてもありがたい。しかもこちらが貴族とか王族とかに警戒しているのを知ってか、わざわざ他意がないと伝えてくれている。

「とんでもございません。これほどの大金をいただけて、とても感謝しております」

「多少なりとも喜んでもらえたのならなによりだ」


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